第134話 オグマリー市攻城戦 2
文字数 1,980文字
午後の戦闘が始まった。
ザイーダから「行きます」と連絡があったんで知れた。
僕に連絡をする前にチカマックに連絡を入れたらしい。
半時間で西門に姿を現すと返事があったそうだ。
「てことは、一時間もしないうちに援軍要請の使者が出ますかね?」
槍をしごいてガーブラが訊ねてくる。
去年の悪党働きから槍を気に入ったらしくて、それまでの剣から槍に持ち替えてすっかり槍働きの騎馬武者のようだ。
馬じゃなくてホルスだけど。
僕の近衛になったせいで暴れ足りないんだろう。
いいよいいよ、任せてあげる。
「ガーブラ」
「へい」
「へい」って……。
「サビー」
「はっ」
「二カル前進して使者を迎え撃て」
「御意!」
ホルスに騎乗して小脇に槍を抱えて駆けていく後ろ姿がかっこいいな。
「ワタシも槍にしようかな?」
とか、ルビンスが言うくらいだから、気の迷いじゃないんだろうな。
「お前の膂 力 では持て余すんじゃないか?」
「父上……ワタシだって、訓練次第でガーブラのように扱えるようになってみせます」
「訓練次第な」
一時間としないうちにサビーが戻って来た。
「なにか?」
「報告します。ズラカルト男爵への使者二騎がオグマリー市よりやって来ましたが我らと交戦、ガーブラが一騎を討ちもう一騎は街へ戻りました」
「よし、騎兵隊前進」
僕を含めた騎兵十七騎がガーブラの待つ場所まで前進する。
合流してほどなく敵の小隊が土煙を上げて迫って来た。
「突撃!」
僕の号令一下、全騎突撃を慣行する。
待ち構えての迎撃なんてホルスの突進力に蹴散らされちゃうからね。
先頭をいくガーブラが槍を横に構えて少しわきにそれる。
「なぎ払え!」
クシャナばりに叫ぶと、ガーブラが腰をひねるように槍を振る。
先頭を走っていた三騎がその槍で打ち落とされ、落ちた騎兵に足を取られた後続のホルスがつんのめるように転ぶ。
うおっ、グロい。
なんて言ってられない。
「一騎ももらすな、討ちとれ!」
機先を制した僕らは瞬く間に敵を討ち取っていった。
しかし、逃げ戻った三騎ほどを討ちもらしてしまった。
チッ、これで今後の警戒を厳重にしなきゃいけなくなったじゃないか。
「ルビレル」
「はっ」
「カイジョーに警戒網の構築状況を確認せよ。他のものはこの場で待機」
「はっ」
「すげー威力だったな、ガーブラ」
ルビレルを見送った後、サビーがガーブラに歩み寄って声をかける。
「腕が持っていかれるかと思ったがな、振っても突いても痛快だわ」
「オレも次からは槍に持ち替えるかな」
おっと、騎兵の間でも槍ブーム?
じゃあ、武功に報いる皆 朱 の槍でも用意しなきゃならないか?
待機から半時間、ルビレルが戻って来た。
「報告。警戒網構築完了。東西の軍からも報告が来ておりました」
「よし、戻る道すがら報告の続きを聞こう。サビー、ガーブラは引き続きこの場に待機。敵が来たら陣に戻って来るように」
「御意」
陣への道々受けた報告によると、東門からは午前同様の戦況である旨の連絡があり、西門への奇襲は東門同様に成功したとの知らせだった。
「打って出て来てないんだな」
陣に戻って最初にしたのが東門への詳細確認だった。
「はい、出て来る気配はあったのですが、軍気が消えました。直後に奇襲に成功した旨、西門から連絡がありましたのでお館様のお考えになられた通りにことが運んだものと見受けられます」
やったね。
「では、今日は適当なところで切り上げろ」
「御意」
西門は最初の守り手を全滅させ一度は門に取りついたらしいが、矢が降って来るようになったので、歩兵を退がらたところだという。
「ご苦労、今日はこのまま睨み合いで終わっていいぞ」
「では、そうさせていただきましょう」
ということで開戦初日は終始我が軍のペースで進んで終わった。
と言っても、戦況は敵方に大きく損害を与えたわけじゃない。
結果だけ見れば今日の攻城戦に成果なしと見えるかも知れないくらいだ。
「明日は西も東も白兵戦になりますかね?」
「ああ、ウータか。まずならないよ。門を開けることはリスクだ。勝てると踏まない限り守備側が打って出ることはない」
「でも、一時は打って出る構えを見せていたのでしょう?」
「それは一軍だけだったからだ。三方の門それぞれに軍がいる現状で……どこか一か所ならあるかも知れないな」
「あるとすればどこだと思われますか?」
「……ここかな?」
「南門ですか?」
「オグマリー側の持っている情報がどれほど正確かによるけれど、ここが一番軍勢が少なく見えているはずだ」
敵側が目にしたのは騎兵二十足らずだ。
ついでに援軍を要請するためにもここを突破したいと考えるだろう。
「どんな戦術でくるにせよ、返り討ちにする。君たちにも働いてもらうよ」
「全力を尽くしましょう」
