第150話 国家戦略会議 4 アレもこれも足りないんですけど
文字数 2,180文字
人材の育成も急務の案件だ。
けれど、一 朝 一 夕 にはいかないのも現実だ。
現在、バロ村ボット村セザン村の五歳以上二十歳以下はほぼ読み書き算盤ができる。
だからと言ってその子たちみんながみんな即戦力かと言われるとそんなことはない。
とにかく今、喫緊 の問題は先生の確保だ。
三村で読み書きを習った中で成績優秀だった子達に高等教育を行える人材と各集落で読み書きを教える人材をどうやって集めるか。
「成績優秀だった中で成人したのを当てるのではダメなのか?」
カイジョーの質問にアンミリーヤが答える。
「才能のある子にはもっと学んで欲しいんですよ」
「けど、優秀じゃないのに教わって大丈夫なのか?」
この国の文字は表音文字でアルファベットより仮名文字 に近い(ただし母音だけで三十あるとか、拗音 促音 濁音 に半濁音 まで発音全部に文字が当てられているから覚えるのは結構大変だ)。
仮名文字の最大の特徴は文字の並びで発音・読み方が変わらないこと。
だから読み書きを教えるだけなら抜群に優秀な人間じゃなくたって問題ない。
四則演算だって算数的には基礎の基礎だ。
ぶっちゃけ誰が教えたって1+1=2になる。
問題はどんなものにも適正ってものがあることだよな。
下手な教師に当たると大変なんだ。
一番の問題は勉強が嫌いになること。
教育水準の向上は国力に直結するから、是非とも教育政策は手厚くしたい。
「アンミリーヤ」
「はい」
「教育大臣に任命する。まず初等教育に必要な教員数を出すように」
「試験問題とどちらを優先ですか?」
「試験最優先だ」
「判りました」
しばらくは才能のある人材は死なない程度にこき使う。
だって人材が足りないんだもん。
人材が足りないといえば医者不足は深刻だったな。
「チャールズ、ガブリエルは医者として任せても大丈夫なのか?」
「はい、ドーザー夫妻から独り立ちできると言われました」
これで、ドーザー夫妻、クレタに次いで村を任せられる医者ができた。
「他の町の医者はどうだと聞いているか?」
「ドーザー夫妻の推薦で腕のいい医者を八人ほどあたったのですが、四人に断られました」
と報告してくれたのはオギン。
そうか。
腕がいいだけじゃ町医者は勤まんないしな。
しかし、無医村は放置したくない……仕方ない、あの手でいこう。
なんて感じで会議は二日におよび、今ある人材の割り振りを決めていった。
今後は割り振られた各担当ごとにより詳細な計画を立てていくことになる。
「あー、疲れた……」
館に帰るなり靴を脱いで囲炉裏のある和室に足を投げ出す。
「お帰りなさいませ。すぐにお食事になさいますか? それともお風呂になさいます?」
時間が遅いからか、イゼルナたちはもう帰っているらしかった。
お風呂沸かしてくれてるのか、気が利くねぇ。
…………。
「そこは『それとも……ワ・タ・シ♡』っていって欲しかったな」
なんて親父くさいことを口走ってしまう。
これだから昭和世代は……前世の話だけど。
サラは一瞬キョトンとした表情をしたけど、すぐになにが言いたいのかを察したらしく、顔を赤くして
「もう!」
と、拗ねてみせる。
かわいいなコノヤロ。
「風呂に入るよ」
オグマリー区攻略後この屋敷で唯一改装されたのが風呂場だった。
庭の一角を仕切った五右衛門風呂だったものをジャスに頼んで足を伸ばして入れる湯船と、湯船と洗い場を囲む屋根と壁を作ってもらったのだ。
ま、サラへのプレゼントとしてね。
うん、とても喜んでもらったし。
僕もゆったりと湯船に浸かってリラックスできるしいい改装だった。
…………。
こういうシチュエーションの時は是非とも言わなきゃならない……というか言っておきたいセリフがあったな。
「一緒に入る?」
「知りません!」
耳まで真っ赤にして厨 に消えていくサラ。
んーん……イイっ!
カコーン!
