第58話 衝撃の事実発覚! 早速役に立ってもらう
文字数 1,812文字
村は急ピッチで発展を遂げる。
秋蒔きのフレイラを刈り取って、春の種蒔きが終わる頃には人口が倍近い七十六人になっていた。
戦火を逃れてきた農民がほとんどだったのは、町ではなく他領の農村でこの村の話を広めた成果でもある。
なぜ、そうしたかといえば、態勢が整う前に男爵の茶茶が入らないようにっていう配慮だったんだけど、こんだけ一気に増えたら嫌でも悪目立ちするよな。
てな訳で、初夏に入る前の天気のいい日、ついにズラカルト男爵の使者がやってきた。
「あー、来ちゃったんだね」
と、第一報を受けた僕はため息をつく。
場所は北の開墾地。
見張りからの報告だったんで、到着までには多分まだ一時間はある。
「とりあえず、到着したら門の前で待たせておいて」
と、頼んで着替えることにする。
…………。
いや、このままで行こう。
「どうして?」
あ、おまっ、また人の心を読んだろ!
「あのね、この際だからいっとくけど、私はあなたのために神から遣わされた神の眷属なんだから、本来考えるだけで会話できるんだからね」
「え? え!? 今までずっと思考垂れ流しだったの?」
「そうよ」
や、やべー。
「それって一種のサトラレ状態ってことじゃねーの?」
「ね」
「…………」
「安心して、恥ずかしいこと考え始めたら意図的に思考をブロックしてるから」
僕は、声も出せずに口をパクパクさせるしかない。
「ひ、一つ確認してもイイデツカ?」
「なによ?」
「その能力は、例えば遠く離れてても有効だったりする?」
「そもそもこの能力は神への報告のための能力なんだから、当たり前じゃない」
…………。
もはや天を仰ぐしかない。
「そろそろ質問に答えてもらってもいい?」
「え?」
「どうしてその格好のまま会おうとしているか」
「あ、ああ……人は見た目が九割って話があってね。男爵の使者には立派な格好で会わないほうが都合がいいかと思って」
「なるほどね。見た目で侮ってもらおうってことか」
「そういうこと」
僕は急いでジャスを伴って南の畑へ入る。
よかった。
まだ、使者は到着していない。
いいぞいいぞ。
できれば村の中へは入れたくない。
畑の土いじりをしながら猛烈に頭を働かせる。
「お館様」
「なに?」
「なにを考えてるんです?」
「うん。どうやって使者を門前払いするかをね」
「なぜ、村に入れないんです?」
確かに使者をもてなすってんなら村に招き入れるべきよね。
でもさ、日常になっているからジャスは忘れてるんだと思うけど
「家がルンカー造りだべ?」
「あ! ああ!」
この国ではルンカーで家を作れるのは法律で決められた一定額の税を納めた者だけということになっている。
もちろん、最終的には領主と一戦構える心算 だけど、それは今じゃない。
今は全力で門前払いをするのが僕の至上命題だ。
「お館様」
すっと、オギンが僕のそばに立つ。
「あと、八半時間ほどで到着します」
!
「オギン」
「はい」
「今の見張りはガーブラだったよね」
「はい」
「使者に声が届く距離まで来たら僕を大声で呼んでくれるように頼んでくれ」
「かしこまりました」
「あ、その時は村長って呼ぶように念を押してね」
ひとつ頭を下げ、村へと戻る。
八半時間の半分ももしないうちに、
「おや……村長ぁ! 誰かやってきます!」
でけー声だな……。
つーか、どんだけ声届くんだよ。
使者だと判るってことはホルスに乗ってきたってことだろ?
並足で歩かせてるとして、あとあと八班時間の半分ちょっとはかかるってんだから一カルは先にいるんじゃねーの?
まぁ、いい。
僕は見張りを見上げ、道の向こうを見る演技をする。
そして手ぬぐいで汗をぬぐって農作業をしていた他の村人と畑から出ようとする。
(リリム)
「なによ?」
(使者はホルスに乗ってるよな? 歩かせてるか? 走らせてるか確認してくれないか?)
「はいはい」
リリムはすっと飛び上がるとすぐに戻ってくる。
「結構な速さで向かってきてるわよ」
おおぅ!
