第244話

文字数 1,012文字

祐君が焼肉定食を頼んだので、純子さんも、私、田中朱里も同じもの。(このライブバーの奥様の料理は、何を食べても美味しい)(少し濃い目、でも名古屋出身なので、苦にしない)

祐君も、美味しそうに食べる。(口に入れるテンポも速くなった)
じっと見ていると祐君は、顔を赤らめた。(その顔可愛い、待ち受けにしたい!)
「こういう普通の食事のほうが好き」
「おしゃれな、凝った料理では育っていない」
「親父も母さんも、家にあまりいなくて、子供が作ることも多かったから」

純子さんが、そこで突っ込んだ。
「子供の頃から?」
「何歳頃からなの?」

祐君
「僕が小学校3年生で、姉貴が中学に入った頃から」
「その時から、親がいない時は、ほとんど僕が作った」

これには、私も突っ込んだ。
「お姉さんは作らないの?」

祐君は、首を横に振った。
「たまーーに、作る、でも美味しくない、雑過ぎて」
「テニスの練習のほうが好きだから」
「僕が作るしかなかった」
「料理の欄が新聞にあって、切り抜いたり」
「テレビの料理番組を録画して作った」

純子さんは、納得した。
「それで、料理も器用なんだ」
「包丁も煮物も上手」

祐君
「それでも姉貴は、文句ばかり」
「突然、肉を食わせろとか、怒る」
「あまりにもうるさいから、自分で肉買って来て焼いてって言ったの」

私と純子さんは、顔を見合わせた。
「で、どうなったの?」

祐君は、また苦笑。
「大喧嘩になって、馬乗りになられて、頬を張られて」
「それやっていたら、母さんが帰って来て、姉貴と僕は正座させられて、1時間以上お説教」

純子さん
「すごいなあ・・・」

「祐君も辛いよね」

祐君は、複雑な顔。
「そういう姉貴だから、今後不安」
「今、恋愛中らしいけど、どうなることやら」

そんな話をしていると、ライブバーのドアが開いた。
入って来たのは、濃茶の革ジャケット、ギターを持った、いかにも中年のロックシンガー風。
「いらっしゃいませ!」
マスターが声をかけると、
「おう!」と独特の声。
少しキョロキョロして、祐を見つけたようだ。
「おー!いたいた!祐ちゃん」と満面の笑顔。

祐君も焼肉定食を完食していたので、笑顔で席を立って、「達ちゃん!」と思いっきりハグ。

純子さんは、口がポカン状態。
「え・・・マジ?あの・・・達郎さん?」
私も、足が震えた。
「どうしよう・・・どんな顔したらいいの?」

ただ、祐君は見ている限り「普通」に話している感じ。
達郎さんもピアノを指差しているので、祐君は、弾くかもしれない。
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