第178話佐々木先生のお願い②

文字数 1,312文字

佐々木先生の「部屋」は、大学の「研究室」だった。
広さは、ビジネスホテルの一部屋程度。
両壁には本棚、真ん中には長いテーブルとソファ、窓側に先生の机と椅子がある。

私純子と祐君、田中朱里(何でついて来たんや?厚かましさを感じる。マジにお邪魔虫や)は、ソファに並んで座った。

「さあ、紅茶でも」佐々木先生が紅茶を出してくれたので、全員で一啜り。
そして、先生の「お話やら、お願いが始まった」

「あのね、祐君・・・」
「というより、祐ちゃん・・・」(佐々木先生はニンマリだ・・・でも、祐ちゃんって何や・・・なれなれしい・・・祐ちゃんは、うちのもんやで)

「はい」(祐君は、微笑・・・はぁ・・・そそる・・・でも危険や・・・その、そそらせ顏)

「昔から思っていたけどさ、きれいな文書くよね」(うん、それは認める、マジに文才がある、音楽もすごい)

「で・・・ご用件は?」(お・・・祐君のクールな質問や・・どっちが上?立場無視?)
その祐君が、田中朱里に、少し解説。
「僕の母の弟子なんです、僕の実家とか別荘にもよく、だから子供の頃から知っている先生」
(まあ、田中朱里はキョトンとしとるから、仕方ない)

でも、田中朱里は、まだ理由がわかっていないようだ。
「え・・・祐君のお母様・・・何で佐々木先生の?」(・・・素人発言やなあ・・・)

佐々木先生は、「うん」と力強く頷き
「あのね、この祐君のお母様は、かの源氏物語と万葉集の気鋭の研究者、森田彰子さん」
「昨日も、NHKでテレビ解説、本も名作を何冊も出された、それはそれは・・・すごい人・・・尊敬する大先生、そして祐君は、息子さん」
と胸を張る。(つまり、その先生の弟子と、威張りたい?)

田中朱里の顔が変わった。(真っ赤・・・祐君をじっと見とる)
「えーーー?祐君!あの森田彰子さんの?私も大好き!」
「それでお父様は、哲夫さん?」
「はぁ・・・どうしたらいいの?」(・・・だから、このアイドル女は・・・程度が低い)

祐君は、キリッとした顔。
「僕が、どうのこうのではない」
「親は親、僕は僕、影響がないとは言い切らないよ、でも、だからって、僕が偉いわけではない」(うんうん、その言葉大好き・・・だから祐君も大好き!)
(でも、田中朱里は、途端に、可哀そうになるくらいに、シュンとなった・・・真っ青な顔や・・・何やろ?)
うろたえている田中朱里をそのままに、佐々木先生は、「お願い」を始めた。
「あのさ、祐ちゃん」
「万葉集の社会人講座をやっているの」

祐君は、顔を曇らせる。
「え・・・はい・・・」(何か感じた模様)

佐々木先生は、にっこり。
「手伝って・・・原稿チェック、資料のコピーとか、どうせ頼むなら、祐ちゃんがいいなと」

祐君は、「はぁ・・・」と頭を抱えた。
そして、佐々木先生をじっと見る。
「おそらく、僕の情報は聞いていますよね」
「例の・・・学会のお仲間情報で」

佐々木先生は笑顔で頷く。
「うん、秋山先生から聞いた。平井先生と吉村さんからも」
「すごいよねーーー人気者!」
「でも、みんな他の大学でしょ?我が母校にも貢献してよ」

祐君は、口をへの字。
「わかりますけれど・・・眠る暇が・・・」(うん、祐君は体力はイマイチだ)
そして目を閉じて考えている。

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