ホイップたっぷり♡スイートミルクチョコラテ【魔】
文字数 3,508文字
「……くちゅん」
「おい。どうしタ。風邪ひいた……カ……ぶぁあっくしょん!」
「……骨三郎。くしゃみおっきい」
「うっせぇ! 出ちまったもんはしょうがねぇダろ!」
お互いのくしゃみについて言い合いっこをしている仲良しコンビ。一人は銀色の髪をお気に入りの髪留めで括り、完熟イチゴのような真っ赤な瞳。そして、小柄な体に不釣り合いなくらい大きな鎌を持っている。死という名の安らぎを与えるもの─アズリエル。寒さ対策にしっかりと着こまれたコートは袖が余っているのか、時折ぶらぶらさせながら遊んでいる。そしてそんなアズリエルの周りを浮遊している頭蓋骨─骨三郎。本名はあるのだが、アズリエルが言うには「長すぎるから骨三郎がいい」と言われてしまい、それ以降ずっと骨三郎と呼ばれている。骨三郎と呼ばれるのは悪くはないのだが、骨三郎としては時々でいいから本名を言いたいなぁと小さく呟いているのだとか。
お互いのくしゃみで言い合っていると、頭上からなにやらひんやりとしたものが降ってきた。なんだろうと思いアズリエルが空を仰ぐと、白くて小さなものがふわふわと舞い降りていた。その白いものがアズリエルの頬に触れると、一瞬の冷たさとともにすぐに消えてなくなった。今度は手を伸ばして手のひらに白いものをのせると、同じように一瞬冷たく感じてすぐにそれはなくなった。
「なァ、これって雪じゃねぇカ?」
「ゆき?」
「寒くなると降るときガあるんだ。きれいだけど、寒くテナ。アズ、どこかに寄ろうゼ」
「うん。ちょっとさむい」
こうしてアズリエルと骨三郎はどこかに町がないか探し始めた。すっかり暗くなっているなか、町を探すのは難しいだろうと考えていたのだが逆に暗くなっていたから探すことは容易だった。なぜなら、暗さの中にぼんやりとした明かりを見つけることができたからだ。
「骨三郎。あっち」
「おぉお! よっし、行くぞアズ!」
「おー」
二人が到着したのは、あちこちまぶしいばかりの装飾で溢れた町だった。いや、町全体が飾られていると言った方が正しいか。家はもちろん、町の中にある木々、柵にいたるまで色とりどりの装飾が施されている。木々には赤や緑、黄色の光が点滅し、家の中は暖色の光、柵は少し冷たさを感じるような光でいっぱいだった。
それだけでなく、家も特別仕様となっているのか対面式となっていて棚には美味しそうな食べ物や綺麗な置物がずらりと並んでいた。温かいものもあるようで、中にいる人が外にいる人に手渡しているとき、濃い白色のもやが出ているものを口に含んだ人が「あっつい!」と叫びながら驚いていた。
「なぁ、アズ。きれいだな」
「うん。ぴかぴかしてる」
「そうだナ。とりあえず理由を話しテ……って、アズさぁん!! 行くの早すぎマセンかぁ?!」
骨三郎が慎重に行動しようといいかけたとき、既にアズリエルは飛び出していた。大きな鎌もその辺に置いて一目散にお店へと向かったアズリエルは、きらきら輝く置物に釘付けだった。
「うぁ……きれい」
「ん? いらっしゃい。お嬢ちゃん。なにか気に入ったものあったかい?」
「えーっと……これ」
恰幅のいい店主がアズリエルに尋ねると、アズリエルは少し迷って小さなクリスマスツリーを模した置物を指さした。指さされたものを店主がひょいと持ち、慣れた手付きで紙で包むとそれをアズリエルに手渡した。
「はいよ。お待たせ」
いつものならここで「おかね」というものが出てくるのだが、いくら待ってもそういったことがなく、店主は不思議そうに首を捻っていた。
「お嬢ちゃん。どうした。なにかあったのかい?」
「……おかねは?」
アズリエルの一言に目を丸くした店主は、しばらくして大きな声で笑い出した。なぜ笑っているのかわからないアズリエルが今度は首を傾げた。
「あぁ、すまねぇな。ここにあるものはお代もらってないんだ。だから、気になったものがあったらその店の人に聞いてみてくれ。どこもお代なんて取らないと思うから」
「……そうなの?」
「お嬢ちゃんはこの町は初めてかい。今、うちの町ではクリスマスマーケットをしてるんだ。町の人たちやここに来てくれた人が楽しめるようなものを置いてるんだ。楽しんでもらえるものであればなんでもいいってルールでやってるんだ。だから、楽しんでくれるというのならお代はいらねぇってことになってな。だから安心してくれな」