メガネをクイッとしたらゾクッとくるほど似合うだろうなぁ……メガネはしてないんだけど。
ザイーダから「行きます」と連絡があったんで知れた。
僕に連絡をする前にチカマックに連絡を入れたらしい。
半時間で西門に姿を現すと返事があったそうだ。
「てことは、一時間もしないうちに援軍要請の使者が出ますかね?」
槍をしごいてガーブラが訊ねてくる。
去年の悪党働きから槍を気に入ったらしくて、それまでの剣から槍に持ち替えてすっかり槍働きの騎馬武者のようだ。
馬じゃなくてホルスだけど。
僕の近衛になったせいで暴れ足りないんだろう。
いいよいいよ、任せてあげる。
「ガーブラ」
「へい」
「へい」って……。
「サビー」
「はっ」
「二カル前進して使者を迎え撃て」
「御意!」
ホルスに騎乗して小脇に槍を抱えて駆けていく後ろ姿がかっこいいな。
「ワタシも槍にしようかな?」
とか、ルビンスが言うくらいだから、気の迷いじゃないんだろうな。
「お前の
「父上……ワタシだって、訓練次第でガーブラのように扱えるようになってみせます」
「訓練次第な」
一時間としないうちにサビーが戻って来た。
「なにか?」
「報告します。ズラカルト男爵への使者二騎がオグマリー市よりやって来ましたが我らと交戦、ガーブラが一騎を討ちもう一騎は街へ戻りました」
「よし、騎兵隊前進」
僕を含めた騎兵十七騎がガーブラの待つ場所まで前進する。
合流してほどなく敵の小隊が土煙を上げて迫って来た。
「突撃!」
僕の号令一下、全騎突撃を慣行する。
待ち構えての迎撃なんてホルスの突進力に蹴散らされちゃうからね。
先頭をいくガーブラが槍を横に構えて少しわきにそれる。
「なぎ払え!」
クシャナばりに叫ぶと、ガーブラが腰をひねるように槍を振る。
先頭を走っていた三騎がその槍で打ち落とされ、落ちた騎兵に足を取られた後続のホルスがつんのめるように転ぶ。
うおっ、グロい。
なんて言ってられない。
「一騎ももらすな、討ちとれ!」
機先を制した僕らは瞬く間に敵を討ち取っていった。
しかし、逃げ戻った三騎ほどを討ちもらしてしまった。
チッ、これで今後の警戒を厳重にしなきゃいけなくなったじゃないか。
「ルビレル」
「はっ」
「カイジョーに警戒網の構築状況を確認せよ。他のものはこの場で待機」
「はっ」
「すげー威力だったな、ガーブラ」
ルビレルを見送った後、サビーがガーブラに歩み寄って声をかける。
「腕が持っていかれるかと思ったがな、振っても突いても痛快だわ」
「オレも次からは槍に持ち替えるかな」
おっと、騎兵の間でも槍ブーム?
じゃあ、武功に報いる
待機から半時間、ルビレルが戻って来た。
「報告。警戒網構築完了。東西の軍からも報告が来ておりました」
「よし、戻る道すがら報告の続きを聞こう。サビー、ガーブラは引き続きこの場に待機。敵が来たら陣に戻って来るように」
「御意」
陣への道々受けた報告によると、東門からは午前同様の戦況である旨の連絡があり、西門への奇襲は東門同様に成功したとの知らせだった。
「打って出て来てないんだな」
陣に戻って最初にしたのが東門への詳細確認だった。
「はい、出て来る気配はあったのですが、軍気が消えました。直後に奇襲に成功した旨、西門から連絡がありましたのでお館様のお考えになられた通りにことが運んだものと見受けられます」
やったね。
「では、今日は適当なところで切り上げろ」
「御意」
西門は最初の守り手を全滅させ一度は門に取りついたらしいが、矢が降って来るようになったので、歩兵を退がらたところだという。
「ご苦労、今日はこのまま睨み合いで終わっていいぞ」
「では、そうさせていただきましょう」
ということで開戦初日は終始我が軍のペースで進んで終わった。
と言っても、戦況は敵方に大きく損害を与えたわけじゃない。
結果だけ見れば今日の攻城戦に成果なしと見えるかも知れないくらいだ。
「明日は西も東も白兵戦になりますかね?」
「ああ、ウータか。まずならないよ。門を開けることはリスクだ。勝てると踏まない限り守備側が打って出ることはない」
「でも、一時は打って出る構えを見せていたのでしょう?」
「それは一軍だけだったからだ。三方の門それぞれに軍がいる現状で……どこか一か所ならあるかも知れないな」
「あるとすればどこだと思われますか?」
「……ここかな?」
「南門ですか?」
「オグマリー側の持っている情報がどれほど正確かによるけれど、ここが一番軍勢が少なく見えているはずだ」
敵側が目にしたのは騎兵二十足らずだ。
ついでに援軍を要請するためにもここを突破したいと考えるだろう。
「どんな戦術でくるにせよ、返り討ちにする。君たちにも働いてもらうよ」
「全力を尽くしましょう」
メガネをクイッとしたらゾクッとくるほど似合うだろうなぁ……メガネはしてないんだけど。