第154話 超衝撃! びっくりさせるつもりがびっくりさせられちゃうの巻
文字数 2,021文字
クレタの「そろそろ夕飯の支度の時間だ。いつまでもサラを遠ざけておくわけにいかない」という至極もっともな理由で強引にお開きにされた第一回転生者会議は、明日の第二回会議を開催すると言う約束を取りつけて終わりを告げた。
囲炉裏の間を出るとドンピシャのタイミングでオギンがサラを連れて館に戻ってきた。
まったく、どうやってタイミングを図っているのだろう?
時代劇の隠密もびっくりの有能さだよな。
ルダーは帰りがけ、
「転生者会議のたんびにサラ様を館から追い出すのはどうかと思うぞ」
と、言ってくる。
そうだよなぁ……。
「カミングアウトすべきだと思うけど?」
「そういうクレタはルビンスに告白したのかよ?」
「もちろん!」
まじかっ!?
たしかルダーは誰に対してもカムアウトしてたな。
これからやろうとしていることを考えると、それもありか。
会議メンバーがいなくなった館に僕とサラとオギン。
「『かみんぐあうと』ってなんですか?」
うん、このタイミングしかないだろうな。
「サラ、オギンも聞いてくれ。大事な話だ」
「では、食事の折に。そろそろ夕餉の支度をしないと、今晩は抜きになりますよ」
そうだな。
もったいぶった話し方をしたんだから早く聞きたいだろうにさすがは王族、泰然としている。
晩飯作りは能率を重視して三人で行うことにした。
献立は台所の食材を把握しているサラが考え、オギンと協力して煮物焼物を担当する。
僕?
そりゃあもちろん野菜の皮むきだとか下拵えの担当だ。
……「追い回し」っての?
これでもこの館の主人なんだけどなぁ。
今日の献立は野菜のスープとハムのステーキ。
ひと煮立ちさせたスープを炭火ごと囲炉裏に移しコトコトと煮込んでいる間に一スンブの厚さにスライスしたハムを両面焦げ目がつく程度に焼いて食べる。
とてもお手軽な料理だ。
「で? 大事なお話とはどのようなことでしょう?」
ハムステーキを食べ終わる頃にスープをよそいながらサラが聞いてくる。
実にうまいタイミングだ。
「ずっと隠していたことなんだが……僕には前世の記憶がある」
「まぁ」
「それもこことは違う世界の記憶だ」
「異世界ですか?」
オギンはルダーとも付き合いが長いからその単語も知っているし、ルダーからいろいろ聞いている節があるな。
「そうだ。ここよりもずっと便利な世界だ」
「そんな気がしていました」
「もしかして、今日お集まりになっていた方達も?」
「全員、転生者だ。チカマックだけは僕たちの前世とも違う世界から来たみたいだけどね」
かなり衝撃的で重大な告白なはずなんだけど、この二人冷静にすぎないか?
「『転生者』ですか。適切な言葉ですね」
ん? 薄々勘づいてたオギンはともかくサラが落ち着いているのは教養的なものなのか?
「この世界では別の呼び方があるのか?」
「はい。この国やキューブリア公国では『異界の賢者』、ラシュリアナ王国やハッシュシ王国では『恵みをもたらすもの』などと呼んでいます」
なにそれ、厨二心をくすぐられるネーミングセンスだ。
「じゃあ、僕もそう自称しよう」
「それは時期尚早です、お館様」
「なにか問題でも?」
「大アリです」
「この世界は彼らによって歴史が作られてきたと言っても過言ではありません。過去には自らを『異界の賢者』と名乗ったことで貴族連中に狙われ、非業の死を遂げたものもいたとか。わたしも外に向かって喧伝するのは得策ではないと思いますよ」
「……よくルダーは無事だったな」
「ほんとです」
オギン……。
「それにしてもサラはともかくオギンはずいぶん博識なんだな」
「子供の頃の基礎教養でしたから」
どんな少女時代だったんだ?
「本当に。異界の賢者の話を教わるのは貴族の子弟か、賢者の子くらいですのにね?」
「賢者の子でしたから」
おい、お前今さらっと衝撃発言しなかったか!?
思わずスープを鼻から出しちゃったじゃないか!
「あら、やっぱり」
「やっぱり?」
「ええ、この国の現在の諜報技術は三十年ほど前に異界の賢者によってもたらされものだそうで、オギンさんほどの身ごなしができる方は『直 弟子 』さんでも限られているのではないでしょうか?」
衝撃のカミングアウトをしたつもりの僕の方が衝撃の事実に驚いているんですけど……。
どこかにドッキリカメラでも仕掛けられてんじゃねーの?
(ないわよ)
だよねー。
「ち、ちなみに親の出自というのは……」
「ニホンから来たと言っていました」
「ま、また日本人……え? ってことは本当に忍者の末裔 ?」
「ニンジャと言うのがなにを指すのかは知りませんし巷間 にはさまざま語られていますが、母は諜報活動などしていませんし、実際にはタイソウと言う軽業と護身術を教えいてただけです。それを習得した弟子たちが手に職として芸にしたり諜報活動に利用したと言うのが真相です」
お、おぅ……タイソウって、やっぱあの器械体操 かな?
