ノンアルで盛り上がろう♪果実たっぷりのカクテル【魔】

文字数 1,125文字

「う~ん……はぁ」
 ふらふらとした足取りで歩く少女がいた。気分が悪い……というわけではなさそうだが、どこか意識が曖昧な様子が伺える。とろんとした瞳、短くとも鋭い爪、やや露出度が高めの衣服に黒い網タイツ、ピンク色のヒールを履いた少女─シュネールは、目を擦りながら歩いていると、彼女の目の前に下品な笑い声を浮かべる二人の男性悪魔が立ちふさがった。
「よぉ姉ちゃん。そんなふらふらでどこ行くの」
「おれたちが家まで送ってってやるよ~」
「んぁ……んん。らいじょうぶ」
 シュネールは首を振り、二人の申し出を断った。それを見た二人は一気に不機嫌にあり、シュネールの胸倉を掴んで怒鳴った。
「人の親切心を無駄にする気か? あ?」
「運んでってやるっつってんだろ」
「らいじょうぶらって」
 シュネールは掴まれた手を振りほどき、ふらふらした足取りで二人との距離をとった。一気に距離を詰められなければ平気な位置まで移動したシュネールは、目を擦りながらはぁと息を吐いてから大きく空気吸い込んだ。口に含んだ空気をもごもごと動かしながら、まるで空気を味わっているかのようにゆっくりゆっくりと咀嚼し始めた。
「んまんま。んー」
 やがて咀嚼し終えたシュネールはぷうと頬を膨らませ、二人に向けた。
「ぷーー」
 シュネールの口から発射されたのは、真っ赤に燃え盛る火炎だった。その火炎は二人の間を通り過ぎると大きな岩にぶつかり、消滅した。その際の衝撃は結構なもので、二人がぴくりとも動けないほどの衝撃だった。シュネールは大気中に含まれる属性成分─エレメントを吸い込んで体に取り込むことができる。そしてそのエレメントを使用し、戦うことができる。本人曰く、エレメントはどこかお酒に似た味だそうで、そのお酒にも似た味で酩酊状態になりさらに力を増幅させているのだとか。
「え……」
「な……」
 衝撃の中、一言発するのがやっとの二人にシュネールは頭をぽりぽりと掻きながら「んー、失敗しちゃったらぁ」とけらけらと笑った。二人は少しずつ動けるようになり、顔を見合わせ何やら口を動かしていた。その間にもシュネールはまた大きく息を吸い込み、口をもごもごと動かし頬をぷうと膨らませ、二人に向けて発射した。すると今度は白銀に輝く氷を吐き出した。白く伸びる氷の吐息はまるで白蛇のように二人の間を通り抜けると、瞬間的に通ったあとを白く凍り付かせた。
「……」
「……」
 驚いた表情のまま凍り付いた二人の口からはもう何も発せられず、代わりに冷たい空気だけがひょうと通り抜けた。一方、シュネールはというと目を擦りながらふわあとあくびをし、ふらふらとどこかへ行ってしまった。またどこかでおいしいエレメントを吸い込めないか期待をしながら……。
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