第152話田中朱里の思い(1)

文字数 1,361文字

私、田中朱里は、悔しくて、寂しくて、どうにもならない。
顔も恥ずかしい程に赤くなっていることは、自分でもわかっている(もはや、どうにもならない)
本当は、祐君を「ちょっと、待って!」と追いかけたかった。
でも、祐君の隣の女性が「アルバイト」と言ったので、諦めた。(今日は諦めるしかない、と思った、せめてラインでつなぎたかった)



祐君と最初に逢ったのは、中学三年生の時、熱田神宮だった。
私は、子供の頃から、写真のモデルをしていた。
その日も、写真撮影(着物を着る、地元の大手着物屋さんも後援)で、熱田神宮に向かった。
宮司さんに聞いた。
「今日のカメラマンは、世界的な写真家の森田哲夫さんです」
私は、心がときめいた。(今まで写真を撮ってもらった、どんな写真家より有名な、すごい人だったから)

・・・で・・・確かに、森田哲夫さんは、すごかった。
まず、超美男、スタイルもいい。
声かけも、やさしい、的確、モデルの気持ちが、よくわかっている。
私も、その指示や声掛けに、自分でもうれしいくらいに、反応ができた。
だから、いい写真が出来たと思う(さすが、超一流の写真家は違う!)と思った

・・・でも・・・私は・・・本当は、お父さんの助手でついて来た祐君に最初から注目していたのだ。
だって・・・本当に可愛い!って思った。(一目惚れだったかな、そうとしか思えない・・・目を離すのがもったいなかった)
祐君は、美人・・・目がクリクリ、お鼻もツンと上を向いて、お肌もプルンとして・・・男の子と言うより、美少女、妹キャラ・・・抱いて眠りたいタイプ。

だから、祐君と絶対に何か、話をしたかった。(近くに、できれば隣に)
着物屋さんに無理を言った。(あの子に着物を・・・一緒に撮ってみたいなあ)
着物屋さんは、すぐに乗った。(はい、持って来ますよ、あの子なら似合います)
宮司さんも、お父さんの哲夫さんも、すぐに話に乗った。
・・・祐君は「え?」と後ずさりした。(本当に嫌そうな顔)
でも、私を含めて、周囲の期待が上まった。

撮影の合間に、祐君と話をした。(もう、顔がこわばるくらいに緊張した!)
「祐君は何年生なの?」(メチャ可愛いから、年下と思っていた)

「中学三年生です」(うわ!同い年?って、またドキドキ)

「お父さんのモデルになることはあるの?」

「・・・時々・・・」(祐君は、口を濁した)(私より可愛い子と撮ったことがあるかも、って気になった)

祐君は、途中から頭を抑えていた。

「どうしたの?」って聞いたら

「着物の、樟脳の香りが強くて・・・頭痛に」(辛そうだった、カメラの前では見せないけれど)

「また、逢いたい、普通の時に」(本音だった、祐君と離れたくなかった)

「ご縁がありましたら」(・・・そんなこと言わないでよ・・・他に好きな人でも?もっと可愛い人なの?)(私・・・フラれたの?この私が?)(フラれたの初めて)(本当に悔しかった)

それが最初の出会いだった。(もしかすると最後か・・・と思った、また逢いたくてしかたない、そんな3年間を過ごした、高校時代には、言い寄って来る男も多くいたけれど、その気になれなかった)

・・・入学式で、本当に驚いた。(熱田神宮に感謝した!)
少し前の席に、祐君(すぐにわかった、少しだけ大人びていた、でも、美顔と雰囲気は同じ!)が歩いて来て座ったのだから。
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