第217話田中朱里、名古屋の祖母と母に大変化

文字数 1,325文字

私、田中朱里は、祐君が少しずつだけど、近くなっていると思う。
以前のような無視や、塩対応がなくなった。(もちろん、その原因を作ったのは、私の高飛車で、祐君に迷惑をかける言動からだけど)(誰にせよ、高飛車な言動をされれば、好かれないのは当然)(今朝のオーケストラ連中の態度で、よくわかった)

それと、名古屋の、あの頑固な祖母と母の態度が、ガラッと変わった。
祐君のお父様とお母様について、「祖父、父、兄」が、祖母と母に知らしめてくれたのである。

「祐君のお父さんは、森田哲夫さん」
「若い頃に写真家大賞を取り、次々にヒット作を出版、現代日本を代表する写真家」
「日本写真家協会の大幹部、将来は会長」
「いつかは勲章をもらう人」

「お母様の彰子さんは、源氏物語と万葉集の研究者」
「何冊も、本を出して、売り上げもすごい、人気作家」
「NHKでは常連解説者でコメンテーター」
「師匠が秋山康さん、皇室にもご進講される人で秋山先生の次は、彰子さんに決まっている」

私も同じようなことを言ったけれど、「祖父、父、兄」からの「知らしめ」効果はてきめんだった。

さっそく母愛子から電話が来た。
「朱里!何でしっかり説明できないの!」(え?私の説明不足が悪いの?)
「そんな、すごいお父様とお母様だったの?」(もう・・・何度も言ったのに・・・)
「県庁の候補者は、据え置きます」(は?そんなに簡単に?)
「しっかり、まずはお友だちとして、交際を始めなさい」(・・・あ・・・うん・・・)
「で・・・何か贈りたいの、お近づきのしるしに」(ほー・・・名古屋得意の物量攻勢?)


「うーん・・・祐君、食が細いの」(心配になるほど、祐君は、純子さんと真由美さんがいるから、生きているだけ)

母愛子
「そうなの・・・心配・・・」(危険・・・そうなった時の母は、メチャ親切の押し売りになる)
「精のつくものかなあ」(それはいいけれど、量は考えて欲しい、笹塚から千歳烏山まで運ぶのも大変)
「何とかします、任せて!」(それが怖いのに・・・)

母愛子の声が、少しやわらかくなった。
「おばあ様のお話では、すごく可愛い子って聞いたよ」
「写真が欲しい、見たい、送って」

送った直後だった。

「あらーーー!可愛い!」
「朱里より、可愛い!」(この母を蹴飛ばしたくなった)
「お父様も、相当イケメンだけど」
「祐君は・・・はぁ・・・」(その・・・ため息は何?)

「ねえ、待ち受けに使っていい?」(女子高生なの?あなた40代の母でしょ?)
「でも、一緒に映る朱里が邪魔だ」(ここで娘苛め?)

「で、どこまで仲良しになれたの?」(急に、怖い質問になった)


「隣に座れるくらい、でも、まだまだ」
「祐君は、忙しい」
「古今と源氏と万葉集二本の掛け持ち、全部有名な学者さんからの頼みで」
「その原稿を作るのに、必死みたい、おそらく本も出る」

母愛子
「それだけ才能を認められている子なのね」
「しかし、責任を感じて、苦しんでいると」
「朱里で勤まるかなあ・・・」
「それも不安」


「でも、祐君が好きなの、ずっと見ていたい人なの」
「少しずつでもいい、祐君の役に立ちたいの、支えたいの」

講義中に、そんなことを思い出していると、祐君は、また、おなかが痛いらしい。
胃のあたりをおさえている。
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