第169話 どっこい生きてる シャツの中ではないけれど
文字数 2,375文字
目を覚ました時、そこには自室の天井があった。
なぜ判るかって?
僕の館は無理を言って日本建築風にしてあるからだよ。
首を横に向けるとそこには泣き腫らしてひどい顔のリリムがいた。
(おはよう)
「ジャン」
リリムの声は転生者にしか聞こえないんだけど、その転生者たちに聞かれたくないこともあるんで普段は念話で話すリリムも動揺すると声を音にする。
(よかったよ、死ななくて)
と、とりあえず軽口を言ってみる。
さて、
(どうなったか説明してくれるかな?)
リリムの説明によると、刺された直後に僕はキャラに飛行手紙を出すことを指示してガーブラにセザン村まで僕のホルスの手綱を曳いていくように命じたらしい。
全然覚えてないけど。
まぁ、案の定というか途中で意識を失ったらしい。
キャラはバロ村のチャールズとラバナルに飛行手紙を出すと、セザン村まで先触れに出たのでたどり着いたセザン村では早々に診療所に運び込まれて応急処置を受け、その日の夜にはチャールズとラバナルが到着して魔法による治療が施されたそうだ。
(その日の夜のうちに到着できたのか?)
(駅ホルス車を一台貸し切って加速 の魔法でぶっ飛ばしてきたそうよ)
いったい何倍速で走らせたのか?
その後、そのホルス車でバロ村に移送してここに寝かされたということだ。
(何日寝てた?)
(三日)
(生死をさまよったのか?)
(安静にするために私が眠りの魔法で寝かせてたの)
(そりゃあ……みんな心配しなかったか?)
自分のおでこをコツンとやってテヘペロすんのやめなさい。
(とにかく、傷は完治してるわ)
それはありがたい。
僕は体を起こして刺された腹を確認する。
魔法はすごい。
傷がほとんど判らない。
深い傷ってのは目立つ痕になって残るもんなんだけど、刺された箇所が判っている僕でも注意深く見ないと判らないんだから、ホント魔法ってすごい。
立ち上がったら立ちくらみがする。
力も入らない感じだ。
これは血が足りないのと三日寝続けたせいで筋力が落ちているからかな?
旅の間に二度も寝込んだ事になるからなぁ。
(大丈夫なの?)
(まずは体力回復のために食べて動かなきゃ)
服を着替えているとサラが部屋に入ってきた。
かわいらしく口に手を当てて言葉を失ったサラはじんわりと目に涙をためて僕に抱きついてくる。
うおっと、よろけてしまった。
「あ、ごめんなさい」
「心配かけたな」
声をかけるとまた言葉を失って滂沱の涙を流す。
(あーあ、なーかしたぁなーかしたぁ♪)
どこの小学生だよ、節までつけて歌うんじゃありません。
それにしたってこの状況をどうにかしないとな。
「あー……サラ?」
「はい」
「手料理が食べたい」
「……はい!」
先に部屋を出ていくサラを見送ったあと、壁伝いに階下へ降りていく。
手すりをつけとくべきだった。
若いからっていつなにがあるか判んないもんだな。
サラが用意してくれたのはフレイラの粥。
あらかじめフレイラをつぶしてくれているので消化にもよさそうだ。
ほんのり効いてる塩 味 が食欲を掻き立てる。
食事が終わる頃、チカマックを伴ってイゼルナが帰ってきた。
サラの世話と我が家の家事全般を取り仕切っているイゼルナはだいぶ貫禄がついてきた。
チローとの仲は進展しているのだろうか?
今はどうでもいいか。
「大変でしたね」
相変わらずタメ口っぽいチカマックである。
「何日か寝込んでいたようだな。情勢に変化は?」
「寝込んでいたのは都合五日、お館で寝込んでいたのが三日ですよ。それだけあれば事態も色々と進展します」
おっと、魔法で寝かされていたのが三日ってことか。
そこんところちゃんと正確に報告してもらいたいものだ。
(なぁ、リリム?)
