第106話 そりゃあ簡単には信用は勝ち取れないよね
文字数 2,215文字
「キャラ?」
「なんだい? あたいのこと知ってるのかい?」
トゲがあるのに艶っぽい。
さっと、取り巻きが攻撃的な気配を強くする。
いやいやいや、喧嘩っ早すぎるだろ。
今にも飛びかかってきそうな女たち相手に丸腰でどうにかなるとは思えない。
(小刀があるじゃない)
確かに肥後守みたいな小刀は村を焼け出された時も持っていた農民必携のアイテムで今も懐にはあるけれど、これはあくまでも日常生活用であって戦闘用じゃないぞ。
こんなので相手の短剣に勝てる気はしない。
そもそも僕の得物は基本竹刀 だ。
しかも今はお姫様を守る必要もある。
あんまり大事にしたくない。
目立つのは得策じゃないのだから、勝ち味のない大立ち回りになる前に知恵を絞らなきゃ。
「えと……オギンに聞いてたもんだから」
「オギンって、ジョーのキャラバンにいたオギンさんかい?」
「そう、そのオギン」
警戒心を解かない三人と違い、キャラの気配だけが少し緩む。
「誰なんですか? そのオギンって」
「あたいの恩人さ。で? あんたはオギンさんとどういう関係なんだい?」
さて、どう答えるのがいいんだ?
素直にすべて答えるのはこの場合得策じゃないよな。
でも、嘘やごまかしもこの後の関係に影響するよな、絶対。
「主従関係?」
なぜ、疑問文にした、自分。
「しけた手下だね。そのオギンって見る目ないんじゃない?」
あれぇ?
「ホタル、見る目がないのはあんただよ」
「キャラ姐さん!?」
くくく、いい気味だ。
しかし、なるほどオギンが是が非でも接触したいと思うわけだよ。
頭もきれるようだ。
他の三人も戦闘力はあると見た。
なまじな男よりよっぽど強いだろう。
僕でも一対一で勝てるかどうかって感じかな?
命かけるつもりは毛頭ないけど。
「じゃあ、オギンさんはこの街にいるんだね?」
「いる。今は用があって別行動をしているけどね」
「別行動ねぇ」
ホタルったっけか? 信じてねぇの?
少し情報開示しないとな。
「そ。昨日、そこのキャラさんを見かけたとかで、今探しているんだ」
「あたいを?」
あれ? 打つ手を間違えたか?
キャラの気配が硬くなったぞ。
「あ、ああ。あくどいキャラバンで用心棒をしていたんだって? 根はいいやつだからって心配してた」
「オギンさん……」
鼻で笑う姿が妖艶だ。
「あんたについて行けば、オギンさんに逢えるのかい?」
僕は、無意識でサラを見たらしい。
「あんたはあたいを信用していない?」
すごい洞察力だよ、まいったね。
「あくどいキャラバンからは抜けたよ。うちらを助けてくれたんだ」
大きな胸をやたら強調した格好の女がいう。
嘘じゃなさそうだ。
「お互い警戒しなきゃいけないことがあるってことだな」
「みたいだね」
「僕はジャン。明日の昼にオギンを連れてくるよ。場所を指定してくれ」
「いいよ」
待ち合わせの場所を聞いて僕らはその場を離れると、サラの手を引き人混みを中を歩く。
キャラたちもそうだけど、サラの追手の警戒が今は最重要だ。
宿に戻ったときにはまだ二人は戻っていなかった。
戻ってきたのは日が暮れた後。
だいぶ捜したようだけど結局見つからなかったようだ。
「えっ!? 遭ったのですか?」
強運だろ?
