第14話 廃村復興0円生活
文字数 2,030文字
村長生活初日。
今日は男性陣が雑木林で伐採作業。
いつまでもテントで生活ってわけにいかないからね。
冬の間、僕は薪と新築用に一日一本切っていたんだけど、村人増えたら足りないからね。
ノコギリ一本、斧が三本。
ちょうど四人分だったね。
とはいえ、買ったばかりの新品の鋸はともかく、なまくらと化した斧で木を切るのはなかなか骨が折れる。
僕が暮らしてきた小屋の風除室を作る時に木を切った時はそりゃあもう大変だった。
女性陣は雑木林で食べられるものを採集。
僕一人だった時はかき集めた保存食と時々成功した狩りの成果で食いつなげたけど、八人の胃袋を満たそうと思ったらそうもいかない。
それに春だからね。
結構食べられるものがあるんだ。
雑木林の奥に行かなくても住むところに結構山菜の類が芽吹いているから、それを摘んでもらうわけだ。
日が暮れるまでに切り倒した木が二十本。 山菜は明日も食べられるくらいの量になった。
それを元の村の中央広場で大鍋に干し肉と一緒に放り込む。
鍋をかけた焚き火の灯りを囲んで大勢で食べる食事はあったかくていい。
「明日は何をやるんだ?」
食事をしながらルダーが僕に聞いてくる。
「うん、女性陣には今日とは別の場所で採集してもらう。男性陣は別行動だな」
「別行動?」
うん、ジャス、いい反応だよ。
「ジャリとジャスには今日切った木を村まで運んでもらう」
「お前は?」
ジャリ、確かに君の方が年上だろうけど、一応僕、村長だよ?
「僕は引き続き伐採」
「俺は?」
「ルダーには道具作りをしてもらおうと思ってる」
「なるほど。で? 手始めに何を作ればいい?」
そこなのよね。欲しいものは当然いっぱいあるんだけど、何が最優先かそこの見極めがなかなか大変だった。
「炭焼きの窯」
「ほう!」
お・好感触だ。
「スミってなんだ?」
おっと、そういえばこの辺りに炭の文化はないんだった。
たぶん、炭自体はこの世界にも存在している。
キャラバンが持ってくる鉄器などを見れば容易に想像がつく。
そもそも前世世界では石器時代にはすでに使い始めていたと言われている。
ところがこんな片田舎では全くと言っていいほど普及していない。
なぜか?
炭焼きってのが意外と難しいからだ。
日本でも長らく上流階級で独占的に使われていたもので庶民に普及したのは明治に入ってから。
とまぁ、そんな事情は説明しても仕方ないので省きつつ、炭というものがどんなものかを説明する。
「そりゃすげぇな」
と、ジャスは普通に驚いてくれたわけだが、相変わらずジャリが
「なんでお前がそんなこと知ってるんだよ」
とか突っ込んでくる。
「いやぁじつは前世が……」などと言っても詮なきことなので適当にはぐらかしつつルダーを見る。
「白炭は無理だぞ」
仕方ないよね。
「まずは黒炭だけでいい」
と、答えとく。
「まずは……か。まぁ、いずれ試してみるけど今は炭にさえなりゃいいんだな?」
「よろしく」
二人の間では意思の疎通ができている。
ジャリとジャスにはちょっと不満かもしれないけど、余計な説明はしないでおきたいから目をつむる。
向こうもとりあえずしばらくは不満に目をつむってるだろう。
「窯はどこに作ればいいんだ?」
「用水路周りが粘土質の土なんでその辺で……あぁ、水車小屋のそばに僕の小屋が建ってるからその近くにしようか?」
「判った」
「で、明後日以降も採集と伐採で五日間過ごそうと思う」
「どうして?」
クレタの質問だ。
「木材は早急に家を作る必要があるから。山菜は今時期しか取れないからだよ」
ここらあたりはヘレンも心得ているようでその心の声が表情に漏れている。
「みんなには大変だろうけど夜も仕事をしてもらいたいんだよね」
「どんな?」
「カルホはできるかどうか知らないけど、縄をなったり袋や籠を編んだりして欲しいのだよ」
「縄ならできるよ」
「そりゃあいい」
「俺は苦手だ。うまくできないぞ」
胸を張って言えるこっちゃないぞ、ジャリ。
「じゃあ、私たちは明日は午前中に道具の材料になる植物の採集。午後は山菜採りということにしましょうね」
「ヘレンさんありがとうございます」
「いえ、大きな籠を作ればなんども往復しなくて済みますから」
と、今日使った郵便カバンみたいな入れ物を少し持ち上げてみせる。
今日はなん往復したのだろう?
移動って案外疲れるのよね。
「あ、今日の山菜の残りは保存が効くように調理しとくわね」
さすがはおかみさんってとこか。
家事のノウハウ的なことが判ってらっしゃる。
十五になったばかりで生活力のない僕ではその発想はできなかった。
…………。
前世の僕も甲斐性なかったしな。
「さ・久しぶりの重労働だったからな。ジャンは知らんが俺たちはは早めに寝ることにしよう。明日起きられないかもしれないぞ」
「私が起こしますよ」
「私もぉ……」
アニーはすでに眠そうだけどな……。
僕には目覚まし時計が……痛 って!
