第222話佐々木教授の研究室にて②

文字数 1,258文字

紅茶は、純子と朱里が全員の前に置いた。
佐々木教授は、まだ厳しめの顔。
「祐君が廃部を望まなくても、度重なる失礼を祐君や、外部の人に行っています」
「祐君に対しては、講義前、そして後、そのまま追いかけてライブバーに」
「しかも外部の人にまで暴行、怪我までさせています」
「そのうえ、動画で拡散されている状況」
「簡単には許されない、許したりしたら、本学の見識が非難されます」
「その判断は、すでに学長も共有しています」

オーケストラ部部長小林、ヴァイオリン菅野と杉田は、ただ頭を下げるのみの状態。

祐が、大人しい声。
「僕にも、全く余裕がない状態なんです」
「弾きたくて弾きに行ったのではなくて」
「今日は、突然呼ばれて、無理やり初見で弾いた、そんな感じです」

佐々木教授も、祐に同情的。
「私も祐君にバイトを頼んでいますが」
「名前は明かせないけれど、相当高名な日本トップクラスの古文学者数名から、期待されて原稿を書いているの」
「私でも、尻ごみするほどの人」
「だから、音楽は、私から見ても、息抜きかなあ」

ヴァイオリン杉田香織は、目を丸くする。
「でも、難しい曲、しかもジュリアさんでしょ?」
「初見で弾ける、しかも、あんなに上手に」

ヴァイオリン菅野も、信じられない、と言った顔。
「とても趣味とか息抜きのレベルでは・・・ないなあと」

佐々木教授は、祐の子供の時から、よく知っている。
「師匠は、中村雅代先生・・・あ・・・ごめん」
「言ってしまった」

祐は苦笑。
「口が軽過ぎです」
「親父が中村先生のコンサートのポスターとプログラムノートの写真を撮っているんです」
「先生の若い頃から」
「僕は、最初は・・・小学校一年の時にお逢いして、親しくなった」
「それから、レッスンをしてもらった」
「オンラインのレッスンもあったかなあ、別荘で連弾もした」

オーケストラ部部長小林、ヴァイオリン菅野と杉田香織は、震えるほど驚いた。
オーケストラ部部長小林
「そこまでの・・・すご過ぎ」
ヴァイオリン菅野
「なかなか弟子を取らない中村さんが祐君を?」
ヴァイオリン杉田香織
「私たちと、レベルが違う、違い過ぎる」

純子もその「中村雅代」は知っていた。
「え・・・かの・・・世界的な?美人の?」
朱里も驚く。
「サイン欲しいなあ・・・すご過ぎ」

杉田香織は、うらやましくて仕方がない。
「それで、音楽は趣味とか、やっている暇がないとか、ぜいたく過ぎ」
「私なんて、必死にやっても・・・なかなか」

祐のスマホに着信があった。
少し緊張した顔で、席を立ち、何か話して戻って来た。
「秋山先生でした」
「講演用原稿はOKとのことでした」
「はぁ・・・怖かった」
「どうなることやらと」

これには、佐々木教授、純子、朱里もホッとした。
佐々木教授は、祐の肩をポンと叩く。
「さすが、祐君!」
「よく頑張った」
純子は目が潤む。
「ほんまや、相当気をつかって・・・」
朱里は祐を「憧れの目」で見る。
「追いかけてきてよかった」

その話は、オーケストラ部部長小林、ヴァイオリン菅野と杉田には意味不明である。
ただし内容は部外秘なので、説明はなされなかった。
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