第344話レイラの祐ショック 祐のブログに強い関心を持つ

文字数 1,340文字

祐は演奏後、大きな拍手を寄せる聴衆にジュリアとお辞儀、そのまま大学に戻った。
午後の講義に出席するためである。
ジュリアも、午後はオーケストラの練習があるので、少しして帰って行った。

さて、レイラは、初めて直接見た祐に、まだフワフワ感がおさまらない。
複雑な感情もある。
愛奈のスマホに映る祐が可愛かった。
自分では追い抜きたいと思っている愛奈から、祐を奪って、マウントを取りたかった。
だから、マネージャーに無理を言って、祐との面会にこぎつけた。

祐に会ったら、得意の「見下し暴言」を使って、祐に対しても「マウントを取る」、「ひれ伏させる」その作戦だった。
しかし、祐は、そんなマウントも何も、レイラそのものを知らなかった。
炎上タレントとして有名(最近の芸能界,SNS界隈)の自分を知らなかったことも驚いたけれど、自分の芸の欠点を即座に見抜かれたことも、ショックだった。

得意の受けていた暴言動画を見ても、何も面白そうにしない。
「どこでも通用する芸が、本物」
「これ、このライブバーで受けるのかな」

「痛いことを言われた」と思った。
ライブバーに集まっている客は、年齢は様々、しかし賢そうな人が多い(服装も落ち着いている感じ)(レイラが付き合っている芸能人連中より上品な雰囲気)

「炎上暴言の芸は、他人を攻撃、傷つける芸」
「偉そうな人のアラ探し、ボコボコに痛めつけて泣かせる芸」
「他人を傷つけて、自分のストレスを発散させるだけ」
「自分がそれで偉いわけではないけれど」

最近は、それに悩んでいたことは事実。
でも、プロデューサーは、「炎上する暴言芸」それしか、要求して来ない。
後で、何かミスをした時、「ひどいしっぺ返し」を受けることも覚悟している。

少し考えていたら、愛奈に呼ばれた。
「目立つから、カウンターに」

レイラが愛奈と並んでカウンター席に座り、マスターとの会話が始まった。

マスター
「気持ちは済んだ?祐君、すごく忙しいんだ」
「まだ無理はして欲しくないけどね」

愛奈は、レイラに「事故」のことを簡略に教えた。
レイラは背筋が冷たくなった。
「それ・・・ひど過ぎ・・・」
「まだ、犯人からも高校からも謝罪がないの?」
「痛めつけておいて、知らんぷりなの?」

愛奈は難しい顏。
「弁護士が交渉中ではあるけれど、そんな状態」
「保険会社も困っているみたい」

マスター
「レイラさん、祐君は、あんな感じ」
「モテるけどさ、目の前のことに必死」
「頑張り過ぎるから、周りがサポートしたくなる」
「結果は、いつも極上でね」

愛奈
「そうだよね、祐君の演奏を聴くと、力が湧いてくる」
「楽しいし、モヤモヤが全部消える」
「だから、人が集まる」

マスターは笑顔。
「それで、この店の売り上げも増えた」
「祐君には感謝している」

レイラは、愛奈の顏を見た。
「私も、新しい芸風見つけるかな」
「暴言も飽きた、怖くなって来た」

愛奈は、タブレットを愛奈の前に置く。
「祐君のブログでも読んでみたら?」
「古文がテーマだけどさ、読みやすい」

レイラは、愛奈のタブレットを借りて読み始めた。
「紫の上?光源氏の浮気に苦しむ?」
「うん・・・朧月夜?あ・・・知ってる・・・」
「須磨流しの原因の女?え?関係が復活している?」

レイラは、読み始めたら止まらない、メモまで取って、真剣な顔になっている。
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