第234話愛奈の不安と祐

文字数 1,083文字

純子が気を利かせた。
真由美と朱里に声をかけた。
「愛奈さんと祐君の二人だけにしましょう」
祐にも
「困ったら、私たちを呼んで」と声をかける。
確かに広くはない部屋なので、5人も入ると窮屈になる。

祐は純子の機転に感謝。
「サインはもらえるようにします」と返した。

桜田愛奈は、マネージャー吉田雅子(吉田雅子も祐とは旧知)と25分後に、祐のアパートに来た。

リビングのソファに座らせて、祐は珈琲を淹れる。
「お久しぶり、何かあったの?」

桜田愛奈の大きな目が潤んだ。
「いろいろ・・・ごめんなさい」
「したくない仕事があって」

マネージャー吉田雅子の顔も晴れないので、祐は不安になった。
「吉田さん、その仕事は、会社の方針なの?」

マネージャー吉田雅子は、深いため息。
「祐君に言うのも悪いけどね」
「社長の借金を背負うような感じ」
「スポンサーは、危ない筋」

少し間があった。
「セミヌード系に」

祐は、答えに難儀した。
自分の無力を悔しく思う。
かと言って、対応できる知り合いが、すぐに浮かばない。

愛奈がじっと祐を見て、祐の隣に座った。
「肩貸して」と、そのまま祐に肩を預ける。
祐は、愛奈のしたいままにまかせた。

それでも、数分後、祐は吉田雅子に確認。
「その社長の借金は、事実なの?」
吉田雅子は、不安な顔に変わった。
「社長は、そう言っているけど・・・金額までは確認していないの」
「借金はあるらしいし、スポンサーも有名な危ない人程度」

祐は、愛奈の肩をポンポンと叩いた。
「上手くいくかどうかはわからない」
「相談できるかも」

愛奈が、「え?」と祐の顔を見ると、ライブバーで知った「弁護士寺尾」の名刺を見せた。
「文科省の審議会のメンバーで、親父とも一緒」
「僕もお世話になった、相談するなら、僕から話を通しておく」

愛奈は、また潤んだ。
「ありがとう・・・そういうこと、全く知らないの」
吉田雅子も、祐に頭を下げた。
「今夜は、慰めてもらえるだけでも、と思ったのに」
「早速連絡します」

ただ、この後、祐の「失言」があった。
「愛奈ちゃんは、そういうタイプでないしさ」

愛奈は、また表情が変わった。
「どういう意味?」
「水着は無理ってこと?」

祐は懸命に発言の修正を試みる。(それも失敗した)
「水着も似合うかなあ・・・でも、子供の頃は気にしなかった」

愛奈は、その祐が気に入らない。(過去を言い始めた)
「ふーん・・・また、悪魔の祐君なの?大人の豊満なモデルさんばかりに囲まれて、私を無視したよね、本当に悔しくて、悪魔に思えた」

祐は懸命に反論。
「あれは、どうにもならないって・・・自分の意思でない」

愛奈は、祐を苛めたいらしい、また、口を尖らせている。
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