第105話 突然美人との縁が続くのはやっぱり不幸の始まりなのか
文字数 2,321文字
「というこで、僕はサラを庇護して覇を唱えることになった」
と、同席していたルビンスとオギンに宣言すると、サラが目をぱちくりさせる。
あら、かわいい。
「あの、ジャンは一体……」
どこの馬の骨だと思われてるのかしら?
「ご存知ないのも仕方ありません。この方は昨年ズラカルト男爵に反旗を翻した農民の頭領です」
そ、そうね、貴族に判りやすく説明するとそんな感じになるよね。
なんかモヤッとするけど。
「まぁ、ではオグマリー市で噂に聞いた叛逆者」
うわっグサっとくる、ちょっと怯えた感じなのグサっとくる。
どんな尾 鰭 がついて噂されてるんだ?
そしてなにか望まぬ決意をしたような表情になるのショックだわ。
「と、とにかくだ、僕らはこの街に人材を求めにやってきた。明日も心当たりを二ヶ所訪れることにしているわけだけど、どうしよう?」
サラを連れ歩くわけにはいかないけど、一人で宿に残すわけにもいかない。
「たしか、学者先生候補がもう一人と軽業師でしたね」
「軽業師ですか?」
サラが不思議そうに訊ねてくる。
「そう、軽業師」
「優秀な人材に心当たりでもおありですか?」
「城館に出入りしていた軽業師のお弟子さんに有望だと褒められていた兄弟がおりましたが、こんなところまで逃げ落ちてしまいましたので……あ」
こんなとこ……この規模の街がこんなところっていうんなら、僕の町はなんと呼ぶんでしょうね? リリム。
(この世の果て?)
グッ……。
あながち間違っていないのが悔しい。
精神的大ダメージをくらってなかなか立ち直れない僕に代わって、オギンが情報を詳しく聞き出してくれる。
「名前は確かケーンとギンヌ。バクロサという軽業師のもとで助手をしながら修行していました」
「バクロサ?」
「知っているの? ルビンス」
「ああ、有名な軽業師だ。しかし、だとすると……」
なんだなんだ?
いわくがありそうな物言いだな?
「いや、バクロサ一門ならそれこそこんなところには来ないだろうから、頭の片隅に留めておくだけにしよう」
「お館様、サラ様を助ける際に気になる人物を見かけたので探したいのですが」
「どんな人物だ?」
「以前あくどいキャラバンで用心棒をしていた女なんですが、腕は確かで根はいいやつなんですよ」
「名前は?」
「キャラです」
はい、採用。
美人だといいなぁ。
「しかし、そうなるとますます困ったぞ」
「なにを困っているの?」
箱入りだったのか?
「まず、元々の予定だった二ヶ所の訪問と人探しにサラの警護。どう振り分けるべきかと思ってね」
「二手に分かれましょう」
「簡単にいうなよオギン」
「簡単ですよ。サラ様だとバレなきゃいいんでしょう?」
翌日、僕らは僕とサラ、オギンとルビンスに分かれて行動することになった。
サラはオギンに変装を施されてどこにでもいそうな町娘になった。
目の覚めるような美人や、印象に残ってしまう不美人にはしない特殊メイクってのは実はなかなか難しいことだと思うんだけど、そこは優秀な情報戦士うまいさじ加減だ。
ついでに僕もメイクをしてもらって別人になりすます。
これで僕自身の印象もなくなったろう。
そんなこんなで学者先生のところへ行ってスカウティングをしていてふと、
(あれ? あさって集合した時別人だったら学者先生困んじゃね?)
とか思ったけど、ええい、ままよ。
その後、ホルス市を見て回っていてふと、気になったのでサラに質問をする。
「ホルスには乗れる?」
「え? あの……」
はいはい、乗れそうにありませんね。
スカウトした他の人たちも乗れないかもしれないな。
というか、一人一頭のホルスを買うより、ホルス車を用立てた方が安上がりだろうな。
なんて値踏みしてみたが、びっくりするくらい高くて心臓がバクバク言い出す。
これだから思いつきで行動しちゃダメなんだよ。
持ち合わせじゃ足りないぞ。
さて、どうする?