なんて湯桶の音が風呂場に響く。
ちょっと熱いくらいだったので水を足して湯温を調整していると、ガラガラと引き戸を開く音がする。
風情だね。
振り返るとタオルを巻いたサラが入ってくるところだった。
「お背中流しましょうか?」
「お、おぅ」
なんか照れるな。
ざっとお湯をかけられ、石鹸を泡立てたタオルで体をこすられる。
石鹸はこの世界にも元々存在していた。
そりゃそうだ。
地球でも紀元前三千年代には発見されていたってんだから、こっちで存在していても不思議じゃない。
むしろ戦国時代末期にポルトガル船によってもたらされた日本の方が石鹸後進国だ。
地球では八世紀には家内製工業として生産され、十二世紀には量産されていたそうだ。
とはいえ油脂と水酸化ナトリウムで作られる石鹸はこのオグマリー区ではなかなか原材料(特に油脂)を確保できないから大量生産できなくて高級品だ。
そんな石鹸をクレタが今必死に大量生産すべく尽力している。
広く一般庶民にまで石鹸が行き渡れば、伝染病や皮膚病が劇的に減ることが判っているからだ。
衛生環境改善は前世持ちの医者には最優先事項なのかもしれない。
今使っている石鹸も彼女の試作品だ。
花の香りが添加されている。
「イイ匂いですよね、この石鹸」
汚れどころか全身の脂まで綺麗さっぱり落としてしまう強力な洗浄力だけどな。
洗い流したら肌パッサパサだよ。
しっとりすべすべへの道はまだまだ遠いな。
けれど、
現在、バロ村ボット村セザン村の五歳以上二十歳以下はほぼ読み書き算盤ができる。
だからと言ってその子たちみんながみんな即戦力かと言われるとそんなことはない。
とにかく今、
三村で読み書きを習った中で成績優秀だった子達に高等教育を行える人材と各集落で読み書きを教える人材をどうやって集めるか。
「成績優秀だった中で成人したのを当てるのではダメなのか?」
カイジョーの質問にアンミリーヤが答える。
「才能のある子にはもっと学んで欲しいんですよ」
「けど、優秀じゃないのに教わって大丈夫なのか?」
この国の文字は表音文字でアルファベットより
仮名文字の最大の特徴は文字の並びで発音・読み方が変わらないこと。
だから読み書きを教えるだけなら抜群に優秀な人間じゃなくたって問題ない。
四則演算だって算数的には基礎の基礎だ。
ぶっちゃけ誰が教えたって1+1=2になる。
問題はどんなものにも適正ってものがあることだよな。
下手な教師に当たると大変なんだ。
一番の問題は勉強が嫌いになること。
教育水準の向上は国力に直結するから、是非とも教育政策は手厚くしたい。
「アンミリーヤ」
「はい」
「教育大臣に任命する。まず初等教育に必要な教員数を出すように」
「試験問題とどちらを優先ですか?」
「試験最優先だ」
「判りました」
しばらくは才能のある人材は死なない程度にこき使う。
だって人材が足りないんだもん。
人材が足りないといえば医者不足は深刻だったな。
「チャールズ、ガブリエルは医者として任せても大丈夫なのか?」
「はい、ドーザー夫妻から独り立ちできると言われました」
これで、ドーザー夫妻、クレタに次いで村を任せられる医者ができた。
「他の町の医者はどうだと聞いているか?」
「ドーザー夫妻の推薦で腕のいい医者を八人ほどあたったのですが、四人に断られました」
と報告してくれたのはオギン。
そうか。
腕がいいだけじゃ町医者は勤まんないしな。
しかし、無医村は放置したくない……仕方ない、あの手でいこう。
なんて感じで会議は二日におよび、今ある人材の割り振りを決めていった。
今後は割り振られた各担当ごとにより詳細な計画を立てていくことになる。
「あー、疲れた……」
館に帰るなり靴を脱いで囲炉裏のある和室に足を投げ出す。
「お帰りなさいませ。すぐにお食事になさいますか? それともお風呂になさいます?」
時間が遅いからか、イゼルナたちはもう帰っているらしかった。
お風呂沸かしてくれてるのか、気が利くねぇ。
…………。
「そこは『それとも……ワ・タ・シ♡』っていって欲しかったな」
なんて親父くさいことを口走ってしまう。
これだから昭和世代は……前世の話だけど。
サラは一瞬キョトンとした表情をしたけど、すぐになにが言いたいのかを察したらしく、顔を赤くして
「もう!」
と、拗ねてみせる。
かわいいなコノヤロ。
「風呂に入るよ」
オグマリー区攻略後この屋敷で唯一改装されたのが風呂場だった。
庭の一角を仕切った五右衛門風呂だったものをジャスに頼んで足を伸ばして入れる湯船と、湯船と洗い場を囲む屋根と壁を作ってもらったのだ。
ま、サラへのプレゼントとしてね。
うん、とても喜んでもらったし。
僕もゆったりと湯船に浸かってリラックスできるしいい改装だった。
…………。
こういうシチュエーションの時は是非とも言わなきゃならない……というか言っておきたいセリフがあったな。
「一緒に入る?」
「知りません!」
耳まで真っ赤にして
んーん……イイっ!
カコーン!
なんて湯桶の音が風呂場に響く。
ちょっと熱いくらいだったので水を足して湯温を調整していると、ガラガラと引き戸を開く音がする。
風情だね。
振り返るとタオルを巻いたサラが入ってくるところだった。
「お背中流しましょうか?」
「お、おぅ」
なんか照れるな。
ざっとお湯をかけられ、石鹸を泡立てたタオルで体をこすられる。
石鹸はこの世界にも元々存在していた。
そりゃそうだ。
地球でも紀元前三千年代には発見されていたってんだから、こっちで存在していても不思議じゃない。
むしろ戦国時代末期にポルトガル船によってもたらされた日本の方が石鹸後進国だ。
地球では八世紀には家内製工業として生産され、十二世紀には量産されていたそうだ。
とはいえ油脂と水酸化ナトリウムで作られる石鹸はこのオグマリー区ではなかなか原材料(特に油脂)を確保できないから大量生産できなくて高級品だ。
そんな石鹸をクレタが今必死に大量生産すべく尽力している。
広く一般庶民にまで石鹸が行き渡れば、伝染病や皮膚病が劇的に減ることが判っているからだ。
衛生環境改善は前世持ちの医者には最優先事項なのかもしれない。
今使っている石鹸も彼女の試作品だ。
花の香りが添加されている。
「イイ匂いですよね、この石鹸」
汚れどころか全身の脂まで綺麗さっぱり落としてしまう強力な洗浄力だけどな。
洗い流したら肌パッサパサだよ。
しっとりすべすべへの道はまだまだ遠いな。