第24話 戦略会議2 ギブ&テイクと砲&魔法
文字数 2,269文字
さて、全体的なコンセンサスとしてジョーのキャラバンがこの村をこの国の拠点とするところまではみんな納得したみたいだ。
次は、ギブアンドテイクの話になる。
この際拠点として利用するジョーたちのメリット、デメリットはこちらには関係ない。
ジョーたちからは人と物が提供される。
ジョーたちの考えるメリット分を引いて考えても一方的に助けてもらうなんて虫がよすぎるし、大きな借りを作ることになる。
だからこちらからもなにかを提供する必要がある。
問題は僕らの村がなにを提供するかだ。
村の生産品なんてたかが知れている。
「この村に置く俺たちの荷を守ってもらいたい」
「八人でか?」
ジャリが目を細めてジョーを見る。
「村の住人は増やすよ。各地で武力衝突が起きているから孤児などこれから増えていく。そういった奴らから村の役に立ちそうな人間を集めてくる」
おっと、随分傲慢な言い方だな。
「手始めにキャラバンのことが判っていて村の再建に役に立ちそうなのを何人か村に残すことにした」
と、ジョーに目で紹介されたザビーたちが軽く会釈する。
「どんな役に立つんだい?」
「あたいらそれなりに役に立ってたと思うんだけど?」
「あー確かに」
ヘレンとオギンはたった半日でそれなりに打ち解けている感じ。
歩み寄る気がないのは今のとこジャリだけなんじゃないかな?
「彼らはキャラバンでもかなり腕の立つメンバーだ。在庫管理も彼らがいれば心配しなくてすむ。多少こき使っても潰れないだろう」
ほんと、ジョーはさらっとひどいことを言う。
でもまぁ、それくらいドライに割り切った思考と決断力がなければ商隊長は務まらないのかも知れない。
「でも、人数が増えたからって村を守れるってわけじゃなくない?」
あるのかないのか判んない言い方しやがって……でも、ジャスの言うことは一理ある。
「そこはみんなで考えてくれ。俺たちはキャラバンだ。商売の話なら助言もできるが村の運営となると門外漢だよ」
丸投げされてもなぁ……。
まぁ、腹案がないわけじゃないけどさ。
なにせ、前世はそこそこの歴史オタクだったんだから。
とはいえ、この情報過疎の状況ではどの案を採用していいものやらとんと見当がつかない。
──ってのは声に出すわけにもいかないけど、この場を収める発言だけはしとかなきゃな。
「とりあえず近々で事が起こるとは考えにくいし、今いますぐになにができるわけじゃないから、襲撃対策はおいおい話し合うことにしよう」
「近々いまいま追い追い〜」
リリム、茶化すな。
「それもそうか」
と、ジャスは納得してくれた。
素直でいいね。
素朴だねー。
ジャスとかヘレンを見てるとたぶん、世界的歴史区分として近代まで来ていないだろうなってのが、なんとなく感じ取れるよ。
だから近代的都市防衛のプランは想定から外してる。
スタンダードな案は中世ヨーロッパ的城塞都市化なんだろうけど、砲と魔法の存在をどう考慮に入れるかが課題だよな。
大砲や同等以上の破壊力を持つ魔法があるようなら城塞は逆に不利になったりするからね。
ここは次回ジョーが来る時に持ってきてくれる約束になっている情報に期待するとして、今は増えた人数と増える予定の人口を有効活用する算段をしなきゃだな。
その後、僕らは午後の仕事に取り掛かる。
とは言っても話し合いがそこそこの時間を食ったから、せいぜい日暮れまでの数時間だ。
ジャリはユーミン姉妹を連れて窯に戻る。
ヘレンはアニー、オギンと一緒に今日採った食材の保存食への加工作業。
オギン以外の新入り二人はここで生活する準備、具体的にはテントを張る作業をする。
まだ二軒目の建築中で、まだまだみんなテント暮らしだからね。
僕はルダーと一緒にジョーと打ち合わせ。
次に来る時に用意してもらう必要なものの洗い出しをする。
問題は砲の存在の有無をどうやって聞くか?
あるならいいんだ。
けど、なかった場合「どう説明すればいいんだ?」ってことに無駄に悩んでいるわけ。
それをさらっと解決したのがルダーだ。
「ジョーさん。この世界には火薬ってあるのかい?」
って。
「火薬?」
「ああ、んーん……すげー燃える粉だ」
うわ、すげーざっくり説明した。
「ここらじゃ見たことはないな」
「そうか」
「そんなもんのこと、どうして知ってるんだ?」
「ああ、俺には前世の知識があってな?」
「ほぅ」
「こことは違う世界だったんだが、そこでは色々な場面で使われていたんだ」
「作れるのか?」
「いや、作り方は知らない。使い方ならそれなりに知っているがな」
さすが、戦中派。
「少なくともこの国や俺の故郷ラシュリアナでも聞いた事がない」
「そうか……」
「……前世な…………」
ん?
