第253話出版検討会は続く

文字数 1,325文字

祐君は、「言い過ぎた」と思ったらしい。
「ごめんなさい、何も実績がない素人が」と頭を下げた。

でも、私、岡田ひかり(編集者)は、祐君の考えに全面賛成。
平井先生も頷いているので、議論を続けた。
「電子出版の件も、社長はすごく興味を持っています」
「もちろん、紙媒体の形式も、特に高齢者には必要」
「経営的には、悩ましいけれど」

平井先生も、発言。
「古今和歌集の歌、その新訳については、祐君訳で問題ありません」
「全巻、送ってもらって読ませていただきました」
「ほんとうに、わかりやすくて、それでいて情感もしっかり」
「伝統派の視点も、上手く取り込んでいます、決して新奇な訳ではありません」
「もし、直すとしたら、祐君がそうしたいと思った時だけかな」

祐君は、恥ずかしそうに、先生に頭を下げる。(うん・・・可愛いなあ・・・お人形みたい)

真由美さんも発言。
「イラスト、映像を考えると、電子出版ということですが」
「せめて、イラストだけでも、紙媒体に乗せたいかなと」
「コストの面も、心配ですが」

これには私(岡田ひかり)が答えた。
「確かに、真由美さんのイラストは、美しくて、品もあるよね」
「難しいのは、紙の中のスペース」
「カラーにすると、コストもかなり・・・」
「でも、私は入れたいなあ」

春奈さんも発言。
「まず、電子出版をベースに進もうかと」
「写真、映像、イラストを含めれば、情報量と作業量は、半端ない」

純子さんも発言。
「添削、校正も、鋭意進めます」
「とにかく作業を急いで、第一巻だけでも、形を固めたいと思うんです」

祐君が、そこで平井先生と私を見て来た。
「恐れ多くも、平井先生の解説を添削しました」
「ごめんなさい」

平井先生は、目を大きく開いた。
「全く・・・あんなに赤ペンだらけって・・・女子高生以来」
「祐先生にコテンパンにされたって感じね」
「でも・・・助かったかな、いい日本語にしてある」

この祐君の添削には、私も驚いていた。
「祐君、その才能もあるよ、どこで習ったの?」

祐君は苦笑。
「鬼母です、さんざん、やらされましたし」
「親父の写真集の文も、実は」

これには。平井先生も、蒼い顔、胸を抑えた。
「え・・・彰子先生の文にも絡んでいたの?いつも、すごい名文かなあと」
「それから哲夫さんの写真集の、詩みたいな添え文も祐君?」
そして納得。
「ああ・・・でも、わかるなあ・・・古今の訳も、似ている」

祐君は、手をヒラヒラさせて話題を変えた。
「電子版で、桜田愛奈さんが、出たいって話」
「断りましたが、彼女、粘っています」
「かなり、言い出したらしつこい性格」
「下手に言うと、芸能界辞めるとか、言い始める・・・僕にはどうでもいいけど」
「でもねえ・・・愛奈には、似合わないような気がしているので」
「それと、コストは、僕らのバイト料と同じでいいとか、マネージャーにも確認しました」
「彼女にとっては、出ることが先決で、そうしないと、ツムジを曲げる子なんです」
(話の順番が変・・・でも、これも検討課題)

平井先生は、その顏を輝かせた。
「へえ、愛奈ちゃんねえ・・・、広告でも使えるかなあ」
「祐君、頼みましたよ、お世話してあげて」

祐君は、「え?」と身を引いた。

女子たちは、「ムッ」と、祐君を睨んでいる。(うん!見ものだなあ)
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