第325話 ひとり執務室で 2
文字数 2,188文字
領地が拡がったんだからそれを管理する代官が必要になる。
経験上現地採用は期待薄だ。
もちろん早急に採用試験を行なって頭数は揃えるつもりだけど、僕の求めている水準に達しているものは多くない。
それと一番の問題は敵だった領地の文官は残念ながら信用度が低いことが理由だ。
信用ばかりは一 朝 一 夕 には得られないからな。
まずは現在役職についている人物のピックアップから。
サイオウ領四区を任せているのはハングリー区長ホーク・サイ、ヒロガリー区長ルビンス・ヨンブラム。ズラカリー区長サイ・カーク。
ちなみにオグマリー区は僕の直轄扱いだ。
このうちごりごりの文官であるサイが今回従軍していない。
次は区長や領主代官を任せられない人物。
農林大臣のルダー・メタは各地の農業指導や前世知識を用いた新技術の開発などで各地を飛び回っているから今は無理だろ?
内務大臣として僕の最側近を勤めてもらっているイラード・タンも手放すわけにはいかないな。
同じ理由で通商大臣チロー・トーキ、外務大臣ケイロ・ボット、魔法科学大臣チカマック・エモンザーもダメだ。
チカマックがダメならラバナルとチャールズも魔法分野の発展に欠かせない人材だから除外しないとダメか。
この遠征中に軍務大臣に任命したオクサ・バニキッタは……現在ドゥナガールの遠征軍と対峙していて下手するとずっと動けなくなりそうな気配もあるな。
教育大臣アンミリーヤと厚生大臣クレタ・ヨンブラムに領地経営は難しかろう。
そもそもどちらもオーバーワーク気味だしまだ代えがきかない。
ギランは今なら任せいもいいかと思うけれど、今や乗合ホルス車で財を成す経営者だから行政を任せるわけにはいかなくなった。
「どうして?」
「政官財は癒着すると腐るから」
「ああ、納得」
それから、今回の遠征で為政者として重責を任せるのが無理だと実感したのがサビー・タンとガーブラ・ウォウウォウ。
二人には構想中の常設軍で将軍職を考えていたのだけど、それも怪しくなったのでイラードやダイモンド・アイザーに頼んで武将教育をやってもらおうと思う。
従軍してきた中で代官や区長を任せられそうなのは元々貴族階級、騎士階級だったラビティア・バニキッタ、メゴロマ・シードゥ、セイ・シャーラック、ノサウス・クレインバレー、ウータ・マーロー、ブドル・フォーク。
元傭兵団長で電撃隊の隊長バンバ・ワンあたりか。
フィーバー隊隊長ジャパヌはまだちょっと適性を把握できてないけど、彼も傭兵団長だったんだからバンバ同様務まると思ってもいいかもしれない。
そうするとサイオウ領の治安維持に残してきたカシオペア隊隊長のカイジョーも候補に入れとかなきゃだな。
オクサの息子ペガス・バニキッタ、ズラカルト男爵の次男アンデラス・ズラカルトはまだ若くて頼りないか?
あ、でもアンデラスにはボニーデイルっていう宿老がいるから任せてもいいかも。
この遠征で臣下に降ったアゲールは他の家臣たちの反発も大きかろうから今回は見送るしかなさそうだけど、補佐には良さげかな。
「んーん……こんなところかな?」
この中から誰を選んでも優秀な文官を引き立てて上手に為政してくれるんじゃないかな?
「で? 誰をどこに赴任させるの?」
「そこだよ、リリム」
占領地を任せるのだから武力も必要だろう。
特に最前線になるオウチ領南部は熟考に熟考を重ねた上で決断したい。
「それと、そろそろ遷都をしようと考えてるんだ」
「遷都?」
「僕の居城を移すって話」
「なんで?」
「オグマリー区じゃオウチ領が遠いだろ?」
「それもそうね。で? どこに移すの?」
「それなんだよね。オウチ領は居を構えるにはあまり適してなさそうなんだ」
広げている地図は今回従軍している忍者軍団を通してトーハ・マウンターが描いてくれた詳細な地形図だ。
これによると水源に乏しく痩せた土地ばかり。
起伏が激しいのは防衛拠点としての山城を築くには都合よさそうだけど、「ここ」という地がない。
かといって、これからさらに版図を拡げようってのにサイオウ領に適地を探してもまたすぐに遷都することになるはずで、そうなると色々と無駄が多くなる。
「じゃあいっそオッカメー領に遷都しちゃったら?」
「!? おお。いいね、リリム。そうしよう」
「あら、本気でオッカメー領に遷都する気?」
「する気、する気」
もっとも、帰ってすぐってわけじゃないけどね。
さて、そうだな。
オウチ領代官はアンデラス。
ボニーデイルは当然付き従うとして補佐にオウチ領をよく知っているだろうアゲールとダイモンドをつけてサビーとガーブラもその下につけてしまおう。
アシックサルが逃げた先、ヒットコに対する二つの砦にはメゴロマとノサウスを隊長として残すことにする。
ダイモンドはまだオッカメー領にいるけどな。
そのオッカメー領の保護地(占領地とは体裁上言わない)はとりあえずオクサに任せることにしよう。
保護下に置いた町は少ないし、治安維持に電撃隊を派遣しておけばオクサが上手に使ってくれるに違いない。
サイオウ領に戻ったらサイに頼んで即戦力の文官を十人十五人オウチ領に派遣してもらおう。
ああ、ルダーにも開拓団を募って送り込んでもらうか。
「今できることはこのくらいか」
「お疲れ様でした」
「ありがとう、リリム」
あぁ……サラとキャラが恋しいなぁ。
経験上現地採用は期待薄だ。
もちろん早急に採用試験を行なって頭数は揃えるつもりだけど、僕の求めている水準に達しているものは多くない。
それと一番の問題は敵だった領地の文官は残念ながら信用度が低いことが理由だ。
信用ばかりは
まずは現在役職についている人物のピックアップから。
サイオウ領四区を任せているのはハングリー区長ホーク・サイ、ヒロガリー区長ルビンス・ヨンブラム。ズラカリー区長サイ・カーク。
ちなみにオグマリー区は僕の直轄扱いだ。
このうちごりごりの文官であるサイが今回従軍していない。
次は区長や領主代官を任せられない人物。
農林大臣のルダー・メタは各地の農業指導や前世知識を用いた新技術の開発などで各地を飛び回っているから今は無理だろ?