「……おもしろそう。ねぇ、ともだちもいっしょにいい?」
「あぁ。もちろんだ。楽しんでおいで」
「ありがと」
ぺこりと頭を下げ、アズリエルは骨三郎を探しに辺りを見回していると不安そうな表情をした骨三郎を見つけた。アズリエルが声をかけると、骨三郎は最初は喜んだ表情になったかと思えば次はぷんぷんと怒った顔になってアズリエルに近付いてきた。
「あァ! アズ!! 勝手に飛び出すナヨ! 心配するじゃねェカ!!」
心配している骨三郎を他所に、アズリエルはさっき貰ったクリスマスツリーの置物を骨三郎に見せた。
「じゃーん」
「じゃーん。じゃねぇヨ! お金はどうしたんだよ! オレたち無一文だろ?」
「もらった」
「もらった。じゃねぇヨ!」
「ほんとなのに」
「わかったわカッタ! じゃあ確認しようジャネェか。それを貰ったお店はドコダ?」
「あっち」
どうしても信じてもらえないことにちょっぴりもどかしさを覚えたアズリエルは、さっきクリスマスツリーの置物をくれたお店まで骨三郎を案内した。
「お、さっきのお嬢ちゃん……と、うわぁ!」
「これ、あたしのともだち」
アズリエルの背後から現れた骨三郎にびっくりした店主は、驚きの声をあげるもアズリエルが友達というのならそうなのだろうと自身を納得させ、どうしたのか尋ねた。
「さっき、こいつがこのお店デ置物をモラッタって言ってるだけど……」
「あぁ。あげたよ」
「コラ。アズ、嘘を言うな……って……へ?」
「確かに上げたよ。じゃあ、お友達にも軽く説明しておこうか」
そういって店主は骨三郎にもこの町の説明をすると、骨三郎は「なぁるホド」と言って満足そうに頷いていた。だからアズリエルが言っていたことは本当だということに、骨三郎は申し訳なくなり謝った。
「すまん。アズ。疑ってタ」
「ううん」
「仲直りも済んだことだし、今日は楽しんでいきな。宿がないならおれの家が空いてるから、疲れたらいつでも帰ってきな」
「うぁあ……ありがとう。骨三郎、いこ」
「なにからなにまで……スマ……ネェエエェェェエ!!!!」
アズリエルに引っ張られ、骨三郎の店主への感謝の意はエコーがかかりこれには店主は大きな声を上げて笑った。
それからアズリエルと骨三郎は、町の人の厚意に甘え食べ物や飲み物をご馳走になり身も心もぽっかぽかになっていた。満足した二人はクリスマスツリーの置物をくれた店主の家の前で立っていると、店主が優しく迎えてくれた。そして二階にベッドを設えてくれていた。店主にお礼を言った二人はふかふかのベッドにふんわり飛び込んだ。
「どーん」
「どーん」
「……ふっかふか」
「だなァ」
「ねぇ骨三郎」
「ん?? どしたアズ」
「ありがと」
目と鼻の先にいる骨三郎に向かってアズリエルは感謝の意を述べた。なぜいきなりアズリエルがこう言ったのかはわからないが、骨三郎は不意打ちを食らいあたふたし始めた。
「どどど……ドウしたんだ? 急に」
「なんだか。おれいいわないといけないなっておもって」
「な……なんかお礼されるヨウなこと、したか?」
「……いっしょにおみせめぐりしてくれたこと?」
アズリエルは、さっきあちこちお店を一緒にめぐってくれたことに対してお礼がしたかったらしい。そのことかと納得した骨三郎は「別にイイってことよ」と言いながらアズリエルの枕に頭蓋骨を置いた。
「骨三郎はあっち」
「ひどっひ!」
アズリエルの無慈悲な一撃で骨三郎は枕から追い出され、仕方なく窓際で休むことにした。暑さ寒さを感じることはないが……これ以上いうのはよしておこう。骨三郎はアズリエルが寝静まるまでずっと見守っていた。そして完全に夢の中へと遊びにいったことを確認した骨三郎は夜空に浮かぶまんまるな月を眺め呟いた。
「アズ。メリークリスマス」
なにもプレゼントを用意することはできなかったけど、こうしてアズリエルと一緒にいられるというのが何よりも骨三郎からのプレゼントではないだろうか……。今日はいつも以上にアズリエルが可愛く見えた骨三郎は、寝返りをうってシーツからはみ出た腕を静かに咥えてベッドの中に入れてからシーツをかけてふうと息を吐いた。その瞳に映っているのはとても楽しそうに笑っているアズリエルの寝顔だった。
