第292話VS大塚教授(守旧派学者)① 予想外、祐は不機嫌

文字数 1,399文字

結論的に言うと、祐にとって(論破を楽しみにしていた)、はなはだ不本意な結果になった。
ただし、「ブログをやめろ」あるいは、最悪の「大学自主退学」の結果ではない。

何しろ、休み時間に、佐々木教授の部屋に入った途端、「問題の大塚教授」が「蒼い顔で、謝って」来たのだから。(純子、田中朱里も一緒)

佐々木教授も、謝って来た。
「ごめんね、祐君」
「呼び出したりして、申し訳ない」

しかし、そんなことを言われても、祐は「事情」がわからない。
だから、キョトンとして、聞くことになる。
「そもそも、この部屋に呼ばれた理由とか原因をもう一度、最初から教えてください」
「僕のブログに問題があって、ブログの廃止とか、大学の自主退学まで、そんな話でしたけれど」

蒼くなって下を向いていた、大塚教授が、また祐に頭を下げた。
「いや・・・あの・・森田荘平さんのお孫さんとは、知らなくて」
「私は、森田荘平さん、森田家には、大変お世話になっておりまして」

祐は、佐々木教授に目配せ、そのままスマホを手に、電話を始めた。
「あ、じいちゃん?祐です、お久しぶり」
「今、大学にいる」
「それでさ、いきなり本題でごめん」
「大塚教授って人、うん、僕の大学の」
「今日、ブログに問題があって、ブログをやめろとか、大学までやめろとか」
「そんな話、で、佐々木先生の部屋に来たら、うん・・・謝って来て、じいちゃんの名前」
「ねえ、じいちゃん、何かしたの?」
「え・・・知らない?誰が?」
「あ・・・電話をかわって欲しい?」
「佐々木先生?それとも、大塚先生?」

祐がスマホを渡したのは、大塚教授だった。
「はい・・・誠に・・・失礼なことを・・・」
「あれほど、お世話になっておきながら・・・」
「え・・・出入り禁止?・・・それは・・・」
「これから、お伺いして・・・え・・・来なくていい?」
「それは・・・」

電話は切られてしまったらしい、大塚教授は肩を落として、祐にスマホを返して来た。

佐々木教授が、「やれやれ」といった顔で、祐に状況を説明した。
「お父さんの哲夫さんが、誰かからその話を聞いて、ご立腹」
「叔父さんの義夫教授も怒って」
「大塚先生に抗議したの」

大塚教授は、消え入るような声。
「まさか、そういう関係とは知らなくて」
「あの西陣の老舗呉服店、前当主の荘平さんはかつての京大学長、和歌から古文、漢文まで極めた粋人」
「あの蔵の蔵書は、かの冷泉家にも、引けを取らない」
「私も、何度も、ご教授をいただいたのに・・・」
「義夫さんや、哲夫さんにも、よくしてもらっていて」

その話を聞いていた祐は、ますます機嫌が悪い。(隣に座る純子、田中朱里がハラハラするほど)
「僕のブログの問題は、解決していないですよね」
「そういう関係でなかったら、僕は大学追放ですよね」
「それって、酷過ぎる話、僕にとって」
「それと、僕のブログを楽しみにして来た読者にとっても」
「数十万の読者がいます」
「和歌とか、古文の楽しさを、少しでもわかりやすくと思っていたんです」
「祖父とか、義夫叔父さんにも聞いて、書いた文もあります」
「それも、否定されたような気がして、祖父と義夫叔父さんにも、謝るかなとか」
「もちろん、祖父も、義夫さんも、楽しみに読んでくれていたので」

佐々木教授は、怒る祐を手で抑えた。
タブレットを大塚教授に見せた。
「これ、森田祐のブログ」
「もう一度、ゆっくり読んでみて欲しいんです」

大塚教授は、真剣な顔で、読み始めた。
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