「ふむ、火薬については調べてみよう」
てな訳で、火薬がないなら砲はない。
って事が判ったわけだ。
で、もう一つの懸念の方は僕が質問する。
「あ・魔法ってどんな事ができるんだ?」
「どうだろうな? 俺が知ってる範囲だと、火を熾すとか明かりをつけるって魔法は実際に見た事があるぞ」
いわゆる生活魔法ってやつだな。
「怪我を治す魔法とか、攻撃魔法は?」
「治癒魔法士って職業があるのは知っている。攻撃ってのがどの程度を指すのかは知らないが、火を熾してそれを投げつけるとかか?」
いわゆるファイヤーボール系だな。
そういう応用ができるかどうかが知りたい。
「うん」
「ものの本には雷を起こす魔法使いの話や火の玉を放つ魔法使いの話があるから、あるんじゃないかな?」
なるほどなるほど。
やっぱ、魔法対策は必要だな。
次は、ギブアンドテイクの話になる。
この際拠点として利用するジョーたちのメリット、デメリットはこちらには関係ない。
ジョーたちからは人と物が提供される。
ジョーたちの考えるメリット分を引いて考えても一方的に助けてもらうなんて虫がよすぎるし、大きな借りを作ることになる。
だからこちらからもなにかを提供する必要がある。
問題は僕らの村がなにを提供するかだ。
村の生産品なんてたかが知れている。
「この村に置く俺たちの荷を守ってもらいたい」
「八人でか?」
ジャリが目を細めてジョーを見る。
「村の住人は増やすよ。各地で武力衝突が起きているから孤児などこれから増えていく。そういった奴らから村の役に立ちそうな人間を集めてくる」
おっと、随分傲慢な言い方だな。
「手始めにキャラバンのことが判っていて村の再建に役に立ちそうなのを何人か村に残すことにした」
と、ジョーに目で紹介されたザビーたちが軽く会釈する。
「どんな役に立つんだい?」
「あたいらそれなりに役に立ってたと思うんだけど?」
「あー確かに」
ヘレンとオギンはたった半日でそれなりに打ち解けている感じ。
歩み寄る気がないのは今のとこジャリだけなんじゃないかな?
「彼らはキャラバンでもかなり腕の立つメンバーだ。在庫管理も彼らがいれば心配しなくてすむ。多少こき使っても潰れないだろう」
ほんと、ジョーはさらっとひどいことを言う。
でもまぁ、それくらいドライに割り切った思考と決断力がなければ商隊長は務まらないのかも知れない。
「でも、人数が増えたからって村を守れるってわけじゃなくない?」
あるのかないのか判んない言い方しやがって……でも、ジャスの言うことは一理ある。
「そこはみんなで考えてくれ。俺たちはキャラバンだ。商売の話なら助言もできるが村の運営となると門外漢だよ」
丸投げされてもなぁ……。
まぁ、腹案がないわけじゃないけどさ。
なにせ、前世はそこそこの歴史オタクだったんだから。
とはいえ、この情報過疎の状況ではどの案を採用していいものやらとんと見当がつかない。
──ってのは声に出すわけにもいかないけど、この場を収める発言だけはしとかなきゃな。
「とりあえず近々で事が起こるとは考えにくいし、今いますぐになにができるわけじゃないから、襲撃対策はおいおい話し合うことにしよう」
「近々いまいま追い追い〜」
リリム、茶化すな。
「それもそうか」
と、ジャスは納得してくれた。
素直でいいね。
素朴だねー。
ジャスとかヘレンを見てるとたぶん、世界的歴史区分として近代まで来ていないだろうなってのが、なんとなく感じ取れるよ。
だから近代的都市防衛のプランは想定から外してる。
スタンダードな案は中世ヨーロッパ的城塞都市化なんだろうけど、砲と魔法の存在をどう考慮に入れるかが課題だよな。
大砲や同等以上の破壊力を持つ魔法があるようなら城塞は逆に不利になったりするからね。
ここは次回ジョーが来る時に持ってきてくれる約束になっている情報に期待するとして、今は増えた人数と増える予定の人口を有効活用する算段をしなきゃだな。
その後、僕らは午後の仕事に取り掛かる。
とは言っても話し合いがそこそこの時間を食ったから、せいぜい日暮れまでの数時間だ。
ジャリはユーミン姉妹を連れて窯に戻る。
ヘレンはアニー、オギンと一緒に今日採った食材の保存食への加工作業。
オギン以外の新入り二人はここで生活する準備、具体的にはテントを張る作業をする。
まだ二軒目の建築中で、まだまだみんなテント暮らしだからね。
僕はルダーと一緒にジョーと打ち合わせ。
次に来る時に用意してもらう必要なものの洗い出しをする。
問題は砲の存在の有無をどうやって聞くか?
あるならいいんだ。
けど、なかった場合「どう説明すればいいんだ?」ってことに無駄に悩んでいるわけ。
それをさらっと解決したのがルダーだ。
「ジョーさん。この世界には火薬ってあるのかい?」
って。
「火薬?」
「ああ、んーん……すげー燃える粉だ」
うわ、すげーざっくり説明した。
「ここらじゃ見たことはないな」
「そうか」
「そんなもんのこと、どうして知ってるんだ?」
「ああ、俺には前世の知識があってな?」
「ほぅ」
「こことは違う世界だったんだが、そこでは色々な場面で使われていたんだ」
「作れるのか?」
「いや、作り方は知らない。使い方ならそれなりに知っているがな」
さすが、戦中派。
「少なくともこの国や俺の故郷ラシュリアナでも聞いた事がない」
「そうか……」
「……前世な…………」
ん?
「ふむ、火薬については調べてみよう」
てな訳で、火薬がないなら砲はない。
って事が判ったわけだ。
で、もう一つの懸念の方は僕が質問する。
「あ・魔法ってどんな事ができるんだ?」
「どうだろうな? 俺が知ってる範囲だと、火を熾すとか明かりをつけるって魔法は実際に見た事があるぞ」
いわゆる生活魔法ってやつだな。
「怪我を治す魔法とか、攻撃魔法は?」
「治癒魔法士って職業があるのは知っている。攻撃ってのがどの程度を指すのかは知らないが、火を熾してそれを投げつけるとかか?」
いわゆるファイヤーボール系だな。
そういう応用ができるかどうかが知りたい。
「うん」
「ものの本には雷を起こす魔法使いの話や火の玉を放つ魔法使いの話があるから、あるんじゃないかな?」
なるほどなるほど。
やっぱ、魔法対策は必要だな。