ふわり春満開♡さくらピーチティー【神】

文字数 1,194文字

 そよそよと吹く風に気持ちをくすぐられた。

 いっしょにおでかけしようよ

 そんな風に声をかけられたような気がしたの。でも、今は手が離せないの。

 そんなこといわずに。ほら、こんなにそとはきもちがいいんだよ。

 わたしは作業を止めて外をみた。雲一つない気持ちの良い空に青々とした草木。そして、ぽつぽつとピンク色の花をつけた木々が、わたしに手招きしていた。

 いっしょにおはなししませんか。

 わたしは我慢ができず、作業を中断し自室へと向かった。こういう気持ちの良い日は、やっぱりお気に入りのお洋服に着替えた方がもっと楽しめそうな気がするもの。クロークを開き、たくさんの洋服の中から選んだのは、今の季節にぴったりのピンクローズのコサージュがついたスプリングドレスに、澄み渡った空のようなロウヒール。それから、桃色のパラソルを持って準備を整えてから外へ出ると、花の香りが混じった春風がわたしの目の前を笑いながら通り過ぎた。

 こっちこっち。さぁ、こっちへいらっしゃい。

 ふんわりとした甘さの風に誘われるように、わたしは歩き出した。一歩また一歩踏み出す度に風がくすくすと笑い、わたしを導いてくれる。さっきまで作業をしていたのに、こんなに素敵なことならもっと早く気が付いておでかけすればよかった。
 風に導かれてしばらく、大きな土手に出るとその脇にはたくさんの菜の花が咲いていた。風に揺られているその姿は、まるで風と一緒に踊っているかのようなそんな感じがした。

 ほらほら。あなたもいっしょにおどりましょ。

 ひゅうと少し強めの風に背中を押され、わたしはパラソルを開いてくるりくるりと舞った。舞う度にふわりふわりと舞う黄色い花弁、甘い蜜の香りを含んだ春風。まるでわたしも一緒にダンスをしているかのようなそんな気持ちにさせてくれたのは、あの時作業部屋に迷い込んだちょっといたずらな風だった。

 いっしょにおどれるなんておもってなかったよ。さぁ、もっとおどりましょう。

 作業部屋にいたときの風が、ジェントルマンに変身してわたしの手をやさしく取った。わたしは、そんなジェントルマンな風とワルツを踊るようにステップを踏んだ。

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 軽やかなステップと共に風が舞う。その風が菜の花たちに元気を与え、さらに眩しく輝く咲き誇る。ぽつぽつと咲いていたピンク色の花びらも、風が通り抜けるとふわりと可愛らしいつぼみをつけた。今はまだ誰もいない土手に満開になるのは、ちょっと寂しいかな。だから、みんなの笑顔が咲くときに一緒に咲こうねとわたしがつぼみに告げると、つぼみはほんの僅かに開いて応えてくれた。
 わたしは花風の使者ルーティ。舞う風でみんなに元気をおすそ分けする者。

 みんなにえがおのはながさきますように
「みんなに笑顔が溢れますように」

 くるり くるり ふわり ふわり さぁ、はるかぜといっしょにおどりましょ?
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