第68話 アメリカと交渉する日本の気分ってこんな感じ?
文字数 1,880文字
「おもしろい!」
これまでの経緯を一通り話し終えた時、ラバナルが言った言葉だ。
「ナルフも長命な種族とはいえ定命 の生き物じゃ。ワシの寿命もそれになぞらえれば後百年ほど。枯れゆく余生を楽しむのもよいかと思うておったが、人種の世界がまた面白くなっていると聞けばダークナルフの血が滾るわい。ジャンとやら、わしの知識欲を満足させろ。さすればそなたの望みを叶えてやる。等価交換じゃ!」
ラバナルが森の主になる経緯を聞くと一抹の不安を覚えるわけだけど、魔法使いをゲットできるのは願っても無い好機なんだよな。
「判った。こちらこそよろしくお願いします」
「早速じゃが、石の弾丸が弾かれたのが悔しくてのぅ。どうにかならんか?」
俗物がっ!
と、某女性指導者の言葉が頭に浮かぶ。
「僕に魔法は使えませんよ?」
「使えんでもなにか考えつかんか?」
と、せっつかれて困っていると、護衛兼世界情勢補足役のオギンが助け舟を出してくれた。
「現代では石の代わりに鉄の弾を飛ばしていますよ」
「ほぅ! なるほど、鉄の加工技術が確立しておるのじゃったな。青銅は稀少であったから弾にするのがもったいなかったが、鉄ならそこら中にあるでな。そうかそうか」
と、一人で納得している。
ちょっと疎外感があるから無理やり加わってやる。
「ところでその魔法はどのような魔法なんです?」
「なに、原理は簡単じゃよ。こう……」
と、床に転がっている小石を拾うと、それを乗せた左手に右手でなにかをなぞり始めた。
お湯を沸かした時にもやってた、魔方陣だ。
(「印」って言って呪 いの一種よ)
と、リリムが解説してくれる。
「……魔法の力を加えて飛ばすだけじゃ」
と、ラバナルがいうと小石が飛んでいく。
これ、銃のように打ち出すわけじゃないんだし、射出速度を上げれば石でも砕けず飛んで鎧の装甲くらい貫けるんじゃね?
「この石を鉄の玉に変えるだけか。ふむふむ……石と鉄では魔力の通りが違うから、印字に手を加えねばの」
おっと、考えることに没頭される前に詰めておかなきゃいけないことがあるぞ。
「ラバナル」
「なんじゃ?」
「協力するとして、この先もここに住むつもりなのかな?」
「おお、そうじゃの。ジャンのようなものばかりなら町に行ってやってもよいが、ワシは愚か者は嫌いじゃ。普段はここで過ごすのがよかろうて」
確かにその方が双方にとって穏便かもしれない。
「じゃが、お前と交流せねばワシの望みが叶わん。さて、どうしたものかの」
「では、十日に一度、お館様がここにお伺いになればよいのでは?」
オギンも町へ入れて、いらない騒動を起こすことを警戒しているのだろう。
それにしたって、僕がかよ。
「十日? 十日じゃ長い。長すぎる。三日に一度来い」
おい!
「それでは、町の経営が滞る」
「それはそれで困るの。仕方ない。五日に一度で手を打とう」
手を打つのはこっちの方なんだけど……どうも調子狂うな。
「では、五日後に改めてお伺いしますが、迎えに来ていただかないと森に迷ってしまうんですけど……」
「迎えを出す」
出す?
てことはラバナルが来るんじゃないってことか。
「判りました。では、今日はこの辺で」
「おお、見送りを出そう」
と、ラバナルが中空に印を結ぶ。
石の弾丸より複雑で精緻なようで、タクトのようなもので結んでいる。
あれはいわゆる魔法の杖ってやつだな。
結ばれた印は淡い赤に発光して小鳥を生み出す。
ん?
召喚か?
(創造よ。命があるわけじゃないけどね)
(ゴーレムみたいなもん?)
(そんなとこ)
「そうじゃ、今まで通りお前さん以外が森を侵したら容赦せんぞ」
え?
「あ、僕に同行する分にはいいですよね」
「ふむ、必要なこともあろうな。ただし、一度に三人までじゃ」
「僕以外に?」
「ん? まぁ、それでよかろう」
むーん……対等な交渉ができなかった。
政治は清濁合わせ呑みとはよく言われるけど、ヤバい奴を引き込んじまったか?
僕が帰りの道々でそんなことを考えていた頃、オギンは別の問題に頭を悩ませていたらしい。
森を出ると、案内役の小鳥が弾けるように消えた。
それを確認したオギンが僕に囁きかける。
「お館様。困ったことになりましたね」
「え?」
「ドブルたち遺族を中心とした反お館派です」
あ。
「どうご説明するつもりですか?」
ラバナルにペースを乱されっぱなしでそこに思いが至らなかった。
そうだよな。
町人三人が殺されてるんだっけ。
いやいや、殺されているとは限らない?
