第142話 お館様、意気揚々とオグマリー市に入城する
文字数 2,188文字
翌日、オグマリー市に入る。
チカマック軍は町に入れずにそのまま返す。
武装解除に半日。
武装解除を済ませたあとはベハッチを大将にしてギラン隊を中心に農民兵の四分の三を返す。
日が暮れる前に残りの兵糧の半分を吐き出しての炊き出し。
干し肉などを水増し増しのスープにしたうっすい味だけど、空きっ腹にはむしろよかったかも知れない。
夜に入ってオルバック邸を訪れる。
憎悪を隠さないJr .を無視して現当主オルバックと会談。
三日以内に町を出ていくことが決まった。
「これからどうするおつもりで?」
そう聞くと
「家督を息子に譲って隠居だな。他にすることもなくなるし」
と、自嘲する。
「捲 土 重 来 を虎視 眈々 ……かと思いましたがね」
「これほど完 膚 なきまでに追い落とされてそんな気力は湧かんよ。仮に取り返そうとしたところで、勝てそうにもない」
「確かに敗ける気は微 塵 もしませんな」
「……だろうな」
オルバック邸を出た後は迎賓館に。
当面の僕の住居だ。
食堂が会議室になっていて、主だったメンツが集まっていた。
今日は完徹しそうな雰囲気だな。
「おかえりなさいませ、お館様」
と、ルビレルがいう。
「ただいま」って感じじゃないんだよなぁ、初めての家だから。
「さて、しばらくは忙しかろうが、倒れぬ程度に働いてくれ。まずは、どこまで把握している?」
サビーとガーブラの報告によれば食料の備蓄量は本当に逼迫しているようだ。
把握前だったので今日の炊き出しは自軍の兵糧から放出したが、町の人口に今日と同程度の食事を提供したとして十日分にも満たないという。
腐っても元キャラバン出身、在庫把握は任せて安心。
「喫緊 の課題だな」
「今日のような食事では、十日もしないうちに暴動に発展しかねません」
とは、ウータの意見だ。
僕もそう思う。
貧民は三日以上前から、平民でも昨日食事にありつけなかったものがいたという状況だったからあんな「味のするお湯」レベルでもありがたがられたけど、三日も続けばもっとちゃんとしたものが欲しいと言われるだろう。
「対策に腹案のあるものはいるか?」
「隣村から送ってもらえば良いのではありませんか?」
ルビンスだ。
青いね、日本人ならケツの青いやつって言われちゃうな。
チカマック軍からただ一人残ってもらったサイはいう。
「第一先の村もまだ収穫前でした。隣接する第二、第三先の村からも徴収したとして町の胃袋を満足させられるほどの量は確保が難しいでしょうね」
「食料の緊急輸入はジョーに飛行手紙で昨日のうちに連絡しているから、三日待てばある程度は確保できるだろう。しかし、問題が数日先延ばしになるくらいの対策にしかならないんじゃあないか?」
「では、いっそのこと口減らしを」
と、サイがいうと今度はルビンスが反論する。
「おいおい、いくらなんでもそんなことできるか」
「なにか勘違いされていませんか?」
「え?」
「お館様、市民を各村に派遣する案、献策をいたします」
なるほど。
「名案ですな。オグマリー市の人口を減らして当面の食糧不足を解消し、各村に労働者を派遣することで秋の収穫を速やかに行わせる。特にハンジー町は先ほど開発などで慢性的な人手不足だと伺いました。一石二鳥……いや、それ以上の効果がありそうです」
見た目通りの才媛だな、ウータ。
「いいだろう。その件はサイに任せる。ホーク、サイを手伝え」
「御意」
チカマックの右腕としてコロニーの運営にあたっているサイ・カークに、一の町で僕らに内応して反乱組織を指揮していたホーク・サイ。
二人に任せればなんの問題もないだろう。
…………。
「その件に兵は割けないな。すまんがすべてをこの町からまかなえ」
「なかなか厳しいご命令ですな」
なんていう割に顔はニヤついてるぞ。
「次」
ルビレルによればオルバック配下で、オルバック家に付き従って町を離れるのは三分の一ほどだという。
「残った中にダイモンドはいるのか?」
ご執心だね、サビー。
「ダイモンド・アイザーもオクサ・バニキッタ、ラビティア・バニキッタ兄弟も残りました」
「オルバックの三 剣 が揃って残るのか? そいつぁすげぇぜ!」
なにかの次回予告みたいな感想だな、カイジョー。
「傭兵の方はどうなんだ?」
「ええ、こちらも例のジャパヌたち……フィーバー隊っていうんですがね、味方になるそうです」
やっぱフィーバーなんだ……。
「それは傭兵としてなのか?」
「え?」
「お前たちみたいに配下になってくれるとありがたいんだがな」
「いいですな! 明日改めて声をかけてみましょう。他の傭兵もまとめて勧誘しますよ」
「敵対しそうな勢力はオルバック殿に付き従って町を離れるようですし、食料問題も収穫が終わるまでしのげればよく、サイ殿の献策でなんとかなりそうですから内政はよいとして……」
と、ここまでのまとめをするチャールズ。
「外敵からの防衛か」
「農民兵の宿命とはいえ大半を帰してしまいましたが、本当によかったのですか?」
「良かろうが悪かろうが、帰さなければ収穫に差し支えるからなぁ」
「徴税が終わるまではズラカルト男爵も兵を動かせないと思われます。態勢を整え、対策を練る時間はございます」