「おい。どうしタ。風邪ひいた……カ……ぶぁあっくしょん!」
「……骨三郎。くしゃみおっきい」
「うっせぇ! 出ちまったもんはしょうがねぇダろ!」
お互いのくしゃみについて言い合いっこをしている仲良しコンビ。一人は銀色の髪をお気に入りの髪留めで括り、完熟イチゴのような真っ赤な瞳。そして、小柄な体に不釣り合いなくらい大きな鎌を持っている。死という名の安らぎを与えるもの─アズリエル。寒さ対策にしっかりと着こまれたコートは袖が余っているのか、時折ぶらぶらさせながら遊んでいる。そしてそんなアズリエルの周りを浮遊している頭蓋骨─骨三郎。本名はあるのだが、アズリエルが言うには「長すぎるから骨三郎がいい」と言われてしまい、それ以降ずっと骨三郎と呼ばれている。骨三郎と呼ばれるのは悪くはないのだが、骨三郎としては時々でいいから本名を言いたいなぁと小さく呟いているのだとか。
お互いのくしゃみで言い合っていると、頭上からなにやらひんやりとしたものが降ってきた。なんだろうと思いアズリエルが空を仰ぐと、白くて小さなものがふわふわと舞い降りていた。その白いものがアズリエルの頬に触れると、一瞬の冷たさとともにすぐに消えてなくなった。今度は手を伸ばして手のひらに白いものをのせると、同じように一瞬冷たく感じてすぐにそれはなくなった。
「なァ、これって雪じゃねぇカ?」
「ゆき?」
「寒くなると降るときガあるんだ。きれいだけど、寒くテナ。アズ、どこかに寄ろうゼ」
「うん。ちょっとさむい」
こうしてアズリエルと骨三郎はどこかに町がないか探し始めた。すっかり暗くなっているなか、町を探すのは難しいだろうと考えていたのだが逆に暗くなっていたから探すことは容易だった。なぜなら、暗さの中にぼんやりとした明かりを見つけることができたからだ。
「骨三郎。あっち」
「おぉお! よっし、行くぞアズ!」
「おー」
二人が到着したのは、あちこちまぶしいばかりの装飾で溢れた町だった。いや、町全体が飾られていると言った方が正しいか。家はもちろん、町の中にある木々、柵にいたるまで色とりどりの装飾が施されている。木々には赤や緑、黄色の光が点滅し、家の中は暖色の光、柵は少し冷たさを感じるような光でいっぱいだった。
それだけでなく、家も特別仕様となっているのか対面式となっていて棚には美味しそうな食べ物や綺麗な置物がずらりと並んでいた。温かいものもあるようで、中にいる人が外にいる人に手渡しているとき、濃い白色のもやが出ているものを口に含んだ人が「あっつい!」と叫びながら驚いていた。
「なぁ、アズ。きれいだな」
「うん。ぴかぴかしてる」
「そうだナ。とりあえず理由を話しテ……って、アズさぁん!! 行くの早すぎマセンかぁ?!」
骨三郎が慎重に行動しようといいかけたとき、既にアズリエルは飛び出していた。大きな鎌もその辺に置いて一目散にお店へと向かったアズリエルは、きらきら輝く置物に釘付けだった。
「うぁ……きれい」
「ん? いらっしゃい。お嬢ちゃん。なにか気に入ったものあったかい?」
「えーっと……これ」
恰幅のいい店主がアズリエルに尋ねると、アズリエルは少し迷って小さなクリスマスツリーを模した置物を指さした。指さされたものを店主がひょいと持ち、慣れた手付きで紙で包むとそれをアズリエルに手渡した。
「はいよ。お待たせ」
いつものならここで「おかね」というものが出てくるのだが、いくら待ってもそういったことがなく、店主は不思議そうに首を捻っていた。
「お嬢ちゃん。どうした。なにかあったのかい?」
「……おかねは?」
アズリエルの一言に目を丸くした店主は、しばらくして大きな声で笑い出した。なぜ笑っているのかわからないアズリエルが今度は首を傾げた。
「あぁ、すまねぇな。ここにあるものはお代もらってないんだ。だから、気になったものがあったらその店の人に聞いてみてくれ。どこもお代なんて取らないと思うから」
「……そうなの?」
「お嬢ちゃんはこの町は初めてかい。今、うちの町ではクリスマスマーケットをしてるんだ。町の人たちやここに来てくれた人が楽しめるようなものを置いてるんだ。楽しんでもらえるものであればなんでもいいってルールでやってるんだ。だから、楽しんでくれるというのならお代はいらねぇってことになってな。だから安心してくれな」
