第348話古典落語「子別れ」で、女子たちは、泣く。

文字数 1,504文字

祐からは、簡単な説明があった。
「事故と謝罪の話が進んだ」
「連休明け、親父も来るらしい」
「でも、今は考えたくない、ごめんなさい、せっかく遊んでいる時に」
女子たちは、首を横に振る。
「祐君が謝る理由はないよ」
「本当に無神経な高校、恵美ちゃんも生徒も怒っているけれど、校長が無気力みたい」
「いいよ、寄席に行こうよ、祐君」
「今は、楽しもうよ」
祐は、クスッと笑い、先頭に立ち、演芸ホールに向けて歩きだす。

売店で「笑点グッズ」を何個か買って、ホールの中に入った。
演目は、マジック、漫談、皿回し、講談、漫才、落語と続く。(落語は地味だけれど、名人級:子別れ)だった。

※「子別れ」あらすじ(古典落語)
熊五郎は腕の達者な名大工、しかし酒に弱いダメ男。(久しぶりに家に帰ってくれば、女房に吉原(女郎買い)に行った話を意気揚々と自慢するような)
長年の悔しさと我慢が限界になった女房は、息子の亀吉を連れて家を出ていってしまった。
ただ、熊五郎はそんなことは気にしない。(吉原の女と再婚)
ところが、吉原の女は家事など一切しないデタラメな女だった。
呆れ果てた熊五郎は女と別れ、心を入れ替えて懸命になって働いた。
一方、女房は、女手ひとつで亀吉を育てようと、裁縫の仕事(なんとか生活を維持していた)
そんなある時、熊五郎は息子の亀吉に偶然出会う。
過去の自分の行いを後悔していた熊五郎は亀吉に母親のこと聞く。
再婚もせずに必死で一人で亀吉を育て生計を維持しているとの話を聞き、さらに申し訳なかったという、後悔の気持ちが強くなる。
熊五郎は亀吉に小遣いを渡した。
「明日二人で鰻を食べに行こう」
「鰻なんて食べるのは、久しぶりだろうから」と亀吉を誘う。
亀吉は父熊五郎が好きだったので、飛び跳ねて喜んだ。
待ち合わせの時間と場所を決めた。(ただ、お小遣いのこと、鰻の話、自分に会ったことも内緒(おっかあに言っちゃ駄目)」と言う。
ところが、家に帰った亀吉は、熊五郎にもらったお金を母親に見つけられてしまう。
盗んだのだろうと思い込んだ母親は、正直に言わないと金槌で殴るとまで言う。
亀吉は熊五郎から口止めされていたけれど、ついに本当のことを白状する。
心を入れ替えた元亭主熊五郎の話を聞いた母親(元女房)はなぜか嬉しそうだった。
翌日、熊五郎と亀吉が、で鰻屋で食べていると、母親(元女房)が訪ねて来る。
ただ、やはり会話がぎこちない。
仕方なく亀吉が間に入る。
亀吉の言葉で、元夫婦は、よりを戻そうと話す。
「子供はかすがいだな」と元夫婦が言うと、
亀吉が
「えっ、おいらがかすがいかい? だから昨日おっかさんがおいらの頭を金槌で殴ろうとしたんだ」(これが落ち)

祐は、クスッと笑って、席を立つ。
そして「鰻が食べたい」と声をかけた。

しかし、女子たちが変。(全員がハンカチで目を抑えている)
「良かった・・・なんか・・・」
「子別れ・・・泣いちゃった」
「いいなあ・・・落語・・・」
「涙止まらないよ」
「いいおかみさんだね、熊五郎もよく頑張った」
「亀吉だよ、功労者は」
「子はかすがい・・・うん・・・泣ける」
「もっと通いたい、ここ」

祐はどうにもならないまま、女子たちは潤んだ目のまま、演芸ホールを出た。
夕食は、やはり鰻。(他の食事は考えられなかった)

その後は、夜も遅かったので、アパートに直帰、朱里と笹塚で別れ、祐と純子、真由美は千歳烏山で降りた。(春奈は調布のため)

アパートまでの道で、祐は純子と真由美に言い渡した。
「もう、一人で寝る、心配かけてごめんなさい」
純子
「大丈夫と思うよ、でもさ」
真由美
「祐君は、私たちの、かすがいだよ」

祐は「意味が違う」と言ったけれど、通用している雰囲気は、全くない。
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