第2話

文字数 1,027文字

角田護先輩は、同じ塾の一学年上の先輩。身長は俺と同じくらいだがルックスは全然違う。
ジャニーズに所属すればいいようなイケメンでしかもナルシスト、根本的に反りがあわない。

「ごめんだね。書道なんか趣味じゃない」

そっぽを向いて答える。
それに書道は小中とも授業でしかやったことないし、道着と袴を着て、あんなでっかい筆で文字書くとか俺には出来そうもない。

「ふーん、そっか、じゃあ、私これから部活だからもういくね」

そういうと水田は教室を去っていった。
どうやら他の生徒も各クラブに散ったらしく教室に残されたのは俺一人だった。
廊下の方から唐突に声がする。

「ふーん、書道は趣味じゃないのか、高森要」

げげっ、この声は!!

「角田先輩、いっ、いつからそこに……っていうか先輩、なんで俺呼び捨て?」
「何を言う水臭い、僕と君との仲じゃないか。そんなのつける必要ないだろ」

とか言いながら教室の入り口から肩をすくめてひょっこり顔をだす。
ゆるくウエーブした前髪を搔き揚げる仕草は気障そのものでしかない。
でも、それが妙に似合っている。そして怖いほどの笑顔、先輩、邪気ありすぎだ。
 
「角田先輩、勧誘したい新入生って彼ですか」

先輩の後ろからついてきた女生徒2人、同じクラスのええっと誰だっけ。

「うん、そうなんだ。彼、塾の後輩なんだけど入部届まだ提出してないらしい。
 ちょっと、君たちの担任に頼まれてね」

あくまでも優しい口調で答える先輩、あんの担任(ヤロー)余計な事を……。

「お聞きになった通り、俺、書道部に入る気ありませんから」
「まぁまぁ、そう言わずに見学だけでもいいから」
「そうだよ。高森君、やってみたら案外向いてるかもしれないよ」
「私も最初興味なかったけど、友達につられて入ったら楽しくって。入って良かったって思ったよ」

つられたのは先輩の顔だろ。相変わらずのもてっぷりだ。
女子二人を連れてきたのは勧誘を成功させるためか?

返答を待たずに、先輩はにっこり微笑むと俺の腕をがっしりと掴んで書道部の部室につれていこうとする。優男のくせになんて力だ。

「わかりましたよ。行きゃあいいんでしょう、行きゃあ」
「おやおや、高森君、態度がよろしくないね~、仮にも僕は先輩、
 もう少し敬ってくれてもいいと思うんだけどね」

俺の周りに味方はゼロ。
何のかんの丸め込まれて、俺はその日のうちに入部届を書かされてしまった。
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