ぷるぷる♡ミルクプディング 完熟真っ赤なイチゴソース添え【神】

文字数 2,922文字

「ちっ……シケてんなぁ……あれだけ苦労してこれっぽっちかよ……」
 賞金稼ぎ─バウンティハンター受付で貰った報酬を見て、受付にすごい剣幕で突っかかるも、これ以上は無理だと言われてしまい、仕方なく諦めることに。大きな袋の割に軽い中身に落胆しつつ外へと出た。その人物の心はどんよりとした曇り空なのだが、表は逆に雲一つない快晴だった。大きなため息を吐きながら報酬をしまい、これからどうしようかと考えている途中、それとはまた別の

があったことを考えると、まぁいっかと諦めがつけた。
「あぁ……またやるか。賞金首を狩りに……な」
 その人物はフードを深く被り、表に出ている賞金首のチラシをいくつか掴むと、背中から羽を生やし空高く舞い上がった。

「えーん。誰かー。たーすーけーて」
 純白のうさ耳パーカーにストロベリーのようなフリルスカートを身に着けたの少女は、悲鳴を上げながら何者から逃げていた。少女が走り去ってしばらく、その後を竜人が怒声を上げながら追いかけていた。
「おいお前! 待ちやがれ!」
「えーん! こわいよー! たすけてー!」
「おまっ! いい加減なこと言うな!!」
「だーれーかー! たーすーけーてぇ!」
 やがて少女は崖の淵に立たされ、逃げ場が完全になくなった。振り返り来た道を戻ろうとするも、すでに追手に追いつかれており完全に逃げ場はなくなっていた。いや、この崖から飛び降りれば逃げることも可能だが……それはあまりにも危険すぎた。少女は恐怖を感じたのか、その場でうずくまってしまった。その様子を荒い呼吸をしながら竜人たちは見下していた。
「はぁ……はぁ……追いついた……はぁ……観念してもらおうか」
「い……いや……こわいよぉ……」
「こいつ……思いのほか足……はえぇの……驚いたっす……はぁ……はぁ……」
「俺たちの同胞の恨み、ここで晴らすからよ……大丈夫だ。痛みは一瞬だから」
「き……きゃああ!」
 竜人たちは得物を引き抜き、恐怖でうずくまっている少女に向けて刃を見せた。徐々に距離を詰め、あと一歩で少女に刃が届くまで近づくと竜人たちは一斉に刃を振り上げた。構え直し一気に刃を振り下ろすと、確かな手応えが竜人たちの手に伝わった。それを感じた竜人たちは仕留めたと思い、気を抜いたときだった。追いかけてきた竜人の一人が何か