心読みやがったな、リリムのやつめ。
今日は男性陣が雑木林で伐採作業。
いつまでもテントで生活ってわけにいかないからね。
冬の間、僕は薪と新築用に一日一本切っていたんだけど、村人増えたら足りないからね。
ノコギリ一本、斧が三本。
ちょうど四人分だったね。
とはいえ、買ったばかりの新品の鋸はともかく、なまくらと化した斧で木を切るのはなかなか骨が折れる。
僕が暮らしてきた小屋の風除室を作る時に木を切った時はそりゃあもう大変だった。
女性陣は雑木林で食べられるものを採集。
僕一人だった時はかき集めた保存食と時々成功した狩りの成果で食いつなげたけど、八人の胃袋を満たそうと思ったらそうもいかない。
それに春だからね。
結構食べられるものがあるんだ。
雑木林の奥に行かなくても住むところに結構山菜の類が芽吹いているから、それを摘んでもらうわけだ。
日が暮れるまでに切り倒した木が二十本。 山菜は明日も食べられるくらいの量になった。
それを元の村の中央広場で大鍋に干し肉と一緒に放り込む。
鍋をかけた焚き火の灯りを囲んで大勢で食べる食事はあったかくていい。
「明日は何をやるんだ?」
食事をしながらルダーが僕に聞いてくる。
「うん、女性陣には今日とは別の場所で採集してもらう。男性陣は別行動だな」
「別行動?」
うん、ジャス、いい反応だよ。
「ジャリとジャスには今日切った木を村まで運んでもらう」
「お前は?」
ジャリ、確かに君の方が年上だろうけど、一応僕、村長だよ?
「僕は引き続き伐採」
「俺は?」
「ルダーには道具作りをしてもらおうと思ってる」
「なるほど。で? 手始めに何を作ればいい?」
そこなのよね。欲しいものは当然いっぱいあるんだけど、何が最優先かそこの見極めがなかなか大変だった。
「炭焼きの窯」
「ほう!」
お・好感触だ。
「スミってなんだ?」
おっと、そういえばこの辺りに炭の文化はないんだった。
たぶん、炭自体はこの世界にも存在している。
キャラバンが持ってくる鉄器などを見れば容易に想像がつく。
そもそも前世世界では石器時代にはすでに使い始めていたと言われている。
ところがこんな片田舎では全くと言っていいほど普及していない。
なぜか?
炭焼きってのが意外と難しいからだ。
日本でも長らく上流階級で独占的に使われていたもので庶民に普及したのは明治に入ってから。
とまぁ、そんな事情は説明しても仕方ないので省きつつ、炭というものがどんなものかを説明する。
「そりゃすげぇな」
と、ジャスは普通に驚いてくれたわけだが、相変わらずジャリが
「なんでお前がそんなこと知ってるんだよ」
とか突っ込んでくる。
「いやぁじつは前世が……」などと言っても詮なきことなので適当にはぐらかしつつルダーを見る。
「白炭は無理だぞ」
仕方ないよね。
「まずは黒炭だけでいい」
と、答えとく。
「まずは……か。まぁ、いずれ試してみるけど今は炭にさえなりゃいいんだな?」
「よろしく」
二人の間では意思の疎通ができている。
ジャリとジャスにはちょっと不満かもしれないけど、余計な説明はしないでおきたいから目をつむる。
向こうもとりあえずしばらくは不満に目をつむってるだろう。
「窯はどこに作ればいいんだ?」
「用水路周りが粘土質の土なんでその辺で……あぁ、水車小屋のそばに僕の小屋が建ってるからその近くにしようか?」
「判った」
「で、明後日以降も採集と伐採で五日間過ごそうと思う」
「どうして?」
クレタの質問だ。
「木材は早急に家を作る必要があるから。山菜は今時期しか取れないからだよ」
ここらあたりはヘレンも心得ているようでその心の声が表情に漏れている。
「みんなには大変だろうけど夜も仕事をしてもらいたいんだよね」
「どんな?」
「カルホはできるかどうか知らないけど、縄をなったり袋や籠を編んだりして欲しいのだよ」
「縄ならできるよ」
「そりゃあいい」
「俺は苦手だ。うまくできないぞ」
胸を張って言えるこっちゃないぞ、ジャリ。
「じゃあ、私たちは明日は午前中に道具の材料になる植物の採集。午後は山菜採りということにしましょうね」
「ヘレンさんありがとうございます」
「いえ、大きな籠を作ればなんども往復しなくて済みますから」
と、今日使った郵便カバンみたいな入れ物を少し持ち上げてみせる。
今日はなん往復したのだろう?
移動って案外疲れるのよね。
「あ、今日の山菜の残りは保存が効くように調理しとくわね」
さすがはおかみさんってとこか。
家事のノウハウ的なことが判ってらっしゃる。
十五になったばかりで生活力のない僕ではその発想はできなかった。
…………。
前世の僕も甲斐性なかったしな。
「さ・久しぶりの重労働だったからな。ジャンは知らんが俺たちはは早めに寝ることにしよう。明日起きられないかもしれないぞ」
「私が起こしますよ」
「私もぉ……」
アニーはすでに眠そうだけどな……。
僕には目覚まし時計が……
心読みやがったな、リリムのやつめ。