第261話秋山先生のお宅で 出版社伊藤五月登場

文字数 1,638文字

私、純子は祐君と奥様の掛け合いが、見ていて実にほほえましい。(なごむ、癒される感じ)
真由美さんも、にこにこ。
「可愛い孫と、素敵なおばあ様?」
「秋山先生も、本当にうれしそう」
真由美さんの意見は、私もよくわかる。
秋山先生にとって、祐君のお母様の彰子先生は弟子、だから祐君は孫弟子かな。

お屋敷に入って、しばらくは、来月(5月)中旬、銀座での講演会の具体的な打ち合わせ。
司会は、出版社の人。(10時ぐらいに、家に来るらしい)
それ以外は、祐君は原稿提出済みなので、受付。(私たちも同じ)
芳名帳に名前を書いてもらう仕事らしい。

秋山先生は終始笑顔。
「すごくやわらかな文で、読みやすいよ」
「祐君、ありがとう」
「僕の話し方まで、計算に入れてあるような、気配りだね」

祐君は、お茶を飲んでから返事。(その一歩遅れるところも、可愛い)
「いえ、だいたいです」(・・・もう少し言い方あるよって・・・お茶飲んでむせているし)

奥様の目が輝いた。
「ねえ、あなた、若い人もいますし」
「銀座で・・・ひさびさに」

秋山先生は、奥様の目線で感じ取った。(うん、いい夫婦だなあ・・・いつかは私も祐君と・・・恥ずかしくなって来た)
「お寿司だね、いいよ、大将には電話しておく」

すると、祐君の目が丸くなった。(何事?気になる)(でも、何も言わない、気にかかる)

そんな話もひと段落。
秋山先生が祐君に聞いて来た。(少し真面目顔)
「祐君は、清少納言は好きかな?」

祐君は、即答。
「はい、大好きです、あの感性は、極上と思います」
秋山先生は笑顔に戻った。
「うれしいなあ・・・」

ただ、祐君は、その秋山先生の笑顔に「何か」を感じたらしい。
「もしかして、新しい企画とか?」

秋山先生の返事の前に、玄関のチャイムが鳴った。
奥様が、立ってリビングを出て、(少し大儀そう・・・でも手伝えない)、玄関を開けた。

入って来たのは、スーツ姿の若い女性。(25歳くらい)女優のような整った顏、スタイル。
祐君と私たちの前に名刺を出す。
「三省出版の伊藤五月と申します、今回の銀座講演会で司会を務めさせていただきます」

祐君と私たちも、それぞれ自己紹介をする。(祐君も初対面のようだ・・・けれど?)

伊藤五月さんは、そのまま祐君の手を握る。(おい!うちの祐君やで?許可しとらん!)
「森田祐君・・・ようやくです・・・」

祐君は、モジモジ。(もー・・・何がしたいの?イライラする)
「ようやくの意味、何です?」

真由美さんも、ハラハラ顏。(伊藤五月と祐君の握った手から視線が外れない)

この不穏な状況を救ったのは、奥様だった。
「五月さん、祐君の手を離してあげて」
「私、すごく妬いていますよ」

伊藤五月が祐君の手を離すと、秋山先生。
「伊藤さんは、祐君のブログの愛読者」(・・・祐君の罪作りブログか・・・)
「今回の原稿も読んで、祐君にますます惚れたとか」(惚れなくてもいい!うちのもんや)

祐君が、ようやく発言。
「今日は、伊藤さんと、顔合わせだけですよね」(何か、感じているらしい・・・引き気味)

伊藤五月が、にっこりと首を横に振った。
「いえ、祐君とお話したいこともありまして」
祐君は、「はぁ」と、首をチョコンと傾げる。(う・・・お人形さんみたい・・・マジそそる)
伊藤五月
「ブログで、紫式部と清少納言を書いていましたよね」(・・・これで秋山先生の話題とつながった)
「紫式部は、清少納言をひどく批判していましたが」(・・・いきなりコアな質問に?)

祐君の目が、輝いて来た。(やはり、こういう話は好きらしい)
「僕は大学一年生で、長く研究してはいないけれど」(そこで謙遜しない!)
「学者だからわかること、学者だからわからない、あるいはわかりたくないこともあるかな、そんな気がしています」(・・・マジにこんがらがる・・・後で根掘り葉掘りやなあ)
「つまり、本質を外れた議論が多いような、それで呆れるような間違いをおかす」
「でも、あの批判は、あまり気にしていません」
(おー・・・紫式部にも、引かないってこと?)
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