あれ?
オギンははっきり遺族って言ったよな?
「遺族?」
「はい」
「証拠があるってこと?」
「はい」
あちゃー。
これまでの経緯を一通り話し終えた時、ラバナルが言った言葉だ。
「ナルフも長命な種族とはいえ
ラバナルが森の主になる経緯を聞くと一抹の不安を覚えるわけだけど、魔法使いをゲットできるのは願っても無い好機なんだよな。
「判った。こちらこそよろしくお願いします」
「早速じゃが、石の弾丸が弾かれたのが悔しくてのぅ。どうにかならんか?」
俗物がっ!
と、某女性指導者の言葉が頭に浮かぶ。
「僕に魔法は使えませんよ?」
「使えんでもなにか考えつかんか?」
と、せっつかれて困っていると、護衛兼世界情勢補足役のオギンが助け舟を出してくれた。
「現代では石の代わりに鉄の弾を飛ばしていますよ」
「ほぅ! なるほど、鉄の加工技術が確立しておるのじゃったな。青銅は稀少であったから弾にするのがもったいなかったが、鉄ならそこら中にあるでな。そうかそうか」
と、一人で納得している。
ちょっと疎外感があるから無理やり加わってやる。
「ところでその魔法はどのような魔法なんです?」
「なに、原理は簡単じゃよ。こう……」
と、床に転がっている小石を拾うと、それを乗せた左手に右手でなにかをなぞり始めた。
お湯を沸かした時にもやってた、魔方陣だ。
(「印」って言って
と、リリムが解説してくれる。
「……魔法の力を加えて飛ばすだけじゃ」
と、ラバナルがいうと小石が飛んでいく。
これ、銃のように打ち出すわけじゃないんだし、射出速度を上げれば石でも砕けず飛んで鎧の装甲くらい貫けるんじゃね?
「この石を鉄の玉に変えるだけか。ふむふむ……石と鉄では魔力の通りが違うから、印字に手を加えねばの」
おっと、考えることに没頭される前に詰めておかなきゃいけないことがあるぞ。
「ラバナル」
「なんじゃ?」
「協力するとして、この先もここに住むつもりなのかな?」
「おお、そうじゃの。ジャンのようなものばかりなら町に行ってやってもよいが、ワシは愚か者は嫌いじゃ。普段はここで過ごすのがよかろうて」
確かにその方が双方にとって穏便かもしれない。
「じゃが、お前と交流せねばワシの望みが叶わん。さて、どうしたものかの」
「では、十日に一度、お館様がここにお伺いになればよいのでは?」
オギンも町へ入れて、いらない騒動を起こすことを警戒しているのだろう。
それにしたって、僕がかよ。
「十日? 十日じゃ長い。長すぎる。三日に一度来い」
おい!
「それでは、町の経営が滞る」
「それはそれで困るの。仕方ない。五日に一度で手を打とう」
手を打つのはこっちの方なんだけど……どうも調子狂うな。
「では、五日後に改めてお伺いしますが、迎えに来ていただかないと森に迷ってしまうんですけど……」
「迎えを出す」
出す?
てことはラバナルが来るんじゃないってことか。
「判りました。では、今日はこの辺で」
「おお、見送りを出そう」
と、ラバナルが中空に印を結ぶ。
石の弾丸より複雑で精緻なようで、タクトのようなもので結んでいる。
あれはいわゆる魔法の杖ってやつだな。
結ばれた印は淡い赤に発光して小鳥を生み出す。
ん?
召喚か?
(創造よ。命があるわけじゃないけどね)
(ゴーレムみたいなもん?)
(そんなとこ)
「そうじゃ、今まで通りお前さん以外が森を侵したら容赦せんぞ」
え?
「あ、僕に同行する分にはいいですよね」
「ふむ、必要なこともあろうな。ただし、一度に三人までじゃ」
「僕以外に?」
「ん? まぁ、それでよかろう」
むーん……対等な交渉ができなかった。
政治は清濁合わせ呑みとはよく言われるけど、ヤバい奴を引き込んじまったか?
僕が帰りの道々でそんなことを考えていた頃、オギンは別の問題に頭を悩ませていたらしい。
森を出ると、案内役の小鳥が弾けるように消えた。
それを確認したオギンが僕に囁きかける。
「お館様。困ったことになりましたね」
「え?」
「ドブルたち遺族を中心とした反お館派です」
あ。
「どうご説明するつもりですか?」
ラバナルにペースを乱されっぱなしでそこに思いが至らなかった。
そうだよな。
町人三人が殺されてるんだっけ。
いやいや、殺されているとは限らない?
あれ?
オギンははっきり遺族って言ったよな?
「遺族?」
「はい」
「証拠があるってこと?」
「はい」
あちゃー。