「判りました。明日、ご一緒いたします」
「うん」
「では、明日はワタシがサラ様を護衛すればよいのですか?」
「明日も誰かに会う予定あったっけ?」
「いえ」
「じゃあ、宿で待機」
「え?」
「宿で待機」
「わ、判りました」
なんで残念そうなのかな? ルビンスくん。
翌日、午前中は昨日と同じ変装をして四人で旅の準備として色々と仕入れ、昼に合わせて待ち合わせの場所にオギンと移動する。
待ち合わせの場所に近くなるとオギンがため息をつく。
「……よほど警戒されていますが、なにをしでかしたのですか?」
「え? なにもしてないよ」
なにその信用していない目は?
待ち合わせの場所は人気のない空き地で、キャラが一人で立っていた。
なるほど、他の三人は僕らをずいぶん前から見張っていたのか。
キャラに近づくと後ろから一番喧嘩腰だったホタルと胸の大きなコチョウが、キャラの背後から一番肌の露出度が高いキキョウが現れる。
あ、名前は昨日帰り際に聞いている。
「久しぶりだね」
最初に口火を切ったのはオギンだった。
「お久しぶりです。オギンさん」
キャラが丁寧に応じる。
その後は互いの旧交を温め、世間話に花が咲く。
それによると、悪徳キャラバンにいい加減嫌気がさしていたキャラはある晩男たちに襲われかけたホタルを目撃、その男たちを叩きのめす。
それに手を貸したのがキキョウとコチョウだったようだ。
どうもキャラ以外の三人は戦闘員としてより女 としてキャラバンに囲われていたってことなんだろうな。
確かにゲスだな。
で、武器どころか着るものもろくにきていない男どもは叩きのめせたが、いくら戦闘力が高くても多勢に無勢、逃げの一手とここまで逃げて来たということのようだ。
なるほど、警戒されるのも無理はないし、やたら突っかかってきたのも一種の虚勢、自己防衛反応だったってことだな。
「──それで? オギンさんはあたいらをどうするつもりで捜していたんです?」
「あたいの下で働いてもらいたくてね」
「ジョーのキャラバンにはいないですよね? 今は一体なにをしてんです?」
「この人の元でちょっとね」
「え? こいつが主人なんですか!?」
やっぱ見る目ないね、ホタル。
「なんだい? あたいのこと知ってるのかい?」
トゲがあるのに艶っぽい。
さっと、取り巻きが攻撃的な気配を強くする。
いやいやいや、喧嘩っ早すぎるだろ。
今にも飛びかかってきそうな女たち相手に丸腰でどうにかなるとは思えない。
(小刀があるじゃない)
確かに肥後守みたいな小刀は村を焼け出された時も持っていた農民必携のアイテムで今も懐にはあるけれど、これはあくまでも日常生活用であって戦闘用じゃないぞ。
こんなので相手の短剣に勝てる気はしない。
そもそも僕の得物は基本
しかも今はお姫様を守る必要もある。
あんまり大事にしたくない。
目立つのは得策じゃないのだから、勝ち味のない大立ち回りになる前に知恵を絞らなきゃ。
「えと……オギンに聞いてたもんだから」
「オギンって、ジョーのキャラバンにいたオギンさんかい?」
「そう、そのオギン」
警戒心を解かない三人と違い、キャラの気配だけが少し緩む。
「誰なんですか? そのオギンって」
「あたいの恩人さ。で? あんたはオギンさんとどういう関係なんだい?」
さて、どう答えるのがいいんだ?
素直にすべて答えるのはこの場合得策じゃないよな。
でも、嘘やごまかしもこの後の関係に影響するよな、絶対。
「主従関係?」
なぜ、疑問文にした、自分。
「しけた手下だね。そのオギンって見る目ないんじゃない?」
あれぇ?
「ホタル、見る目がないのはあんただよ」
「キャラ姐さん!?」
くくく、いい気味だ。
しかし、なるほどオギンが是が非でも接触したいと思うわけだよ。
頭もきれるようだ。
他の三人も戦闘力はあると見た。
なまじな男よりよっぽど強いだろう。
僕でも一対一で勝てるかどうかって感じかな?