で殴られたような音と共に崩れ落ちていった。
「なっ! 何が起きた!!」
 殴られた竜人の頭は陥没し、既に事切れているのは明らかだった。それを見た残った竜人たちは只ならぬ気配に得物を持つ手が急に震えだした。その恐怖を煽るかのように、上空では何かが羽ばたいていることにまさかと思い、竜人の一人がゆっくりと顔を上げた瞬間、表情が凍り付いた。
「あー、こわかったぁ。今日もこわぁい人がいっぱいだよ……。こわいから、たぁっくさん武器を持ってきたんだ。えへへぇ。わたしったらいい子♡」
 さっきまでうずくまっていたのは偽物で、上空で羽ばたいている人物が本物だった。対空状態の少女の手には鎖で繋がれた鉄球があった。その鉄球はただの鉄球ではなく、鋭い棘がいくつもついており見ただけで凶器とすぐに判断ができるものだった。それを握っている当の本人は嬉しそうに微笑んでいた。
「今日はこの子にしよっかな☆」
「あ……あ……あ……」
「やばいっすよ!! に、逃げましょう!!」
「ふざけるな! ここで逃げたら一族に申し訳ねぇ! お前だけ逃げろ!」
「できないっすよ! おれもここでたたか……ぐがっ!!!」
「クラフィールにも……できるかなぁ?? えへぇぇ☆」
「お……お前……よくもっ!!! 許さん!!」
「やだぁ! やられちゃうー! ……なぁんて言うとでも思ったかこの下種が」
「!!!」
「みぃんな仲良く☆地獄に行けや」
 少女─クラフィールが笑顔のまま鎖を振るうと、空気を割く音と共に物凄い勢いで鉄球が振られ竜人の頭へと叩き込まれた。骨の砕ける音が辺りに響き渡ると、その感触を楽しんでいるクラフィールは更に禍々しく微笑んだ。
「はぁ……最っ高♡」
 頭部を潰した快感に浸っていると、竜人たちの増援がぞろぞろとやってきて、またあっという間に囲まれてしまった。その中に見たことのある顔を見つけると、クラフィールはにたりと笑った。
「賞金首……ん、んんっ!! 悪い子はいませんかぁあ?」
 それは賞金首のチラシに書かれていた特徴とぴったり合う人物だった。こいつの懸賞金は……その金額の高さからクラフィールは自然と満面の笑みが浮かび、竜人たちに恐怖を植え付けた。
「みぃんなまとめてやっちゃうぞ☆」
 目的の人物だけを残すよう鉄球を振り、最後になった賞金首の竜人はすっかり腰が抜けてしまい這う形でクラフィールから逃げて行った。
「う……うわぁああ!!」
「あれれぇ? どこへいくのぉ?」
 賞金首が逃げていくのを見ているクラフィールは、のんびりした口調で追いかけまた可愛らしい笑顔を浮かべて賞金首に微笑みかける。
「ひぃっ! お……お許しを……!!」
「逃がさないゾ☆」
 無慈悲に振り下ろされた鉄球は、竜人の願いを飲み込んだ後には静寂がやってきた。その静寂の中、クラフィールは竜人が住んでいた村を手当たり次第調べ始めた。静かになった竜人たちが住んでいた村には、クラフィールが何かを探している音だけが響き、何も知らない人間がここへきたときはきっと驚くだろう。なぜなら、クラフィールの服は竜人たちの返り血をたっぷりと浴びているのだから。
「ったく、どこへ隠しやがったんだ……あいつ。だいたいこういうところに……って、あった」
 探し求めていたものを手にするや、すぐにポケットへとしまい一連のことを報告するためクラフィールは羽を生やし賞金稼ぎの受付へと向かった。

「クラフィールさぁん。お待たせしましたぁ。2番カウンターまでお越しください」
 受付で自分の名前が呼ばれたクラフィールは、指定されたカウンターまで行き椅子に腰を下ろした。そこへ書類を持った職員がやってきて、今回の件についてクラフィール自ら報告を行った。
 竜人たちは辺り一帯の町から金品や食料を盗んだりと悪行を働いていた。それに困った被害者が賞金首としてチラシを掲示したという。悪行を行った竜人たちは壊滅し、チラシの下の方に書かれていた依頼人の家宝も無事に返すことが出来、この依頼は完全な形で終わりを迎えることが出来た。報告を受けた職員からも、今回の依頼については満足のいく結果だということで懸賞金よりも多く支払いがあった。
「はい、お疲れさまでした。今回は少し多めにお支払いしますね」
「わぁい! うれしいなぁ!! わたし、もっと頑張るね!」
「よい報告をお待ちしてますよ」
 報酬が入った袋を満足そうに受け取ったクラフィールは、職員に一礼してから外へ出た。クラフィール自身も満足のいく結果になり、心がなんだかウキウキしていた。この気持ちを維持した状態なら、きっと依頼の一つや二つはすぐに解決できるだろうと思ったクラフィールは次の賞金首のチラシを見てにやりと笑う。
「さぁて、次の賞金首はっと……」
 次なる別の報酬(対象物の悲鳴)を求め、クラフィールは羽を生やして大空へと駆けていった。
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