第210話平井恵子の評価と母森田彰子の心配  祐のストレスが高まる

文字数 1,121文字

和歌研究家の私、平井恵子にとって、万葉集はもちろん、源氏物語も何年も読んで来た対象。
だから、古今和歌集に素晴らしい理解力を持つ祐君が、どんな解釈をするのか、聞きたいし、知りたくて仕方がない。
ただ、難しいのは、やはり学者の世界は、仁義が大切、横から余計な言葉を挟みたくない。(もちろん、私も挟まれたくないから)
祐君も賢いので、余計なことは聞いて来ない。(聞かれたいのも本音・・・でも我慢)

祐君たちが帰った後、お母様の森田彰子先生にお礼の電話。
「祐君の新現代語訳、すごく新鮮で、生きる活力をいただきました」
「ありがとうございます」

森田彰子は恐縮した。
「いえ・・・私は・・・古今については何も教えていなくて」
「祐も何も言わないから・・家では無口で」

「先日は、例のパブで演奏をしていました」
「素晴らしいですね、その動画も人気です」

森田彰子の声が震えた。
「え・・・動画に?」
「夫から少し聞きましたが、見ていなくて」
「本当に、弱気な子なので、恥ずかしいです」

「明日は秋山先生のお宅とか」
「若菜上の講義原稿と・・・ほぼできたとか」

森田彰子の声が沈んだ。
「うーん・・・秋山先生の文は難くて、私も苦労しました」
「祐なんて、コテンパンにされて、泣いて帰るのかなと思っておりまして」

「いえいえ・・・私の教え子の風岡が少し読ませてもらったとか」
「なかなか典雅な文章らしいですよ」
「聞きやすさと話しやすさをテーマに書き直したとか」
「すんなり読めてしまったとか」

森田彰子の声が少し落ち着いた。
「本当にご心配ばかりおかけして」
「私もハラハラして、仕方がありません」

さて、平井恵子と母森田彰子の話は、ともかくとして、祐の一行は、インド料理店にいる。(以前、祐がカレーで食が進んだことが、あったから)
春奈
「祐君、インド料理は好きなの?」

「うーん・・・あまり辛いのは・・・」
真由美は吹いた。
「ぷ!子供味覚?」
祐は素直
「姉貴にも言われた」
純子は、やさしい言葉。
「無理しないで、食べられるものを、多く食べよう」

結局、いろんな種類のカレーを注文して、ナンで食べる。
「ポーク、チキン、ベジタブル、グリーンのカレーで辛さも様々」

ただ、祐は、やはり辛過ぎるものは苦手だった。
途中から、全然、食が進まないので、純子が気を利かせた。
「甘いナンがあるみたい」

祐はメニューを見て注文。
「チーズナンを・・・二人前」

少し間があった。
「あの・・・チョコレートナンも」

チーズナンは、あっという間に、ほぼ女子たちにより完食。
チョコレートナンも結局一枚追加。

しかし、女子たちは、今夜に限っては、祐の小食を責め過ぎない。
祐には、「明日の秋山先生宅での作業」への大きなストレスがあることを、理解しているのである。
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