第249話 攻城戦 3
文字数 2,593文字
僕が率いているのはチャールズ指揮下の魔法部隊二十二人と僕の供周りとして付いているオギンとトビー配下の十人、そしてバンバ隊、カレン隊、ブンター隊に別れている電撃隊百人。
我が軍の部隊編成は十人一組、五組で一隊。 本軍に割り振った兵は六百人で半分の三百は先に突入させたカシオペア隊に割り振っていることもあって、電撃隊は隊と言いつつ編成人数を満たしていない。
とはいえ、率いている隊長が一騎当千の元傭兵なので、指揮も実力も申し分ない。
今も、迫り来る敵兵をばったばったと薙ぎ倒している。
とはいえ多勢に無勢、このままではジリ貧だ。
この戦いを勝利するためには劣勢になる前にズラカルト男爵に辿り着く必要がある。
僕は戦況を見渡しながら、オギンとトビーにも戦況を確認させる。
門の中は戦闘を想定した広場になっていてそこかしこで兵士たちが武器を打ち合わせている。
今の所、優位で戦っていることだけは判った。
さて、どの隊を使おうか。
「トビー、ラビティアに伝令。この場をカシオペア隊とともに二時間死守せよ」
「たまわりました」
「オギン、三銃士と合流したい」
「先導します」
「電撃隊、三銃士隊と合流するまでの護衛を頼む」
「その後はカシオペア隊とともにこの場の死守ですな」
問われて無言で頷いた。
「能力向上魔法の使用許可が欲しいですな。一度使ってみたかったんですよ」
と、ブンターが言う。
あれは、使用後の副作用がマジきついんだけどな。
「改でも効果は一時間半だぞ」
能力向上魔法は一時的に筋肉にパワーとスピードを与える魔法と精神に作用させる魔法を組み合わせた複雑な魔法だ。
この魔法の恩恵を受けると、エンドルフィンやドーパミン的な脳内麻薬が増大して筋肉が熱を持ち、ざっくりいうと強くなる。
最初に完成した魔法は一時間くらいいつもの二割増しで強くなれる代わりに効果が切れると一気に疲労が押し寄せて行動不能になる。
その後、チャールズが実用的なレベルにチューニングした能力向上改とラバナルがさらに性能を向上させた能力向上極みの二つが生み出された。
能力向上改は持続時間が一時間半、効果が通常の一割り増しでその後の疲労が日常生活ならなんとかなる程度まで軽減されたもの。
能力向上極みは持続時間一時間を維持しつつ向上率を三割り増しに底上げした鬼畜仕様だ。
なぜ鬼畜仕様かって?
そりゃ、通常の三割り増しで肉体を酷使して無事で済むわけがないからだ。
「じゃあ、三十分後からならいいですね」
なんでそーなるのっ!?
「カレンがいればオレも使っていいかな?」
いやいや、バンバ、お前電撃隊の行動隊長だろ。
それを放棄するのか?
チッ。
「カレン、味方が優勢なうちは誰にも使わせるなよ」
「使いたがるバカ、多いですからね」
言いつつ、三銃士やラビティアたちの戦場に目をやる。
……まったくだ。
話を聞いたらきっとカシオペア隊の中にも使いたがる連中が手を挙げるに違いない。
「まずは三銃士隊に合流だ。いくぞ!」
能力向上魔法が使えるとうきうきのブンターが、魔法の効果もないのにいつもの一割増くらいの勢いで道を切り開く。
あれ?
これ、魔法いらねーんじゃね?
フォローに回るバンバもカレンも隊の兵士たちも目覚ましい活躍で、あっという間に僕らを三銃士たちの元へ届けてくれた。
「お館様」
最初に気づいたのはサビーだった。
やっぱり三人のうち戦場で一番視野が広いのはサビーらしい。
「お館様、お館様が前線に来られるなど」
「小言は後だイラード。建物の中に突入するぞ」
「ワシらにその役、与えてくれるんですか?」
「そう言うことだ」
「よかったな、ガーブラ。サビー、久々に活躍の機会を与えられたな」
「ああ、ダイモンド殿の下にいれば存分に戦えるかと思ったてたのだが、案外戦の機会がなくてな。だが、ダイモンド殿との手合わせはずっとやってきた。その成果を存分に発揮できるまたとないチャンスだ。お前ら以上の戦功をあげてみせるぞ」
「勲一等はワシがもらうわい」
「誰になるかはともかく、ワタシも遅れを取る気はありませんよ」
一見、大言壮語に聞こえるんだけど、きっと言うだけの戦果を上げるんだろうなぁ。
「お館様、戻りました」
乱戦になっている中をよく無事に戻ってこられるな、トビー。
てか、今素手で殴った兵士の兜ひしゃげたろ。
即死だったんじゃね?
