第215話江戸探訪③三人で浅草散歩②

文字数 1,622文字

博多出身の私、真由美にとって、本格的な「寄席」は、初体験。
それが名門中の名門、浅草演芸ホールであることが、実に幸せだ。(祐君の判断に感謝)(祐君が言わなければ、来ることはできなかったと思うから)

曲芸も、上手で味がある。(途中のコメントが、ペーソスにあふれて、クスッと笑える、芸は本物なので、感心ししきり)
手品も、さすが、ベテランの芸、安心して見ていられる。

この時点で、いわゆるテレビのお笑い芸人の「程度の低さ」がわかった。
「楽屋ネタ」「相手のミス攻撃」そんなどうでもいい笑いとは違う。
どこかに、他人を立てるやさしさがある、そういう笑いだ。
「寅さん」にも通じる、人情味かな。

漫才も、ベテラン。
でも、テンポがいいし、間の取り方も最高。
「健康さえあれば、命なんていらない!」は、健康オタクへのギャグから。
ふと、祐君のお姉さんを思ったけれど・・・横から見て、祐君も普通に笑っているので、私もうれしい。

漫才が終わって、祐君が発言。
「テレビは視聴率で量の世界、よかろうと悪かろうと、率さえ取ればいい」
「ここは笑いの質を追求している、だから好き」

確かに、そうだなあと思う。
この祐君の発言から、程度の低いテレビ芸人のことは、考えないことにした。
目の前の、実力の高い本物の芸を見ようと思った。

漫才の次は、落語だった。
演目は、古典落語の「二番煎じ」。
大ベテランのおじいさんが、品よく出て来た。
時代は、江戸時代。
要するに町内会で、「火の用心」を声かけて回る。
本当は、禁酒で、四つ足も好ましくないのだ。
しかし、上手な「悪」がいて、町内会の仲間をそそのかし、「薬」と称して「夜回りの待合室」で「獅子鍋」をこしらえ、熱燗も準備しててしまう。(実際に宴会は始まる、隠す様子も面白い、あくまでも「薬」なのだと主張する)
その「火の用心」の見回りに来た謹厳であるべき侍も、寒い夜の「熱燗と獅子鍋の魅力」には、抗せない。
立場上は、認められない、しかし内心では、御相伴したいので、いろいろ言うけれど、町人たちも、ただものではない。
様々に理由をつけて、侍を追い払おうとする。
結局は、取り締まるべき侍も、町人もズルズルと誘惑に負けて、「ご一緒」してしまう、という滑稽話。

とにかく、涙が出るくらいに笑った。
高齢の落語家(テレビには出ない人)の、「間」、「町人と侍の演じ分け」が、最高。

祐君は、落語が終わって、スッと席を立った。(モタモタしない、いい感じ)
「食事しましょう、早く行かないと、混みますから」
純子さんも私も、スッと立つ。(もう、お店も祐君任せ)

入った店は、老舗の洋食店。(名前は雑誌でも見たことある!超期待!)
祐君がパッと決めてしまった。(ここもおまかせにした、分けあって食べる)
「ビーフシチュー」「牛ヒレステーキ」「ドライカレー」「珈琲」

で・・・やはり名門老舗、味は絶品だった。
純子さん
「このステーキ・・・いいなあ」
祐君
「シチューも味が複雑で、美味しい、すごいや、さすがに」
私も、食がすすむ。(もっと味わいたいけれど、止まらんばい!)

純子さんが、祐君に聞いた。
「さっき、お母様と話していたの?ごめん、耳に入って」
祐君は苦笑。
「大した話でない、秋山先生が心配って、そんな話」
「まあ、高齢だから、誰でも心配だよ」
私も(実は、聞き取っていたから)安心する。
「急に倒れるは、ないと思うよ」

洋食をたらふく食べて、また浅草を歩く。
薬研堀で、唐辛子を買った。
私と純子さんは、定番の芋羊羹を買って、実家に送った。
(純子さんは和菓子屋さんが実家だけど、ご両親が芋羊羹が好きらしい)

最後に、浅草と言えば、「雷おこし」を忘れてはならない。
結局、これも、純子さんも私も、実家に送る。
そして、自分たちでも食べたいので、大袋を一つ。(祐君が呆れた顔で持った)

浅草駅に向かう途中、スカイツリーと隅田川クルーズ、花火大会の話になった。
「遊びきれない・・・」そう思うけれど、さすが東京、浅草と思い、幸せになった。
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