第279話女子高生たちは応援団に?楽器店の里田さん

文字数 1,306文字

私、純子は、このハツラツ女子高生たちを、逆に利用しようと考えた。
だから、出来る限りの笑顔で、話しかけてみた。(そう、お姉さん風!)(決して年増風ではないよ!)
「ねえ、あなたたち、祐君のファンなの?」
「ちなみに、私と、もう一人の人は大学の学友」(ちょっと反応がドキドキ・・・)

反応は、実にスピーディ。(・・・いいなあ、若いってためらいがない)

「え・・・彼女さんですか?」(・・・う・・・そう・・・かな?私限りで・・・って、どっち?朱里は認めん!)
「なんか・・・美味しそうなお胸・・・」(そっちかい!)
「私も、あの胸が欲しい」(あげない、これは祐君のもの・・・って恥ずかしい)
「はい!祐様のファンです!」(ようやく、まとも女子や・・・でも、この子可愛い)

「祐君のことを、これからも応援してくれる?」

予想通り、返事は一斉に「はーい!」(まあ、管楽器フロア全体が華やいでいる)

「祐君ね、まだ、発表できないけど、いろんなこと始めるから」
「その時にも、よろしくね」

女子高生たちは、また、ザワザワ。
「え・・・音楽以外にも?」
「モデルさんかな・・・可愛いから」
「それ、ダメ・・・アホなギャルに見せたくない」
「悪徳芸能界のエジキになる」
「でも、何やるのかな」

少し困っていた祐君が、ようやく反応した。
「あの・・・ありがとう・・・」
「音楽は、あのライブバーだけで・・・他に余裕がない」
「それから、音楽以外のことは、まだ発表できない微妙な時期」
「ごめんね、これしか言えない」

すると女子高生の中でも、一番美人の子が、一歩前に。
「祐様のピアノも聴きたいなあと・・・」(ほう・・・賢い・・・)

祐君は、困り顔。
「弾かせてくれるのかな」
「さっきも、フルートの修理で、嫌そうな顔されて」(つまり、修理は、ほぼ、お断りされた模様)
「だから、違う店に行こうかなと」
「まあ、次はジュリアとボサノバで・・・フルート吹かなければいいけどね」
(ピアノも、フルートも聴きたい)

女子高生たちが、また騒いだ。
「それ・・・ひどいよ」
「楽器の修理を嫌がる楽器屋って、聞いたことない」
「私たち、ここの店、嫌いになった」
「祐様、出ましょう、こんな店!」(もう、完全に祐様になっとる)

そんな大騒ぎに驚いたのか、楽器店の偉そうな人が出て来た。(中年の男性・・・祐君をじっと見ている)

「このフロアの責任者の里田と申します」
「何か、こちらに不都合があったでしょうか?」

祐君は、「かくかくしかじか」を話す。
つけ加えた。
「ここでなくてもいいので、他の店で修理してもらいます」

楽器店の里田さんの言葉は、予想外だった。
「もしかして・・・森田祐君?中村先生のお弟子さんの?」

祐君は、素直に「はい」

里田さんは。メチャにこにこ顔。
「そうか・・・以前、八幡山のレッスン室で会ったよね、祐君」
「僕は、楽譜を届けて、そこで祐君のピアノを聴いた」
「あれは、すごかった・・・ラフマニノフを中学生が完璧に」

祐君は、「はぁ・・・」と答え、少し後ずさり。(おそらく、何も覚えていない)
「早く楽器直したいので、他の店に」(ここから逃げたい模様)

里田さんは、祐君に「修理お断り」を言い渡した女性店員を手招きしている。
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