ほら、サビーもガーブラも張り合わなくていいから。
あー、君らも素手で人を殺せるのね、それも鎧兜で身を守っている兵士を……。
そりゃあ、槍なんて持ったらそれだけで無双できるよね。
いくら頑張っても勝てないわけだ。
僕だって、それなりに強くなってるんだけどなぁ。
三銃士が率いていた兵の大半を残して電撃隊と別れた僕らは、オギンとトビーの先導で前庭を抜けて建物の中に入る。
一団は六十人ほど。
三分の一以上の二十二人が魔法使い。十人が忍者部隊だ。それを三銃士たち三十人の槍持ちが守っているという布陣だ。
もっとも、魔法部隊は弓兵と違って建物内でも取り回しがきき、矢のようにかさばらないため所持弾数も多い魔道具小銃を持っているので不意を打たれた接近戦以外では先制攻撃ができるのが強みである。
防衛用の城とはいえ、西洋スタイルの城は日本の城と違って建物自体の間取りってのかな? 構造はそれほど複雑ではないようだ。
集めた二千二百人も建物周りの庭に野営させていたとみえる。
建物の中は親衛隊と主だった武将(この場合貴族か)がいるだけだろう。
それら武将も主だった者は前線で指揮を取っているに違いない。
トゥウィンテル、ワングレンの名は戦場で聞いたから、少なくとも彼らは前庭で奮戦しているんだろう。
「魔法部隊、弾丸の残数は?」
弓兵が矢筒に並級二十本、良級四本入れているのと同様に、腰に椎の実型鉄製弾丸三十発入りの弾倉風ケースを左右に一つずつ、合計一人六十発持たせている。
重さにして二ラッタタ半。
ラッタは本来容積の単位なんだけど、この世界では水一ラッタを重さの基本単位として扱い、重さを表すときはラッタタと数える。
二ラッタタ半は新生児と大体同じくらい。
サイズ感、重量、取り回しのことを考えると、今の所これが最適だろうと言う判断だ。
段数を確認させると、平均で三十発くらい残っている。
弾切れ前にズラカルトの前に辿り着きたいな。
我が軍の部隊編成は十人一組、五組で一隊。 本軍に割り振った兵は六百人で半分の三百は先に突入させたカシオペア隊に割り振っていることもあって、電撃隊は隊と言いつつ編成人数を満たしていない。
とはいえ、率いている隊長が一騎当千の元傭兵なので、指揮も実力も申し分ない。
今も、迫り来る敵兵をばったばったと薙ぎ倒している。
とはいえ多勢に無勢、このままではジリ貧だ。
この戦いを勝利するためには劣勢になる前にズラカルト男爵に辿り着く必要がある。
僕は戦況を見渡しながら、オギンとトビーにも戦況を確認させる。
門の中は戦闘を想定した広場になっていてそこかしこで兵士たちが武器を打ち合わせている。
今の所、優位で戦っていることだけは判った。
さて、どの隊を使おうか。
「トビー、ラビティアに伝令。この場をカシオペア隊とともに二時間死守せよ」
「たまわりました」
「オギン、三銃士と合流したい」
「先導します」
「電撃隊、三銃士隊と合流するまでの護衛を頼む」
「その後はカシオペア隊とともにこの場の死守ですな」
問われて無言で頷いた。
「能力向上魔法の使用許可が欲しいですな。一度使ってみたかったんですよ」
と、ブンターが言う。
あれは、使用後の副作用がマジきついんだけどな。
「改でも効果は一時間半だぞ」
能力向上魔法は一時的に筋肉にパワーとスピードを与える魔法と精神に作用させる魔法を組み合わせた複雑な魔法だ。
この魔法の恩恵を受けると、エンドルフィンやドーパミン的な脳内麻薬が増大して筋肉が熱を持ち、ざっくりいうと強くなる。
最初に完成した魔法は一時間くらいいつもの二割増しで強くなれる代わりに効果が切れると一気に疲労が押し寄せて行動不能になる。
その後、チャールズが実用的なレベルにチューニングした能力向上改とラバナルがさらに性能を向上させた能力向上極みの二つが生み出された。
能力向上改は持続時間が一時間半、効果が通常の一割り増しでその後の疲労が日常生活ならなんとかなる程度まで軽減されたもの。
能力向上極みは持続時間一時間を維持しつつ向上率を三割り増しに底上げした鬼畜仕様だ。
なぜ鬼畜仕様かって?