いやいや、独断で決めるわけにいかないな。
やばいやばい。
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
半日過ごして話し方が砕けた結果、雰囲気女子高生化しているサラが訊いてくるが、「大丈夫」を連呼する以上のことができない。
これ以上挙動不審で注目を浴びるのは得策じゃないので宿に戻ることにした。
その帰り道のことだ。
気になる一団を発見した。
女ばかりの四人組。
色っぽいナイスバディの長身美人とガラが悪いというか荒事の好きそうな女たち。
庶民とは一線を画したボディラインを強調する動きやすそうな格好に、これ見よがしな武器の携行。
これは気になる。
「なにを見てんのさ」
おっと、じろじろ見てたつもりはなかったのだけど、絡まれてしまったぞ。
ここはどう対処するのが最善なんだろう?
その一、目をそらしてそそくさとその場を去る。
その二、言い訳をしつつそそくさとその場を去る。
その三、馴れ馴れしく話しかけて……いやいや、こんな手段で「なろう展開」に持ち込めるわけがない。
現実はそんな甘いもんじゃないだろ。
そもそも、そんな交渉力 は持ち合わせちゃいない。
「なんとかいったらどうなんだい!?」
やべ、対応を悩んでいたら逃げられない状況に追い込まれる。
「あ、いや、そこのお姉さんがキレイだったものでつい、すいません」
「へぇ」
声まで色っぽいじゃあありませんか。
「その顔で女連れてるだけでもありがたいくらいなのに、あたいらに色目使うとかふざけんなよ」
ずいぶんな言われようだなぁ、おい。
「そもそもあんたのことはそんなにじっくり見てないぞ」
ちょっとムッとしちゃったんで思わず言い返しちゃったよ。
やばいやばい。
なんというか、堪え性がないな僕。
「なんだとコラ」
「やめな」
「キャラ姐さん」
今なんと!?
と、同席していたルビンスとオギンに宣言すると、サラが目をぱちくりさせる。
あら、かわいい。
「あの、ジャンは一体……」
どこの馬の骨だと思われてるのかしら?
「ご存知ないのも仕方ありません。この方は昨年ズラカルト男爵に反旗を翻した農民の頭領です」
そ、そうね、貴族に判りやすく説明するとそんな感じになるよね。
なんかモヤッとするけど。
「まぁ、ではオグマリー市で噂に聞いた叛逆者」
うわっグサっとくる、ちょっと怯えた感じなのグサっとくる。
どんな
そしてなにか望まぬ決意をしたような表情になるのショックだわ。
「と、とにかくだ、僕らはこの街に人材を求めにやってきた。明日も心当たりを二ヶ所訪れることにしているわけだけど、どうしよう?」
サラを連れ歩くわけにはいかないけど、一人で宿に残すわけにもいかない。
「たしか、学者先生候補がもう一人と軽業師でしたね」
「軽業師ですか?」
サラが不思議そうに訊ねてくる。
「そう、軽業師」
「優秀な人材に心当たりでもおありですか?」
「城館に出入りしていた軽業師のお弟子さんに有望だと褒められていた兄弟がおりましたが、こんなところまで逃げ落ちてしまいましたので……あ」
こんなとこ……この規模の街がこんなところっていうんなら、僕の町はなんと呼ぶんでしょうね? リリム。
(この世の果て?)
グッ……。
あながち間違っていないのが悔しい。
精神的大ダメージをくらってなかなか立ち直れない僕に代わって、オギンが情報を詳しく聞き出してくれる。
「名前は確かケーンとギンヌ。バクロサという軽業師のもとで助手をしながら修行していました」
「バクロサ?」
「知っているの? ルビンス」
「ああ、有名な軽業師だ。しかし、だとすると……」
なんだなんだ?