ん?
軽業芸?
あれ?
どっかで話題に出た気がするな。
囲炉裏の間を出るとドンピシャのタイミングでオギンがサラを連れて館に戻ってきた。
まったく、どうやってタイミングを図っているのだろう?
時代劇の隠密もびっくりの有能さだよな。
ルダーは帰りがけ、
「転生者会議のたんびにサラ様を館から追い出すのはどうかと思うぞ」
と、言ってくる。
そうだよなぁ……。
「カミングアウトすべきだと思うけど?」
「そういうクレタはルビンスに告白したのかよ?」
「もちろん!」
まじかっ!?
たしかルダーは誰に対してもカムアウトしてたな。
これからやろうとしていることを考えると、それもありか。
会議メンバーがいなくなった館に僕とサラとオギン。
「『かみんぐあうと』ってなんですか?」
うん、このタイミングしかないだろうな。
「サラ、オギンも聞いてくれ。大事な話だ」
「では、食事の折に。そろそろ夕餉の支度をしないと、今晩は抜きになりますよ」
そうだな。
もったいぶった話し方をしたんだから早く聞きたいだろうにさすがは王族、泰然としている。
晩飯作りは能率を重視して三人で行うことにした。
献立は台所の食材を把握しているサラが考え、オギンと協力して煮物焼物を担当する。
僕?
そりゃあもちろん野菜の皮むきだとか下拵えの担当だ。
……「追い回し」っての?
これでもこの館の主人なんだけどなぁ。
今日の献立は野菜のスープとハムのステーキ。
ひと煮立ちさせたスープを炭火ごと囲炉裏に移しコトコトと煮込んでいる間に一スンブの厚さにスライスしたハムを両面焦げ目がつく程度に焼いて食べる。
とてもお手軽な料理だ。
「で? 大事なお話とはどのようなことでしょう?」
ハムステーキを食べ終わる頃にスープをよそいながらサラが聞いてくる。
実にうまいタイミングだ。
「ずっと隠していたことなんだが……僕には前世の記憶がある」
「まぁ」
「それもこことは違う世界の記憶だ」
「異世界ですか?」
オギンはルダーとも付き合いが長いからその単語も知っているし、ルダーからいろいろ聞いている節があるな。
「そうだ。ここよりもずっと便利な世界だ」
「そんな気がしていました」
「もしかして、今日お集まりになっていた方達も?」
「全員、転生者だ。チカマックだけは僕たちの前世とも違う世界から来たみたいだけどね」
かなり衝撃的で重大な告白なはずなんだけど、この二人冷静にすぎないか?
「『転生者』ですか。適切な言葉ですね」
ん? 薄々勘づいてたオギンはともかくサラが落ち着いているのは教養的なものなのか?
「この世界では別の呼び方があるのか?」
「はい。この国やキューブリア公国では『異界の賢者』、ラシュリアナ王国やハッシュシ王国では『恵みをもたらすもの』などと呼んでいます」
なにそれ、厨二心をくすぐられるネーミングセンスだ。
「じゃあ、僕もそう自称しよう」
「それは時期尚早です、お館様」
「なにか問題でも?」
「大アリです」
「この世界は彼らによって歴史が作られてきたと言っても過言ではありません。過去には自らを『異界の賢者』と名乗ったことで貴族連中に狙われ、非業の死を遂げたものもいたとか。わたしも外に向かって喧伝するのは得策ではないと思いますよ」
「……よくルダーは無事だったな」
「ほんとです」
オギン……。
「それにしてもサラはともかくオギンはずいぶん博識なんだな」
「子供の頃の基礎教養でしたから」
どんな少女時代だったんだ?
「本当に。異界の賢者の話を教わるのは貴族の子弟か、賢者の子くらいですのにね?」
「賢者の子でしたから」
おい、お前今さらっと衝撃発言しなかったか!?
思わずスープを鼻から出しちゃったじゃないか!
「あら、やっぱり」
「やっぱり?」
「ええ、この国の現在の諜報技術は三十年ほど前に異界の賢者によってもたらされものだそうで、オギンさんほどの身ごなしができる方は『
衝撃のカミングアウトをしたつもりの僕の方が衝撃の事実に驚いているんですけど……。
どこかにドッキリカメラでも仕掛けられてんじゃねーの?
(ないわよ)
だよねー。
「ち、ちなみに親の出自というのは……」
「ニホンから来たと言っていました」
「ま、また日本人……え? ってことは本当に忍者の
「ニンジャと言うのがなにを指すのかは知りませんし
お、おぅ……タイソウって、やっぱあの
ん?
軽業芸?
あれ?
どっかで話題に出た気がするな。