第216話 ヒロガリー区侵攻 3
文字数 2,009文字
呼び出された三人にイラードもついてくる。
女性が二人、ジーンにアンヌそれとソガーという男性だ。
「ジーンはハンジー町の、アンヌとソガーはオグマリー町で文官を務めていた者で、いずれも優秀な人材です」
と、イラードが言う。
「出兵に志願するような待遇ではないと思うんですが、なぜかいたんですよね」
と、チローが言う。
二人とも自分の直属の部下じゃないだろうによく人を見ている。
「武官ばかり連れていっても占領政策はうまくいかないんじゃないかと思ったので」
と、臆面もなくアンヌが言う。
部下が気を遣ってくれたと言うことか。
申し訳ない。
「出世の芽を考えてもチャンスだと思ったからですよ」
と、ソガーも率直に言う。
なかなかの野心家だな。
「ではソガー、この町の臨時代官はお前に任せる。必要であれば五人まで領内から文官を呼び寄せていい。この遠征が一段落着くまでに誰に引き継いでも滞りなく政治が行えるようにせよ」
「はっ!」
すげぇ喜びの感情がこもった返事だな。
「チロー」
「はい」
「町から五十人徴発せよ」
「お任せを」
「イラード」
「はい」
「敗残兵は使えそうか?」
「味方の兵としてですか? そうですね。一つの塊にしなければ」
あまりバラバラにしすぎても士気が上がらないと思うんだけどな。
「指揮官級の人材は望めんよな」
「はい」
二人揃っての返事だ。
ダメそうだな。
その日の夜、僕の天幕にオクサ、ラビティア、カイジョーを呼ぶ。
「明日からラビティアを先鋒に入れかえて出発する」
「おお、腕が鳴りますな」
「オクサは臨時代官ソガーと町の運営について話し合ってから出発するように。その際、アンヌ、ジーンを同席させろ」
「占領政策の確認ですな」
「うむ。治安維持にひと組残すように手配してくれ」
「十人もの兵力を割くのは痛いですな」
総兵力五百人からの十人は確かに痛いけど、町から九十人くらい徴発するから人数的には痛くないだろ。
「町から徴発する予定の民兵五十人のうち二十人を町の治安維持に回す。それでも軍に三十人増えるのだから差し引きでも悪くないだろ」
「訓練を積んでいない四十人など、それほど足しにはなりませんよ」
厳しいこと言ってくれるよ。
「この町の敗残兵はみんなうちに取り込ませてもらっていいですか?」
ラビティアが言う。
四十人はいるぞ。
「御せるのか?」
「勝っていれば」
そう言うもんかと僕は頷いてみせる。
「今月中に三つの町を陥落させる」
「そこから先は?」
と、ラビティアが訊ねるので
「ズラカルト男爵とてカカシじゃなかろう。相手の出方次第だが、来月からは本格的な武力衝突を覚悟してくれ」
「望むところですよ」
と、カイジョーが胸を叩く。
翌日、チロー組を町の反対側にある二つの村に派遣する。
町を占領下に収めた旨を知らせ、先の二つの村と同様十人ずつ徴兵するためだ。
念の為、手元の歩兵一組を割いてチローにつける。
二十人もいれば戦闘になってもなんとかなるだろうと言う見立てのもとの増兵だ。
チロー隊を見送った後、僕らも出立。
その日のうちに都合五つ目の村に到着、ここでも十人徴発して一泊、さらに翌日に隣の村に入る。
この村は占領した町と次の町のだいたい中間点にある村で、人口は三十人ほど。
町の衛星集落ではなく、うちのセザン村のような独立村落のようだ。
ここでの徴発は五人、人口が少ないのでそれに配慮した人数だ。
今まではチローに頼んでいた交渉役を、二つの村ではアンヌとジーンに任せてみた。
チローがいないからね。
二人とも問題なく実務にあたってくれた。
これなら次の町を任せても十分仕事をしてくれるだろう。
(問題は……)
(女性ってことね)
リリムの言う通り、近代化されていない封建国家ではやっぱりどうしても女性は下に見られる傾向がある。
僕の領内では実力主義を標榜して男女の別なく採用し、時には要職につけているけれど、それでもよく思われていないっぽい。
無能なのに人の上に立たれるの困るんだけどねー、新興勢力の棟梁としてはさ。
さらに次の村で十人を徴発し、合わせて十五人をオクサに預ける。
次は二つ目の町だ。
僕はここで一日休息を与える。
休息と言ってもテントで野営なんだからどれくらい行軍の疲れが取れるか判らないけどね。
チローからの飛行手紙で二つの村からも徴兵できた旨が報告される。
これで各村に不公平感はなくなるだろう。
町を探っていた忍者部隊の一隊コチョウ隊が戻ってきた。
忍者部隊も十人一組で構成されていてキャラの下にキキョウ隊コチョウ隊がそれぞれの任務についている。
コチョウの報告によると、キキョウ隊はすでに次の町に先発しているそうだが、キャラは町に残っているという。
丸一日の休息をとった部隊はラビティア隊を先鋒に進発する。
今日の標的は人口五百三十人、周辺四ヶ村を束ねる町だ。
