崩れあんころ餅

文字数 939文字

 はぁ……またここか……何回目が覚めてもここっていうのも……でもまぁ、仕方ねぇけど。
 「おい。レニアド! もたもたするな! さっさと働け!」
 へいへい。んなこと、言われなくてもやりますよ。やる気が起きたら……ね。

 前回は確か……あぁ、確か斧でぶった切られたっけ。その前は細身の剣で何度も突かれて……その前は……なんかでっかい重りみたいなのに潰されたな。さて、今日はなににやられるんすかね。
おれはぼりぼりと頭をかきながらぼんやりとしていると、いつの間にか意識は遠のいていって……。それから……えっと。あれ。覚えてねぇ。なんでだ???

 頭がまだふらふらする中、おれは看守に記憶がないことを言おうと近づくと、その看守はおれの顔を見てひっと小さな悲鳴を上げて顔を引きつらせた。その理由を聞こうと口を開くと、看守は一目散に逃げて行った。おれ、まだなにも言ってないんだけど……仕方なく、ほかのやつに聞こうと足を動かしたけど……おかしいな。誰もいない。いつもこの広場にはたくさんのやつがいるのに……今日はいねぇのか?
 あたりを見回しても人の気配を感じ取れず、状況が掴めないでいるとおれの背後から小さな物音が聞こえた。これはチャンスだと思い、おれはその音のする方へと向かうと、頭を抱えて縮こまっている罪人がいた。なぁ、なんでこんなに人がいないんだ? 教えてくれ。
 すると、その罪人は声を震わせながら怒鳴った。


           「お前が全部殺したんだ

 おれが? ここにいる全員を? まさか。そんなわけないだろ。おれ、さっき目が覚めたばかりなんだぜ? なのに、おれが殺したなんて……。
 あれ……なんだこれ。ぬめっとしてて……なんか生暖かいものがおれの顔についてる。あ、これ……あ、そういうこと……おれが……。
「うわぁあああああ!!」
 その罪人は涙を浮かべながらおれに突っ込んできた。右手に何かを持っていて。その右手に持っているものが分かったときには、おれの首は空を回転していた。あぁ……またか。また……繰り返すんだ……この地獄を……。おれの視界は暗くなり目の前でパチパチと鋭い光が刺さった。これがいつもやってくる転生の合図。また……おれはやり直すのか。この生き地獄を……。覚めない悪夢を……。
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