ウータ、いいこと言う。
「優秀な人材も揃いつつありますしね」
と、ルビンスが付け加える。
武将の頭数は揃ってきた。
みんな戦バカなのが玉に瑕 なんだけどねー。
チカマック軍は町に入れずにそのまま返す。
武装解除に半日。
武装解除を済ませたあとはベハッチを大将にしてギラン隊を中心に農民兵の四分の三を返す。
日が暮れる前に残りの兵糧の半分を吐き出しての炊き出し。
干し肉などを水増し増しのスープにしたうっすい味だけど、空きっ腹にはむしろよかったかも知れない。
夜に入ってオルバック邸を訪れる。
憎悪を隠さない
三日以内に町を出ていくことが決まった。
「これからどうするおつもりで?」
そう聞くと
「家督を息子に譲って隠居だな。他にすることもなくなるし」
と、自嘲する。
「
「これほど
「確かに敗ける気は
「……だろうな」
オルバック邸を出た後は迎賓館に。
当面の僕の住居だ。
食堂が会議室になっていて、主だったメンツが集まっていた。
今日は完徹しそうな雰囲気だな。
「おかえりなさいませ、お館様」
と、ルビレルがいう。
「ただいま」って感じじゃないんだよなぁ、初めての家だから。
「さて、しばらくは忙しかろうが、倒れぬ程度に働いてくれ。まずは、どこまで把握している?」
サビーとガーブラの報告によれば食料の備蓄量は本当に逼迫しているようだ。
把握前だったので今日の炊き出しは自軍の兵糧から放出したが、町の人口に今日と同程度の食事を提供したとして十日分にも満たないという。
腐っても元キャラバン出身、在庫把握は任せて安心。
「
「今日のような食事では、十日もしないうちに暴動に発展しかねません」
とは、ウータの意見だ。
僕もそう思う。
貧民は三日以上前から、平民でも昨日食事にありつけなかったものがいたという状況だったからあんな「味のするお湯」レベルでもありがたがられたけど、三日も続けばもっとちゃんとしたものが欲しいと言われるだろう。
「対策に腹案のあるものはいるか?」
「隣村から送ってもらえば良いのではありませんか?」
ルビンスだ。
青いね、日本人ならケツの青いやつって言われちゃうな。
チカマック軍からただ一人残ってもらったサイはいう。
「第一先の村もまだ収穫前でした。隣接する第二、第三先の村からも徴収したとして町の胃袋を満足させられるほどの量は確保が難しいでしょうね」
「食料の緊急輸入はジョーに飛行手紙で昨日のうちに連絡しているから、三日待てばある程度は確保できるだろう。しかし、問題が数日先延ばしになるくらいの対策にしかならないんじゃあないか?」
「では、いっそのこと口減らしを」
と、サイがいうと今度はルビンスが反論する。
「おいおい、いくらなんでもそんなことできるか」
「なにか勘違いされていませんか?」
「え?」
「お館様、市民を各村に派遣する案、献策をいたします」
なるほど。
「名案ですな。オグマリー市の人口を減らして当面の食糧不足を解消し、各村に労働者を派遣することで秋の収穫を速やかに行わせる。特にハンジー町は先ほど開発などで慢性的な人手不足だと伺いました。一石二鳥……いや、それ以上の効果がありそうです」
見た目通りの才媛だな、ウータ。
「いいだろう。その件はサイに任せる。ホーク、サイを手伝え」
「御意」
チカマックの右腕としてコロニーの運営にあたっているサイ・カークに、一の町で僕らに内応して反乱組織を指揮していたホーク・サイ。
二人に任せればなんの問題もないだろう。
…………。
「その件に兵は割けないな。すまんがすべてをこの町からまかなえ」
「なかなか厳しいご命令ですな」
なんていう割に顔はニヤついてるぞ。
「次」
ルビレルによればオルバック配下で、オルバック家に付き従って町を離れるのは三分の一ほどだという。
「残った中にダイモンドはいるのか?」
ご執心だね、サビー。
「ダイモンド・アイザーもオクサ・バニキッタ、ラビティア・バニキッタ兄弟も残りました」
「オルバックの
なにかの次回予告みたいな感想だな、カイジョー。
「傭兵の方はどうなんだ?」
「ええ、こちらも例のジャパヌたち……フィーバー隊っていうんですがね、味方になるそうです」
やっぱフィーバーなんだ……。
「それは傭兵としてなのか?」
「え?」
「お前たちみたいに配下になってくれるとありがたいんだがな」
「いいですな! 明日改めて声をかけてみましょう。他の傭兵もまとめて勧誘しますよ」
「敵対しそうな勢力はオルバック殿に付き従って町を離れるようですし、食料問題も収穫が終わるまでしのげればよく、サイ殿の献策でなんとかなりそうですから内政はよいとして……」
と、ここまでのまとめをするチャールズ。
「外敵からの防衛か」
「農民兵の宿命とはいえ大半を帰してしまいましたが、本当によかったのですか?」
「良かろうが悪かろうが、帰さなければ収穫に差し支えるからなぁ」
「徴税が終わるまではズラカルト男爵も兵を動かせないと思われます。態勢を整え、対策を練る時間はございます」
ウータ、いいこと言う。
「優秀な人材も揃いつつありますしね」
と、ルビンスが付け加える。
武将の頭数は揃ってきた。
みんな戦バカなのが玉に