命かけるつもりは毛頭ないけど。
「じゃあ、オギンさんはこの街にいるんだね?」
「いる。今は用があって別行動をしているけどね」
「別行動ねぇ」
ホタルったっけか? 信じてねぇの?
少し情報開示しないとな。
「そ。昨日、そこのキャラさんを見かけたとかで、今探しているんだ」
「あたいを?」
あれ? 打つ手を間違えたか?
キャラの気配が硬くなったぞ。
「あ、ああ。あくどいキャラバンで用心棒をしていたんだって? 根はいいやつだからって心配してた」
「オギンさん……」
鼻で笑う姿が妖艶だ。
「あんたについて行けば、オギンさんに逢えるのかい?」
僕は、無意識でサラを見たらしい。
「あんたはあたいを信用していない?」
すごい洞察力だよ、まいったね。
「あくどいキャラバンからは抜けたよ。うちらを助けてくれたんだ」
大きな胸をやたら強調した格好の女がいう。
嘘じゃなさそうだ。
「お互い警戒しなきゃいけないことがあるってことだな」
「みたいだね」
「僕はジャン。明日の昼にオギンを連れてくるよ。場所を指定してくれ」
「いいよ」
待ち合わせの場所を聞いて僕らはその場を離れると、サラの手を引き人混みを中を歩く。
キャラたちもそうだけど、サラの追手の警戒が今は最重要だ。
宿に戻ったときにはまだ二人は戻っていなかった。
戻ってきたのは日が暮れた後。
だいぶ捜したようだけど結局見つからなかったようだ。
「えっ!? 遭ったのですか?」
強運だろ?
「判りました。明日、ご一緒いたします」
「うん」
「では、明日はワタシがサラ様を護衛すればよいのですか?」
「明日も誰かに会う予定あったっけ?」
「いえ」
「じゃあ、宿で待機」
「え?」
「宿で待機」
「わ、判りました」
なんで残念そうなのかな? ルビンスくん。
翌日、午前中は昨日と同じ変装をして四人で旅の準備として色々と仕入れ、昼に合わせて待ち合わせの場所にオギンと移動する。
待ち合わせの場所に近くなるとオギンがため息をつく。
「……よほど警戒されていますが、なにをしでかしたのですか?」
「え? なにもしてないよ」
なにその信用していない目は?
待ち合わせの場所は人気のない空き地で、キャラが一人で立っていた。
なるほど、他の三人は僕らをずいぶん前から見張っていたのか。
キャラに近づくと後ろから一番喧嘩腰だったホタルと胸の大きなコチョウが、キャラの背後から一番肌の露出度が高いキキョウが現れる。
あ、名前は昨日帰り際に聞いている。
「久しぶりだね」
最初に口火を切ったのはオギンだった。
「お久しぶりです。オギンさん」
キャラが丁寧に応じる。
その後は互いの旧交を温め、世間話に花が咲く。
それによると、悪徳キャラバンにいい加減嫌気がさしていたキャラはある晩男たちに襲われかけたホタルを目撃、その男たちを叩きのめす。
それに手を貸したのがキキョウとコチョウだったようだ。
どうもキャラ以外の三人は戦闘員としてより
確かにゲスだな。
で、武器どころか着るものもろくにきていない男どもは叩きのめせたが、いくら戦闘力が高くても多勢に無勢、逃げの一手とここまで逃げて来たということのようだ。
なるほど、警戒されるのも無理はないし、やたら突っかかってきたのも一種の虚勢、自己防衛反応だったってことだな。
「──それで? オギンさんはあたいらをどうするつもりで捜していたんです?」
「あたいの下で働いてもらいたくてね」
「ジョーのキャラバンにはいないですよね? 今は一体なにをしてんです?」
「この人の元でちょっとね」
「え? こいつが主人なんですか!?」
やっぱ見る目ないね、ホタル。