第130話 ジャン、たぶん初めての反お館派批判
文字数 1,970文字
夕食前に二通の飛行 手紙 が届いた。
第四、第五先の村制圧の報告だ。
それを受けて、僕からハンジー町へ飛行手紙を出す。
こちらの奇襲成功を報せ、出陣を要請する手紙だ。
飛行手紙は前世で魔法が使えていたチカマックの助言で改良が施され、現在ではチカマックをはじめ主だった家臣に対して送れるようになった。
チカマック曰く、
「個人に特定のIDを割り振ってIDに向けて飛ばすのさ」
……ちょっとなにいってんのか判んない。
たぶん携帯電話の電話番号とかメールアドレスみたいなものとざっくり理解できてりゃ十分だろう。
僕、魔法使えないし……。
一時間もしないうに返信が戻ってきた。
それを一読してルビレルに手渡す。
「予定通り明後日の進軍ですな」
「中心地から三日で第三先の村。翌日第二先の村を制圧するだろ?」
と、指折り数える僕に
「最短で第三先の村制圧から二日でオグマリー市に急報が入ったとして、出陣が当日にかないますでしょうか?」
と、ルビレルが訊いてくる。
「無理だろうな。それに、僕が不可能にさせる」
さらに二通の飛行手紙を書いて飛ばした僕は、そばに控えていたキャラに命令を下す。
「明日朝一番で軍議を開く。各将に通達を頼む」
「かしこまりました」
「ルビレルには申し訳ないが、軍の再編案を軍議までに詰めておいてくれ」
「承知いたしました」
「なにかあったら起こしてくれ」
そういって寝室に向かい、寝支度もそこそこにベッドにもぐりこむ。
久しぶりのベッドにしっかりとした睡眠をもらって朝を迎えた。
朝食を意識的にゆっくりとって会議室へ入ると、すでに主だった人間が揃っていた。
全員が僕に向かって一礼をする。
やべ、高揚する。
にやけちまう。
にやけ防止に奥歯を噛みしめつつアゴだけでうなずくと、全員が着席した。
「まずは昨日の戦闘、ご苦労だった。まずは町の報告を」
それにはルビンスが答える。
「は、取り逃した残党ですが、残念ながら二名を捕縛したのみです」
「城壁の上から見張っていたけど、怪しい逃亡者は発見できなかったね」
と、ザイーダが補足する。
「そうか、それについては仕方ないな。投降兵の接収はどうだ?」
「すでに味方している六十一名のほか、金さえ出せば味方となる傭兵を含めて百人余りが味方として編入可能です」
たった一日でずいぶんと取り込めたじゃないか。
有能だねぇ、ルビレル。
元の兵力が二百三十、そこに百七十近くが加わるとすれば四百人規模になるじゃないか。
「兵糧は?」
「日が沈む前には町に到着するかと」
「輜重隊が町で寝泊りする場所は確保できるのか?」
「代官屋敷を解放すれば、雨風はしのげます」
室内キャンプ的な宿泊を強いることになるのか……。
「仕方ないな」
その後、一時的に一町四ヶ村の行政をジョーに任せ、投降兵を編入した軍の再編後、計画通りに進軍することを確認した。
そして最後に
「ギラン」
「は」
「正規兵部隊の鎮圧の際、投降を呼びかけなかったという報告が入っているが、本当か?」
「本当か?」もなにも、すでに本当であることは調べがついている。
僕は返答を待った。
「頑強な抵抗に無駄だと思いまして……」
「無駄かどうかは問題じゃない。結果ではなく過程の問題だ。投降を呼びかけ、少しでも犠牲を少なくするようにと命令したのだ。これは軍規の問題である。二度目はないぞ」
と、少し強めにいっておく。
反お館派懐柔のために一軍をもたせ、手柄を立てやすい役割を振っているんだ。
せっかくの勲第一等をみすみす放り投げないでもらいたい。
これで逆に反感もたれたりされたらたまったもんじゃないんだよ。
「……承知した」
ほーら、不 承 不 承 が滲み出てる。
まいったね、こりゃ。
「では、軍議はこれにて。各自、再編後の部下の掌握と作戦の確認を忘れずに。以上」
三三五五と部屋から出ていくうち、ジョーとルダーを呼び止める。
「なにか問題でも?」
ニタニタとルダーが訊ねる。
なんだろね、この人の心の内を見透かしてるような笑い顔。
きっと前世で色々経験してきてるんだろうなぁ……いやいや、それは今は置いといて、
「ルダーは残ってジョーと共にこのコロニーの調査にあたってもらいたいんだ」
「ハンジー町同様、こっちもコロニーを一つの町として開拓するんだな?」
「ああ」
「向こうも手をつけはじめたばかりだぞ?」
「開拓は何年もかかる事業だろ? 一つ終わってハイ次、って性格のものじゃないと思うんだ」
「確かにな。判った。どうせこの戦は一月もかからないだろうからすぐに臨時代官もお役御免になるんだろうが、その後の調査にも便宜を図れるようにしておこう」
「やりがいのある楽しい仕事だけど、大変だな、こりゃ」
表情がちっとも大変そうじゃないけどな。