(なんの話よ?)
「ガーブラとキャラがたまたまセザン村に滞在していたブンター隊を駆り出して襲撃跡に向かい、事後処理をしたみたいですよ」
元傭兵で編成した常備兵をいくつかの隊にして巡回警備や町の警護に当てるようになったのはこの秋から。
そのうちの一つ、バンバ大隊の下にブンター小隊とカレン小隊があって彼らは街道の巡回警備を担当してくれている。
そのブンター小隊の初めての仕事らしい仕事が現場検証になったわけだ。
「キャラたちの報告によると、反お館派には計四つの派閥があるみたいですね。今回はその中の最も過激な派閥が関わっているとかで。今、一網打尽を狙ってイラードとオクサが計略を練っているそうです」
反お館派って四グループもあるの?
まいったなぁ……。
結構な人数になるのかな? それ。
まぁ、とりあえず最過激派を一網打尽にできればしばらくはおとなしくしてくれるでしょうよ。
取り逃して別グループに潜り込んだりしたあと、そのグループが過激化するのが一番厄介だからイラードたちにはなんとしてでも壊滅してもらいたい。
「ちなみにギランのグループは残りのグループとどんな関係にあるんだ?」
四グループを過激な順に説明すると
一、僕を暗殺してズラカルト男爵に復権してもらおうという一派。
今回の首謀派閥。
二、ズラカルト男爵の支配から抜け出せことだし、平民出の僕から自分たち貴族に実権を取り戻そうと画策している一派。
こいつらは基本無能だからずっと冷や飯食ってるのにね。
三、性急に改革を推し進める僕に反感を持っている平民一派。
「昔はよかった」系年寄りグループだな。
四、成人もしていなかった僕が村長だったのが気に入らなくてとって代わろうとしていた一派。
今は、支配地域が大きくなりすぎてとって代わる気はなく、ただ気に入らないって感じのようだ。
こうしてみると各派閥は互いの主張が大きく違うから別グループ形成してるんだってのがよく判る。
「背後関係が判ったんで、ゼニナル町の暴動は収束の目処が立ったってよ」
それはよかった。
なぜ判るかって?
僕の館は無理を言って日本建築風にしてあるからだよ。
首を横に向けるとそこには泣き腫らしてひどい顔のリリムがいた。
(おはよう)
「ジャン」
リリムの声は転生者にしか聞こえないんだけど、その転生者たちに聞かれたくないこともあるんで普段は念話で話すリリムも動揺すると声を音にする。
(よかったよ、死ななくて)
と、とりあえず軽口を言ってみる。
さて、
(どうなったか説明してくれるかな?)
リリムの説明によると、刺された直後に僕はキャラに飛行手紙を出すことを指示してガーブラにセザン村まで僕のホルスの手綱を曳いていくように命じたらしい。
全然覚えてないけど。
まぁ、案の定というか途中で意識を失ったらしい。
キャラはバロ村のチャールズとラバナルに飛行手紙を出すと、セザン村まで先触れに出たのでたどり着いたセザン村では早々に診療所に運び込まれて応急処置を受け、その日の夜にはチャールズとラバナルが到着して魔法による治療が施されたそうだ。
(その日の夜のうちに到着できたのか?)
(駅ホルス車を一台貸し切って
いったい何倍速で走らせたのか?
その後、そのホルス車でバロ村に移送してここに寝かされたということだ。
(何日寝てた?)
(三日)
(生死をさまよったのか?)
(安静にするために私が眠りの魔法で寝かせてたの)
(そりゃあ……みんな心配しなかったか?)
自分のおでこをコツンとやってテヘペロすんのやめなさい。
(とにかく、傷は完治してるわ)
それはありがたい。
僕は体を起こして刺された腹を確認する。
魔法はすごい。
傷がほとんど判らない。
深い傷ってのは目立つ痕になって残るもんなんだけど、刺された箇所が判っている僕でも注意深く見ないと判らないんだから、ホント魔法ってすごい。
立ち上がったら立ちくらみがする。
力も入らない感じだ。
これは血が足りないのと三日寝続けたせいで筋力が落ちているからかな?