そりゃ、通常の三割り増しで肉体を酷使して無事で済むわけがないからだ。
「じゃあ、三十分後からならいいですね」
なんでそーなるのっ!?
「カレンがいればオレも使っていいかな?」
いやいや、バンバ、お前電撃隊の行動隊長だろ。
それを放棄するのか?
チッ。
「カレン、味方が優勢なうちは誰にも使わせるなよ」
「使いたがるバカ、多いですからね」
言いつつ、三銃士やラビティアたちの戦場に目をやる。
……まったくだ。
話を聞いたらきっとカシオペア隊の中にも使いたがる連中が手を挙げるに違いない。
「まずは三銃士隊に合流だ。いくぞ!」
能力向上魔法が使えるとうきうきのブンターが、魔法の効果もないのにいつもの一割増くらいの勢いで道を切り開く。
あれ?
これ、魔法いらねーんじゃね?
フォローに回るバンバもカレンも隊の兵士たちも目覚ましい活躍で、あっという間に僕らを三銃士たちの元へ届けてくれた。
「お館様」
最初に気づいたのはサビーだった。
やっぱり三人のうち戦場で一番視野が広いのはサビーらしい。
「お館様、お館様が前線に来られるなど」
「小言は後だイラード。建物の中に突入するぞ」
「ワシらにその役、与えてくれるんですか?」
「そう言うことだ」
「よかったな、ガーブラ。サビー、久々に活躍の機会を与えられたな」
「ああ、ダイモンド殿の下にいれば存分に戦えるかと思ったてたのだが、案外戦の機会がなくてな。だが、ダイモンド殿との手合わせはずっとやってきた。その成果を存分に発揮できるまたとないチャンスだ。お前ら以上の戦功をあげてみせるぞ」
「勲一等はワシがもらうわい」
「誰になるかはともかく、ワタシも遅れを取る気はありませんよ」
一見、大言壮語に聞こえるんだけど、きっと言うだけの戦果を上げるんだろうなぁ。
「お館様、戻りました」
乱戦になっている中をよく無事に戻ってこられるな、トビー。
てか、今素手で殴った兵士の兜ひしゃげたろ。
即死だったんじゃね?
ほら、サビーもガーブラも張り合わなくていいから。
あー、君らも素手で人を殺せるのね、それも鎧兜で身を守っている兵士を……。
そりゃあ、槍なんて持ったらそれだけで無双できるよね。
いくら頑張っても勝てないわけだ。
僕だって、それなりに強くなってるんだけどなぁ。
三銃士が率いていた兵の大半を残して電撃隊と別れた僕らは、オギンとトビーの先導で前庭を抜けて建物の中に入る。
一団は六十人ほど。
三分の一以上の二十二人が魔法使い。十人が忍者部隊だ。それを三銃士たち三十人の槍持ちが守っているという布陣だ。
もっとも、魔法部隊は弓兵と違って建物内でも取り回しがきき、矢のようにかさばらないため所持弾数も多い魔道具小銃を持っているので不意を打たれた接近戦以外では先制攻撃ができるのが強みである。
防衛用の城とはいえ、西洋スタイルの城は日本の城と違って建物自体の間取りってのかな? 構造はそれほど複雑ではないようだ。
集めた二千二百人も建物周りの庭に野営させていたとみえる。
建物の中は親衛隊と主だった武将(この場合貴族か)がいるだけだろう。
それら武将も主だった者は前線で指揮を取っているに違いない。
トゥウィンテル、ワングレンの名は戦場で聞いたから、少なくとも彼らは前庭で奮戦しているんだろう。
「魔法部隊、弾丸の残数は?」
弓兵が矢筒に並級二十本、良級四本入れているのと同様に、腰に椎の実型鉄製弾丸三十発入りの弾倉風ケースを左右に一つずつ、合計一人六十発持たせている。
重さにして二ラッタタ半。
ラッタは本来容積の単位なんだけど、この世界では水一ラッタを重さの基本単位として扱い、重さを表すときはラッタタと数える。
二ラッタタ半は新生児と大体同じくらい。
サイズ感、重量、取り回しのことを考えると、今の所これが最適だろうと言う判断だ。
段数を確認させると、平均で三十発くらい残っている。
弾切れ前にズラカルトの前に辿り着きたいな。