いわくがありそうな物言いだな?
「いや、バクロサ一門ならそれこそこんなところには来ないだろうから、頭の片隅に留めておくだけにしよう」
「お館様、サラ様を助ける際に気になる人物を見かけたので探したいのですが」
「どんな人物だ?」
「以前あくどいキャラバンで用心棒をしていた女なんですが、腕は確かで根はいいやつなんですよ」
「名前は?」
「キャラです」
はい、採用。
美人だといいなぁ。
「しかし、そうなるとますます困ったぞ」
「なにを困っているの?」
箱入りだったのか?
「まず、元々の予定だった二ヶ所の訪問と人探しにサラの警護。どう振り分けるべきかと思ってね」
「二手に分かれましょう」
「簡単にいうなよオギン」
「簡単ですよ。サラ様だとバレなきゃいいんでしょう?」
翌日、僕らは僕とサラ、オギンとルビンスに分かれて行動することになった。
サラはオギンに変装を施されてどこにでもいそうな町娘になった。
目の覚めるような美人や、印象に残ってしまう不美人にはしない特殊メイクってのは実はなかなか難しいことだと思うんだけど、そこは優秀な情報戦士うまいさじ加減だ。
ついでに僕もメイクをしてもらって別人になりすます。
これで僕自身の印象もなくなったろう。
そんなこんなで学者先生のところへ行ってスカウティングをしていてふと、
(あれ? あさって集合した時別人だったら学者先生困んじゃね?)
とか思ったけど、ええい、ままよ。
その後、ホルス市を見て回っていてふと、気になったのでサラに質問をする。
「ホルスには乗れる?」
「え? あの……」
はいはい、乗れそうにありませんね。
スカウトした他の人たちも乗れないかもしれないな。
というか、一人一頭のホルスを買うより、ホルス車を用立てた方が安上がりだろうな。
なんて値踏みしてみたが、びっくりするくらい高くて心臓がバクバク言い出す。
これだから思いつきで行動しちゃダメなんだよ。
持ち合わせじゃ足りないぞ。
さて、どうする?
いやいや、独断で決めるわけにいかないな。
やばいやばい。
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
半日過ごして話し方が砕けた結果、雰囲気女子高生化しているサラが訊いてくるが、「大丈夫」を連呼する以上のことができない。
これ以上挙動不審で注目を浴びるのは得策じゃないので宿に戻ることにした。
その帰り道のことだ。
気になる一団を発見した。
女ばかりの四人組。
色っぽいナイスバディの長身美人とガラが悪いというか荒事の好きそうな女たち。
庶民とは一線を画したボディラインを強調する動きやすそうな格好に、これ見よがしな武器の携行。
これは気になる。
「なにを見てんのさ」
おっと、じろじろ見てたつもりはなかったのだけど、絡まれてしまったぞ。
ここはどう対処するのが最善なんだろう?
その一、目をそらしてそそくさとその場を去る。
その二、言い訳をしつつそそくさとその場を去る。
その三、馴れ馴れしく話しかけて……いやいや、こんな手段で「なろう展開」に持ち込めるわけがない。
現実はそんな甘いもんじゃないだろ。
そもそも、そんな
「なんとかいったらどうなんだい!?」
やべ、対応を悩んでいたら逃げられない状況に追い込まれる。
「あ、いや、そこのお姉さんがキレイだったものでつい、すいません」
「へぇ」
声まで色っぽいじゃあありませんか。
「その顔で女連れてるだけでもありがたいくらいなのに、あたいらに色目使うとかふざけんなよ」
ずいぶんな言われようだなぁ、おい。
「そもそもあんたのことはそんなにじっくり見てないぞ」
ちょっとムッとしちゃったんで思わず言い返しちゃったよ。
やばいやばい。
なんというか、堪え性がないな僕。
「なんだとコラ」
「やめな」
「キャラ姐さん」
今なんと!?