第83話 先生のフィアンセ その7

文字数 611文字

味見したとき辛過ぎて食べられなくなっていた。
まぁ、あんな突拍子もない事を言う先生とクソガキにはいい薬だったのかも知れないわ。
喫茶店のカレーを口に運びながらそう思う。

バイオレットアイズの彼には申し訳なかったけど。
王子様然としたプラチナブロンドの彼。どこか儚げな風情。
先生は彼を養子にしたいと言った。

訳も聞かずに先生に平手をかました事をひかりは後悔した。
「ちゃんと話すべきだった」そう思っていた。
銀縁眼鏡をかけて細身のスーツを纏った優し気な先生の顔を脳裏に浮かんだ。
「うーん、もう、先生の馬鹿!」
食事を終えて清算し店を出る。

婚約破棄宣言をしても動じることなくへー然と話しかけてくるあの図太い神経。
ちったぁ慌てなさいよ。苛立たしさを解消すべく。
繁華街に近い駅のロッカールームに行き、預けてあった荷物を引き出した。。
ひかりはそのまま駅トイレに設置されたパウダールームに向かい着替えを始めた。

着替えを終えたひかりは、まるで年若い男性に見えた。
ダブル仕立ての黒のスーツとズボンに白いカッターを着てネクタイをしめ、男物の靴を履いて髪は緩い三つ編みで右肩に流している。
もともとのベビーフェイスに加え、人を魅了する黒目がちな双眸。

ひかりは着ていた服をロッカーに預け、繁華街に向かい煌びやかなネオン街の一角に消えた。
『謎のイケメンホストが夜のネオン街に出没するうわさ』がSNSとツイッターで囁かれるようになるのはそれから二月ほど後の事だった。
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