第224話 アナザー 二人の高森 その32

文字数 784文字

アナザーな世界で、俺が下腹部に強烈な痛みをうけて気を失ってから、
その後、クラブのメンバーがどう動いたのかは知らない。
メンバー全員が意識不明の重体に陥った高森要(おれ)の処遇に恐々としている間。

俺はずっと夢をみていた。
でも、これは本当に夢なのか。

ぬるんだお湯の様に温かい空気。
汗ばむ素肌。寝苦しさを感じて目を覚ました。
室温29度、冷房もかけずに部屋にこもっていたらしく室内でも結構暑い。

額に汗がつたう。
窓から差し込む日差しは眩しく。

そこはいつも通りの俺の部屋だった。
寝ころんだベッドから見える天井の木目も、壁にかかったカレンダーにも見覚えがある。
ベッドから起き上がって周りをみれば、机の上に開かれた読みかけの雑誌。

いつもとなんら変わらない部屋の中。
本当に夢なのか?
あまりにも普通でリアルで……。
俺は平行時空に飛ばされた挙句、多岐という不良に刺され刃傷を負って。

変だ。もし、目覚めるとすれば病院のベッドだろ?
なんで自分の部屋なんだ。傷を負ったはずの脇腹に眼を転じる。

なんともない。
痛くもかゆくもなく、体に怪我を負った形跡すら見当たらない。

俺は異常な喉の渇きを感じて部屋から出て、洗面台に向かった。
蛇口をひねり、そこにあったコップに水を受け一気に飲み干した。
一息ついて鏡の中の俺を見た。

金の髪。
青い目。

その顔は俺なのに、紛れもない東洋人の顔立ちなのに。
とってつけたようなあり得ない金髪と青い目をしている。

そして、服装も普段とはまったく違っていた。。
鏡の中のオレは黒のドレスシャツに赤いタイ、黒いスラックスをはいている。
第一ボタンをはずした胸元にみえるのは18金ネックレスが輝いていて。
智花先輩がかざしたあの写真と寸分たがわないあの服装。
眼を見開いた。俺の体に一体何が起こっているんだ。

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