「……おもしろそう。ねぇ、ともだちもいっしょにいい?」
「あぁ。もちろんだ。楽しんでおいで」
「ありがと」
ぺこりと頭を下げ、アズリエルは骨三郎を探しに辺りを見回していると不安そうな表情をした骨三郎を見つけた。アズリエルが声をかけると、骨三郎は最初は喜んだ表情になったかと思えば次はぷんぷんと怒った顔になってアズリエルに近付いてきた。
「あァ! アズ!! 勝手に飛び出すナヨ! 心配するじゃねェカ!!」
心配している骨三郎を他所に、アズリエルはさっき貰ったクリスマスツリーの置物を骨三郎に見せた。
「じゃーん」
「じゃーん。じゃねぇヨ! お金はどうしたんだよ! オレたち無一文だろ?」
「もらった」
「もらった。じゃねぇヨ!」
「ほんとなのに」
「わかったわカッタ! じゃあ確認しようジャネェか。それを貰ったお店はドコダ?」
「あっち」
どうしても信じてもらえないことにちょっぴりもどかしさを覚えたアズリエルは、さっきクリスマスツリーの置物をくれたお店まで骨三郎を案内した。
「お、さっきのお嬢ちゃん……と、うわぁ!」
「これ、あたしのともだち」
アズリエルの背後から現れた骨三郎にびっくりした店主は、驚きの声をあげるもアズリエルが友達というのならそうなのだろうと自身を納得させ、どうしたのか尋ねた。
「さっき、こいつがこのお店デ置物をモラッタって言ってるだけど……」
「あぁ。あげたよ」
「コラ。アズ、嘘を言うな……って……へ?」
「確かに上げたよ。じゃあ、お友達にも軽く説明しておこうか」
そういって店主は骨三郎にもこの町の説明をすると、骨三郎は「なぁるホド」と言って満足そうに頷いていた。だからアズリエルが言っていたことは本当だということに、骨三郎は申し訳なくなり謝った。
「すまん。アズ。疑ってタ」
「ううん」
「仲直りも済んだことだし、今日は楽しんでいきな。宿がないならおれの家が空いてるから、疲れたらいつでも帰ってきな」
「うぁあ……ありがとう。骨三郎、いこ」
「なにからなにまで……スマ……ネェエエェェェエ!!!!」
アズリエルに引っ張られ、骨三郎の店主への感謝の意はエコーがかかりこれには店主は大きな声を上げて笑った。
それからアズリエルと骨三郎は、町の人の厚意に甘え食べ物や飲み物をご馳走になり身も心もぽっかぽかになっていた。満足した二人はクリスマスツリーの置物をくれた店主の家の前で立っていると、店主が優しく迎えてくれた。そして二階にベッドを設えてくれていた。店主にお礼を言った二人はふかふかのベッドにふんわり飛び込んだ。
「どーん」
「どーん」
「……ふっかふか」
「だなァ」
「ねぇ骨三郎」
「ん?? どしたアズ」
「ありがと」
目と鼻の先にいる骨三郎に向かってアズリエルは感謝の意を述べた。なぜいきなりアズリエルがこう言ったのかはわからないが、骨三郎は不意打ちを食らいあたふたし始めた。
「どどど……ドウしたんだ? 急に」
「なんだか。おれいいわないといけないなっておもって」
「な……なんかお礼されるヨウなこと、したか?」
「……いっしょにおみせめぐりしてくれたこと?」
アズリエルは、さっきあちこちお店を一緒にめぐってくれたことに対してお礼がしたかったらしい。そのことかと納得した骨三郎は「別にイイってことよ」と言いながらアズリエルの枕に頭蓋骨を置いた。
「骨三郎はあっち」
「ひどっひ!」
アズリエルの無慈悲な一撃で骨三郎は枕から追い出され、仕方なく窓際で休むことにした。暑さ寒さを感じることはないが……これ以上いうのはよしておこう。骨三郎はアズリエルが寝静まるまでずっと見守っていた。そして完全に夢の中へと遊びにいったことを確認した骨三郎は夜空に浮かぶまんまるな月を眺め呟いた。
「アズ。メリークリスマス」
なにもプレゼントを用意することはできなかったけど、こうしてアズリエルと一緒にいられるというのが何よりも骨三郎からのプレゼントではないだろうか……。今日はいつも以上にアズリエルが可愛く見えた骨三郎は、寝返りをうってシーツからはみ出た腕を静かに咥えてベッドの中に入れてからシーツをかけてふうと息を吐いた。その瞳に映っているのはとても楽しそうに笑っているアズリエルの寝顔だった。