第197話祐君の部屋で、私、純子は田中朱里を抱き締める

文字数 1,074文字

私、純子は、本当に驚いた。
突然、あの「名古屋嬢」の、プライド高い田中朱里から電話、しかも、泣きながらなのだから。

「純子さん!助けて!もう死にたい」

だから、私は、ゆっくりと聞いた。(祐君の部屋にいたし、真由美さんもいたから、マイクをオンにした)

「何かあったの?困っているの?」

田中朱里
「うん・・・もう・・いや・・・そっちに・・・迷惑?」

祐君が、答えた。
「祐です、迷惑でないよ、いいから、おいで、駅まで迎えに行く」

田中朱里は戸惑った声。
「え・・・祐君?」

祐君は、その田中朱里に答えない。
もう、靴を履いて、外に出てしまった。

そんな応答があり、私も駅に行き、田中朱里を迎え、アパートに戻って来た。

祐君がお茶をいれて、真由美さんも含めて、三人で田中朱里の話を聞いた。
(真由美さんとは初対面だったので、簡単に自己紹介を済ます)

真由美さん
「それは・・・きついね・・・名古屋以外には出てはいけないとか」
「もう結婚だことの、孫だことの」
「少なくとも、博多ではありえない」


「ほんまやな、かなり古い奈良町でも聞かん、そんなの」

祐君は、シンプルだった。
「朱里さんの、一度だけの人生」
「他人に決めてもらうのか、それとも自分で決めるのかだよね」

真由美さんは、田中朱里に質問。
「その名古屋嬢?そのランクにある人は、全員がそんな感じなの?」

田中朱里は首を横に振る。
「全員が全員でもなく、国際結婚でアメリカに住んでいる先輩もいます」
「最近は、名古屋を出て行く人も多いかな」
しかし、顔をしかめた。
「でも、うちの祖母も母も、そういうのを恥ずかしいと考えるタイプ」


「ところで、朱里さん、ご兄弟は?」

田中朱里
「兄がいます。今、26歳、名古屋の銀行に勤めています」

真由美さん
「そうなると、跡取りの問題はない」

田中朱里の顔は、落ち着いて来た。(話をして、ストレスもほぐれたような感じ)
「はい、それは、そうです」

祐君は、やわらく笑った。(う・・・女殺しの笑顔や・・・危険や)
「ここに集まったのも、何かの縁」
「どうのこうのできない場合もあるけれど、話くらいは聞きます」

田中朱里は、ようやく笑った。
「ありがとうございます」
「祐君の言う通り、自分の人生だよね、自分が判断します」
「何か・・・ホッとしました」
「親にも、おばあ様にも負けません」
「もっと自分を磨いて、田中朱里として生きます」

真由美さんも笑う。
「目が光って来たね」

私は、朱里さんと握手。
「頼ってくれてありがとう」

その、手を握った瞬間だった。
田中朱里が、ワッと泣き出した。

そのまま、むしゃぶりついて来たので、受け止めた。(理由なんて、ない)
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