第74話アパートの前で 真由美と祐

文字数 1,048文字

私、菊池真由美は、調布まで画材道具を買い付けに行き(美術大学なので)、少し前にアパートに戻って来たところだった。
画材道具を整理し終わって、ふと窓の外を見ると、祐君が歩いて来るではないか!
「このチャンスを逃したら、いかんばい!」(これは博多弁・・・興奮すると出る)
だから、アパートの外に飛び出した。(わざとらしい?いやいや、責めの一手たい)

祐君は「あれ?」と、ふんわりぼんやり顔。(それが・・・そそる)
ほんと、無理やりでも、ブチュっとしたい。(博多女の血が燃えるほど、そそる)

歩いて来る祐君を見て、思った。
「モデルにしたい」
「どこにおいても、モデルになる」
「平安貴族の服を着させても・・・」
「私が、十二単を着たお姫様で」
「うーん・・・エロチックだ」(暴走気味なので、一息ついた)

「お出かけしていたのですか?」(ところが私も賢い、標準語を使う)

「はい、少々」(相変わらず、あっさりとした答えだ)

ただ、それだけでは、アパートの部屋から外に飛び出してまで手を振った理由が弱い。
母美幸からの情報を、祐君に話す。

「ところで、祐君、大宰府の森田義夫さんって、知っています?」(知っているはず、もう裏は取ってある)

祐君は、驚いたような顔。(シメシメ!)
「はい、叔父さんです、一週間ぐらい泊ったこともあります」

「私の実家の隣町なの。歩いて5分くらい」

「へえ・・・それは」(祐君は、ニコッと笑う、その可愛いこと!)

「でね、祐君が散歩を義夫さんとしていた時に、私の母も、祐君を見たって」(えへへ、これが言いたかった)

「え?そんなことが?」(ところが、祐君は首を傾げた、私は不安になった)

少し間があった。(すごくドキドキした)

「いろんな人と挨拶したからかな、叔父さん、有名人らしくて」(・・・そういうことか・・・)

「また、博多に行く時には、案内しますよ」(博多女は、めげないのだ)

祐君は、笑った。
「まだ、入学式前。入学を済ませて、東京での学生生活が落ち着いてから」(正論だ!)

「そうですね・・・」(さすがの私も、ショボンとなる)

祐君は笑顔のまま。
「まずは都内での生活を楽しみましょう」

私は、「ハッ!」と我に戻った。
とにかく憧れた都内での生活が始まっているのだ。
何も無理やり、博多にこだわる必要はない。
都内で、祐君との生活を楽しめばいいのではないかと。

「そうですね、そう思います」
私は、感激のあまり、さっと祐君の手を握ってしまった。(手が止まらなかった)(でも、すごくきれいなお肌で、握った瞬間からトロっとなってしまった)
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