内務大臣として僕の最側近を勤めてもらっているイラード・タンも手放すわけにはいかないな。
同じ理由で通商大臣チロー・トーキ、外務大臣ケイロ・ボット、魔法科学大臣チカマック・エモンザーもダメだ。
チカマックがダメならラバナルとチャールズも魔法分野の発展に欠かせない人材だから除外しないとダメか。
この遠征中に軍務大臣に任命したオクサ・バニキッタは……現在ドゥナガールの遠征軍と対峙していて下手するとずっと動けなくなりそうな気配もあるな。
教育大臣アンミリーヤと厚生大臣クレタ・ヨンブラムに領地経営は難しかろう。
そもそもどちらもオーバーワーク気味だしまだ代えがきかない。
ギランは今なら任せいもいいかと思うけれど、今や乗合ホルス車で財を成す経営者だから行政を任せるわけにはいかなくなった。
「どうして?」
「政官財は癒着すると腐るから」
「ああ、納得」
それから、今回の遠征で為政者として重責を任せるのが無理だと実感したのがサビー・タンとガーブラ・ウォウウォウ。
二人には構想中の常設軍で将軍職を考えていたのだけど、それも怪しくなったのでイラードやダイモンド・アイザーに頼んで武将教育をやってもらおうと思う。
従軍してきた中で代官や区長を任せられそうなのは元々貴族階級、騎士階級だったラビティア・バニキッタ、メゴロマ・シードゥ、セイ・シャーラック、ノサウス・クレインバレー、ウータ・マーロー、ブドル・フォーク。
元傭兵団長で電撃隊の隊長バンバ・ワンあたりか。
フィーバー隊隊長ジャパヌはまだちょっと適性を把握できてないけど、彼も傭兵団長だったんだからバンバ同様務まると思ってもいいかもしれない。
そうするとサイオウ領の治安維持に残してきたカシオペア隊隊長のカイジョーも候補に入れとかなきゃだな。
オクサの息子ペガス・バニキッタ、ズラカルト男爵の次男アンデラス・ズラカルトはまだ若くて頼りないか?
あ、でもアンデラスにはボニーデイルっていう宿老がいるから任せてもいいかも。
この遠征で臣下に降ったアゲールは他の家臣たちの反発も大きかろうから今回は見送るしかなさそうだけど、補佐には良さげかな。
「んーん……こんなところかな?」
この中から誰を選んでも優秀な文官を引き立てて上手に為政してくれるんじゃないかな?
「で? 誰をどこに赴任させるの?」
「そこだよ、リリム」
占領地を任せるのだから武力も必要だろう。
特に最前線になるオウチ領南部は熟考に熟考を重ねた上で決断したい。
「それと、そろそろ遷都をしようと考えてるんだ」
「遷都?」
「僕の居城を移すって話」
「なんで?」
「オグマリー区じゃオウチ領が遠いだろ?」
「それもそうね。で? どこに移すの?」
「それなんだよね。オウチ領は居を構えるにはあまり適してなさそうなんだ」
広げている地図は今回従軍している忍者軍団を通してトーハ・マウンターが描いてくれた詳細な地形図だ。
これによると水源に乏しく痩せた土地ばかり。
起伏が激しいのは防衛拠点としての山城を築くには都合よさそうだけど、「ここ」という地がない。
かといって、これからさらに版図を拡げようってのにサイオウ領に適地を探してもまたすぐに遷都することになるはずで、そうなると色々と無駄が多くなる。
「じゃあいっそオッカメー領に遷都しちゃったら?」
「!? おお。いいね、リリム。そうしよう」
「あら、本気でオッカメー領に遷都する気?」
「する気、する気」
もっとも、帰ってすぐってわけじゃないけどね。
さて、そうだな。
オウチ領代官はアンデラス。
ボニーデイルは当然付き従うとして補佐にオウチ領をよく知っているだろうアゲールとダイモンドをつけてサビーとガーブラもその下につけてしまおう。
アシックサルが逃げた先、ヒットコに対する二つの砦にはメゴロマとノサウスを隊長として残すことにする。
ダイモンドはまだオッカメー領にいるけどな。
そのオッカメー領の保護地(占領地とは体裁上言わない)はとりあえずオクサに任せることにしよう。
保護下に置いた町は少ないし、治安維持に電撃隊を派遣しておけばオクサが上手に使ってくれるに違いない。
サイオウ領に戻ったらサイに頼んで即戦力の文官を十人十五人オウチ領に派遣してもらおう。
ああ、ルダーにも開拓団を募って送り込んでもらうか。
「今できることはこのくらいか」
「お疲れ様でした」
「ありがとう、リリム」
あぁ……サラとキャラが恋しいなぁ。