じゃあ、もう少し芝居しとこうか。
「みんな! 急いで村の中に戻るんだ!」
なんて大声で叫ぶ。
村人は「突然なんだ?」という困惑を浮かべながら、それでも指示に従ってくれる。
僕は指示を出しつつ殿 をつとめるふりをして使者との距離を測る。
やがてドドドと土埃をあげて使者が迫ってくる。
殿を手伝ってくれたジャスを門の中へ押し込んだところで、使者に追いつかれた。
正確には追いつかせたんだけどね。
秋蒔きのフレイラを刈り取って、春の種蒔きが終わる頃には人口が倍近い七十六人になっていた。
戦火を逃れてきた農民がほとんどだったのは、町ではなく他領の農村でこの村の話を広めた成果でもある。
なぜ、そうしたかといえば、態勢が整う前に男爵の茶茶が入らないようにっていう配慮だったんだけど、こんだけ一気に増えたら嫌でも悪目立ちするよな。
てな訳で、初夏に入る前の天気のいい日、ついにズラカルト男爵の使者がやってきた。
「あー、来ちゃったんだね」
と、第一報を受けた僕はため息をつく。
場所は北の開墾地。
見張りからの報告だったんで、到着までには多分まだ一時間はある。
「とりあえず、到着したら門の前で待たせておいて」
と、頼んで着替えることにする。
…………。
いや、このままで行こう。
「どうして?」
あ、おまっ、また人の心を読んだろ!
「あのね、この際だからいっとくけど、私はあなたのために神から遣わされた神の眷属なんだから、本来考えるだけで会話できるんだからね」
「え? え!? 今までずっと思考垂れ流しだったの?」
「そうよ」
や、やべー。
「それって一種のサトラレ状態ってことじゃねーの?」
「ね」
「…………」
「安心して、恥ずかしいこと考え始めたら意図的に思考をブロックしてるから」
僕は、声も出せずに口をパクパクさせるしかない。
「ひ、一つ確認してもイイデツカ?」
「なによ?」
「その能力は、例えば遠く離れてても有効だったりする?」
「そもそもこの能力は神への報告のための能力なんだから、当たり前じゃない」
…………。
もはや天を仰ぐしかない。
「そろそろ質問に答えてもらってもいい?」
「え?」
「どうしてその格好のまま会おうとしているか」
「あ、ああ……人は見た目が九割って話があってね。男爵の使者には立派な格好で会わないほうが都合がいいかと思って」
「なるほどね。見た目で侮ってもらおうってことか」
「そういうこと」
僕は急いでジャスを伴って南の畑へ入る。
よかった。
まだ、使者は到着していない。
いいぞいいぞ。
できれば村の中へは入れたくない。
畑の土いじりをしながら猛烈に頭を働かせる。
「お館様」
「なに?」
「なにを考えてるんです?」
「うん。どうやって使者を門前払いするかをね」
「なぜ、村に入れないんです?」
確かに使者をもてなすってんなら村に招き入れるべきよね。
でもさ、日常になっているからジャスは忘れてるんだと思うけど
「家がルンカー造りだべ?」
「あ! ああ!」
この国ではルンカーで家を作れるのは法律で決められた一定額の税を納めた者だけということになっている。
もちろん、最終的には領主と一戦構える
今は全力で門前払いをするのが僕の至上命題だ。
「お館様」
すっと、オギンが僕のそばに立つ。
「あと、八半時間ほどで到着します」
!
「オギン」
「はい」
「今の見張りはガーブラだったよね」
「はい」
「使者に声が届く距離まで来たら僕を大声で呼んでくれるように頼んでくれ」
「かしこまりました」
「あ、その時は村長って呼ぶように念を押してね」
ひとつ頭を下げ、村へと戻る。
八半時間の半分ももしないうちに、
「おや……村長ぁ! 誰かやってきます!」
でけー声だな……。
つーか、どんだけ声届くんだよ。
使者だと判るってことはホルスに乗ってきたってことだろ?
並足で歩かせてるとして、あとあと八班時間の半分ちょっとはかかるってんだから一カルは先にいるんじゃねーの?
まぁ、いい。
僕は見張りを見上げ、道の向こうを見る演技をする。
そして手ぬぐいで汗をぬぐって農作業をしていた他の村人と畑から出ようとする。
(リリム)
「なによ?」
(使者はホルスに乗ってるよな? 歩かせてるか? 走らせてるか確認してくれないか?)
「はいはい」
リリムはすっと飛び上がるとすぐに戻ってくる。
「結構な速さで向かってきてるわよ」
おおぅ!
じゃあ、もう少し芝居しとこうか。
「みんな! 急いで村の中に戻るんだ!」
なんて大声で叫ぶ。
村人は「突然なんだ?」という困惑を浮かべながら、それでも指示に従ってくれる。
僕は指示を出しつつ
やがてドドドと土埃をあげて使者が迫ってくる。
殿を手伝ってくれたジャスを門の中へ押し込んだところで、使者に追いつかれた。
正確には追いつかせたんだけどね。