その後、二、三の事務的な会話を転生者ならではの表現で交わし、解散した。
第四、第五先の村制圧の報告だ。
それを受けて、僕からハンジー町へ飛行手紙を出す。
こちらの奇襲成功を報せ、出陣を要請する手紙だ。
飛行手紙は前世で魔法が使えていたチカマックの助言で改良が施され、現在ではチカマックをはじめ主だった家臣に対して送れるようになった。
チカマック曰く、
「個人に特定のIDを割り振ってIDに向けて飛ばすのさ」
……ちょっとなにいってんのか判んない。
たぶん携帯電話の電話番号とかメールアドレスみたいなものとざっくり理解できてりゃ十分だろう。
僕、魔法使えないし……。
一時間もしないうに返信が戻ってきた。
それを一読してルビレルに手渡す。
「予定通り明後日の進軍ですな」
「中心地から三日で第三先の村。翌日第二先の村を制圧するだろ?」
と、指折り数える僕に
「最短で第三先の村制圧から二日でオグマリー市に急報が入ったとして、出陣が当日にかないますでしょうか?」
と、ルビレルが訊いてくる。
「無理だろうな。それに、僕が不可能にさせる」
さらに二通の飛行手紙を書いて飛ばした僕は、そばに控えていたキャラに命令を下す。
「明日朝一番で軍議を開く。各将に通達を頼む」
「かしこまりました」
「ルビレルには申し訳ないが、軍の再編案を軍議までに詰めておいてくれ」
「承知いたしました」
「なにかあったら起こしてくれ」
そういって寝室に向かい、寝支度もそこそこにベッドにもぐりこむ。
久しぶりのベッドにしっかりとした睡眠をもらって朝を迎えた。
朝食を意識的にゆっくりとって会議室へ入ると、すでに主だった人間が揃っていた。
全員が僕に向かって一礼をする。
やべ、高揚する。
にやけちまう。
にやけ防止に奥歯を噛みしめつつアゴだけでうなずくと、全員が着席した。
「まずは昨日の戦闘、ご苦労だった。まずは町の報告を」
それにはルビンスが答える。
「は、取り逃した残党ですが、残念ながら二名を捕縛したのみです」
「城壁の上から見張っていたけど、怪しい逃亡者は発見できなかったね」
と、ザイーダが補足する。
「そうか、それについては仕方ないな。投降兵の接収はどうだ?」
「すでに味方している六十一名のほか、金さえ出せば味方となる傭兵を含めて百人余りが味方として編入可能です」
たった一日でずいぶんと取り込めたじゃないか。
有能だねぇ、ルビレル。
元の兵力が二百三十、そこに百七十近くが加わるとすれば四百人規模になるじゃないか。
「兵糧は?」
「日が沈む前には町に到着するかと」
「輜重隊が町で寝泊りする場所は確保できるのか?」
「代官屋敷を解放すれば、雨風はしのげます」
室内キャンプ的な宿泊を強いることになるのか……。
「仕方ないな」
その後、一時的に一町四ヶ村の行政をジョーに任せ、投降兵を編入した軍の再編後、計画通りに進軍することを確認した。
そして最後に
「ギラン」
「は」
「正規兵部隊の鎮圧の際、投降を呼びかけなかったという報告が入っているが、本当か?」
「本当か?」もなにも、すでに本当であることは調べがついている。
僕は返答を待った。
「頑強な抵抗に無駄だと思いまして……」
「無駄かどうかは問題じゃない。結果ではなく過程の問題だ。投降を呼びかけ、少しでも犠牲を少なくするようにと命令したのだ。これは軍規の問題である。二度目はないぞ」
と、少し強めにいっておく。
反お館派懐柔のために一軍をもたせ、手柄を立てやすい役割を振っているんだ。
せっかくの勲第一等をみすみす放り投げないでもらいたい。
これで逆に反感もたれたりされたらたまったもんじゃないんだよ。
「……承知した」
ほーら、
まいったね、こりゃ。
「では、軍議はこれにて。各自、再編後の部下の掌握と作戦の確認を忘れずに。以上」
三三五五と部屋から出ていくうち、ジョーとルダーを呼び止める。
「なにか問題でも?」
ニタニタとルダーが訊ねる。
なんだろね、この人の心の内を見透かしてるような笑い顔。
きっと前世で色々経験してきてるんだろうなぁ……いやいや、それは今は置いといて、
「ルダーは残ってジョーと共にこのコロニーの調査にあたってもらいたいんだ」
「ハンジー町同様、こっちもコロニーを一つの町として開拓するんだな?」
「ああ」
「向こうも手をつけはじめたばかりだぞ?」
「開拓は何年もかかる事業だろ? 一つ終わってハイ次、って性格のものじゃないと思うんだ」
「確かにな。判った。どうせこの戦は一月もかからないだろうからすぐに臨時代官もお役御免になるんだろうが、その後の調査にも便宜を図れるようにしておこう」
「やりがいのある楽しい仕事だけど、大変だな、こりゃ」
表情がちっとも大変そうじゃないけどな。
その後、二、三の事務的な会話を転生者ならではの表現で交わし、解散した。