守備兵力は百五十人を想定している。
頼むぞ、ラビティア。
女性が二人、ジーンにアンヌそれとソガーという男性だ。
「ジーンはハンジー町の、アンヌとソガーはオグマリー町で文官を務めていた者で、いずれも優秀な人材です」
と、イラードが言う。
「出兵に志願するような待遇ではないと思うんですが、なぜかいたんですよね」
と、チローが言う。
二人とも自分の直属の部下じゃないだろうによく人を見ている。
「武官ばかり連れていっても占領政策はうまくいかないんじゃないかと思ったので」
と、臆面もなくアンヌが言う。
部下が気を遣ってくれたと言うことか。
申し訳ない。
「出世の芽を考えてもチャンスだと思ったからですよ」
と、ソガーも率直に言う。
なかなかの野心家だな。
「ではソガー、この町の臨時代官はお前に任せる。必要であれば五人まで領内から文官を呼び寄せていい。この遠征が一段落着くまでに誰に引き継いでも滞りなく政治が行えるようにせよ」
「はっ!」
すげぇ喜びの感情がこもった返事だな。
「チロー」
「はい」
「町から五十人徴発せよ」
「お任せを」
「イラード」
「はい」
「敗残兵は使えそうか?」
「味方の兵としてですか? そうですね。一つの塊にしなければ」
あまりバラバラにしすぎても士気が上がらないと思うんだけどな。
「指揮官級の人材は望めんよな」
「はい」
二人揃っての返事だ。
ダメそうだな。
その日の夜、僕の天幕にオクサ、ラビティア、カイジョーを呼ぶ。
「明日からラビティアを先鋒に入れかえて出発する」
「おお、腕が鳴りますな」
「オクサは臨時代官ソガーと町の運営について話し合ってから出発するように。その際、アンヌ、ジーンを同席させろ」
「占領政策の確認ですな」
「うむ。治安維持にひと組残すように手配してくれ」
「十人もの兵力を割くのは痛いですな」
総兵力五百人からの十人は確かに痛いけど、町から九十人くらい徴発するから人数的には痛くないだろ。
「町から徴発する予定の民兵五十人のうち二十人を町の治安維持に回す。それでも軍に三十人増えるのだから差し引きでも悪くないだろ」
「訓練を積んでいない四十人など、それほど足しにはなりませんよ」
厳しいこと言ってくれるよ。
「この町の敗残兵はみんなうちに取り込ませてもらっていいですか?」
ラビティアが言う。
四十人はいるぞ。
「御せるのか?」
「勝っていれば」
そう言うもんかと僕は頷いてみせる。
「今月中に三つの町を陥落させる」
「そこから先は?」
と、ラビティアが訊ねるので
「ズラカルト男爵とてカカシじゃなかろう。相手の出方次第だが、来月からは本格的な武力衝突を覚悟してくれ」
「望むところですよ」
と、カイジョーが胸を叩く。
翌日、チロー組を町の反対側にある二つの村に派遣する。
町を占領下に収めた旨を知らせ、先の二つの村と同様十人ずつ徴兵するためだ。
念の為、手元の歩兵一組を割いてチローにつける。
二十人もいれば戦闘になってもなんとかなるだろうと言う見立てのもとの増兵だ。
チロー隊を見送った後、僕らも出立。
その日のうちに都合五つ目の村に到着、ここでも十人徴発して一泊、さらに翌日に隣の村に入る。
この村は占領した町と次の町のだいたい中間点にある村で、人口は三十人ほど。
町の衛星集落ではなく、うちのセザン村のような独立村落のようだ。
ここでの徴発は五人、人口が少ないのでそれに配慮した人数だ。
今まではチローに頼んでいた交渉役を、二つの村ではアンヌとジーンに任せてみた。
チローがいないからね。
二人とも問題なく実務にあたってくれた。
これなら次の町を任せても十分仕事をしてくれるだろう。
(問題は……)
(女性ってことね)
リリムの言う通り、近代化されていない封建国家ではやっぱりどうしても女性は下に見られる傾向がある。
僕の領内では実力主義を標榜して男女の別なく採用し、時には要職につけているけれど、それでもよく思われていないっぽい。
無能なのに人の上に立たれるの困るんだけどねー、新興勢力の棟梁としてはさ。
さらに次の村で十人を徴発し、合わせて十五人をオクサに預ける。
次は二つ目の町だ。
僕はここで一日休息を与える。
休息と言ってもテントで野営なんだからどれくらい行軍の疲れが取れるか判らないけどね。
チローからの飛行手紙で二つの村からも徴兵できた旨が報告される。
これで各村に不公平感はなくなるだろう。
町を探っていた忍者部隊の一隊コチョウ隊が戻ってきた。
忍者部隊も十人一組で構成されていてキャラの下にキキョウ隊コチョウ隊がそれぞれの任務についている。
コチョウの報告によると、キキョウ隊はすでに次の町に先発しているそうだが、キャラは町に残っているという。
丸一日の休息をとった部隊はラビティア隊を先鋒に進発する。
今日の標的は人口五百三十人、周辺四ヶ村を束ねる町だ。
守備兵力は百五十人を想定している。
頼むぞ、ラビティア。