第168話伊東の別荘にて⑥祐のピアノ、歌は心を揺さぶる。

文字数 1,231文字

夕食の後は、全員で手際よく片付け(祐ちゃんは、メチャ、器用)(私、恵美は、ここでも完敗・・・って情けない、日本橋老舗料亭の娘なのに)
(純子さんも、真由美さんも、ニコニコと・・・)
(祐ちゃんと顔が合うと、もっと顔が輝いているし・・・)

再びリビングに戻って、祐ちゃんがピアノを弾いた。
・・・芳江叔母さんは、「最初のイントロで上手い!」と驚いていた。

「誰でも知っているかな」とポツリと言って、
「A列車」を弾き始めた。(イントロは渋め・・・でも、どんどん明るく派手に弾ける!)
(純子さんと真由美さんは、目が点・・・そしてワクワク顔)

芳江叔母さんも、我慢できなかった。(歌い始めた!アルトだけど、かっこいい!)
祐ちゃんも、可愛い笑顔だ(ブチュしたいよーーー!私のアイドルだもの)

大盛り上がりのA列車の後は、シャンソン「ムーランルージュ」「聞かせてよ愛の言葉を」と続き、日本の歌に。

この日本の歌から、純子さんと真由美さんも、歌に加わった。(二人とも、声も音程もリズムもいい!・・・私は・・・恥ずかしい・・・歌には向いていないことも悟った)
「レモン」
「さくら:いきものがかり」
「風になる」
祐ちゃんは、アニメも見ていた(意外!)
「であいもんの主題歌:菫」

芳江叔母さんのリクエストで、昭和の名曲「君は天然色」。
(・・・これは、芳江叔母さんしか、歌えない・・・難しい・・・)

他にもいろいろ祐ちゃんがピアノ、女子たちの歌が続いた。
でも、祐ちゃんが歌わないのが気に入らない。(すっごく上手いのも知っている)
だからリクエストした!
「ビリジョお願い!」

芳江叔母さんは曲まで指定。
「素顔のままで」(・・・これは聞いたことがない・・・何で知っている?あやしい関係?)

祐ちゃんは、うつむいて弾き始めた。

「うわ・・・ふぅ・・・」だった。

声が響く、通る、きれい!
いい雰囲気だ・・・歌は上手いしなあ・・・
そのまま日本橋のライブハウスに出しても、受けるよ、これは・・・ビジュアルもいいし・・・
やはり、祐ちゃん・・・いいなあ・・・また惚れた・・・従妹が残念(涙)

でも・・・祐ちゃんの歌は一曲だけだった。
何しろ、時計を見ると、9時半過ぎ。

芳江叔母さんが、またリクエスト。
「渋めに締めて」

祐ちゃんは、素直、頷いて弾き始めた。
「バッハのGマイナー:ルオ・ニのアレンジ」だった。

ただ・・・これは渋いどころではなかった。
泣けた。(心を濡らす演奏とはこれ・・・と思った)
よくわからないけれど、曲の初めから、ウルウルしてしまった。
曲も、祐ちゃんの演奏も、良過ぎる。(フレーズ、ピアノタッチも心の奥に入って来て、揺さぶる・・・ああ・・・これだったの?って・・・大事なことがわかる)
芳江叔母さんは、見たことのないほどの真面目顔。
純子さんと真由美さんは、胸を抑えて・・・二人とも潤んでる・・・

「祐ちゃんは、器用だけではないの、それ以上の・・・すごいものがあるの」
私、恵美は、昨晩聞いた、芳江叔母さんの言葉を、再び確信している。
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