旅の間に二度も寝込んだ事になるからなぁ。
(大丈夫なの?)
(まずは体力回復のために食べて動かなきゃ)
服を着替えているとサラが部屋に入ってきた。
かわいらしく口に手を当てて言葉を失ったサラはじんわりと目に涙をためて僕に抱きついてくる。
うおっと、よろけてしまった。
「あ、ごめんなさい」
「心配かけたな」
声をかけるとまた言葉を失って滂沱の涙を流す。
(あーあ、なーかしたぁなーかしたぁ♪)
どこの小学生だよ、節までつけて歌うんじゃありません。
それにしたってこの状況をどうにかしないとな。
「あー……サラ?」
「はい」
「手料理が食べたい」
「……はい!」
先に部屋を出ていくサラを見送ったあと、壁伝いに階下へ降りていく。
手すりをつけとくべきだった。
若いからっていつなにがあるか判んないもんだな。
サラが用意してくれたのはフレイラの粥。
あらかじめフレイラをつぶしてくれているので消化にもよさそうだ。
ほんのり効いてる
食事が終わる頃、チカマックを伴ってイゼルナが帰ってきた。
サラの世話と我が家の家事全般を取り仕切っているイゼルナはだいぶ貫禄がついてきた。
チローとの仲は進展しているのだろうか?
今はどうでもいいか。
「大変でしたね」
相変わらずタメ口っぽいチカマックである。
「何日か寝込んでいたようだな。情勢に変化は?」
「寝込んでいたのは都合五日、お館で寝込んでいたのが三日ですよ。それだけあれば事態も色々と進展します」
おっと、魔法で寝かされていたのが三日ってことか。
そこんところちゃんと正確に報告してもらいたいものだ。
(なぁ、リリム?)
(なんの話よ?)
「ガーブラとキャラがたまたまセザン村に滞在していたブンター隊を駆り出して襲撃跡に向かい、事後処理をしたみたいですよ」
元傭兵で編成した常備兵をいくつかの隊にして巡回警備や町の警護に当てるようになったのはこの秋から。
そのうちの一つ、バンバ大隊の下にブンター小隊とカレン小隊があって彼らは街道の巡回警備を担当してくれている。
そのブンター小隊の初めての仕事らしい仕事が現場検証になったわけだ。
「キャラたちの報告によると、反お館派には計四つの派閥があるみたいですね。今回はその中の最も過激な派閥が関わっているとかで。今、一網打尽を狙ってイラードとオクサが計略を練っているそうです」
反お館派って四グループもあるの?
まいったなぁ……。
結構な人数になるのかな? それ。
まぁ、とりあえず最過激派を一網打尽にできればしばらくはおとなしくしてくれるでしょうよ。
取り逃して別グループに潜り込んだりしたあと、そのグループが過激化するのが一番厄介だからイラードたちにはなんとしてでも壊滅してもらいたい。
「ちなみにギランのグループは残りのグループとどんな関係にあるんだ?」
四グループを過激な順に説明すると
一、僕を暗殺してズラカルト男爵に復権してもらおうという一派。
今回の首謀派閥。
二、ズラカルト男爵の支配から抜け出せことだし、平民出の僕から自分たち貴族に実権を取り戻そうと画策している一派。
こいつらは基本無能だからずっと冷や飯食ってるのにね。
三、性急に改革を推し進める僕に反感を持っている平民一派。
「昔はよかった」系年寄りグループだな。
四、成人もしていなかった僕が村長だったのが気に入らなくてとって代わろうとしていた一派。
今は、支配地域が大きくなりすぎてとって代わる気はなく、ただ気に入らないって感じのようだ。
こうしてみると各派閥は互いの主張が大きく違うから別グループ形成してるんだってのがよく判る。
「背後関係が判ったんで、ゼニナル町の暴動は収束の目処が立ったってよ」
それはよかった。