第227話 アナザー 二人の高森 その35

文字数 548文字

「どうにも……。」
佐藤先輩が呟いた。
「そうですね……。」
角田先輩が呟いた。

「……気に入らないな」
「……気に入りませんね」

『えっ?』
二人とも、今なんか、怖い事言ったような……。

「普段の高森はそんな言い方絶対にしない」
同時にハモった。見事なシンクロだ。

先輩たち息合いすぎだろ。
なんだか嫌な予感しかしない。
しばし沈黙が走った。

二人の口元に浮かんだ笑みに、
ゆがんだ企みが潜んでいるような気がしてどうにも落ち着かない。
それはオレも同じことを感じたらしかった。

オレは佐藤先輩とまともに目が合った瞬間。
ダッと(きびす)を返して扉をあけ、家の中に逃げ込もうとする。
その刹那(せつな)、先輩が叫んだ。

天地開闢(てんちかいびゃく)の理によりて、高森要を拘束する。縛!」
口元に立てた二本指をそのままオレに向け呪を放ってきた。
全身がこわばる。

「うっ、くっ、!動けない。てえっめぇ!何しやがった」
がくりと(ひざ)をついた。
「マイナス10点だな。高森、こちらの高森はそんな汚い言葉は使わない」
「何って、高森、先生直伝の金縛りさ。俺たちとしばらくお付き合い願おうか」

佐藤先輩はオレが足元に落としたリュックを拾い上げ、クスリと笑ってオレをみた。
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