第252話 アナザー 二人の高森 その60

文字数 911文字

 泉加奈子とは初対面だった。
 なのにオレを知ってる風な彼女。
 なぜ知ってるのか興味をそそられ一緒に歩きながら話をして、
 目的の所についたと思ったら劇団のあった場所は更地になっていた。
 パニックになったオレに彼女は手を差し伸べてくれた。

 何か察したらしい彼女は、今日の午後「クラブがあるから」と言って、そこから一駅離れたファミレスにオレを連れてきた。
 そこで待っていた三人の高校生は驚愕の表情でオレを見た。
 オレの髪の色が金髪だったのと両目にブルーのカラーコンタクトをいれていたからだ。
 そして、彼らの口調はオレを知ってる風だった。

「高森、いつ染めたんだ。今朝は黒かっただろ?」
 佐藤仁という先輩は信じられないと言った風情で言葉をかけてきた。
 でも、俺はこんな先輩知らない。
「高森、その頭」
 もう一人の先輩、角田護はそれだけ言うと絶句した。
 大山智花という女子生徒は、ただただ驚いて目を見張っていた。

 彼らはオレが『高森 要』だと知っていた。

 オレの説明に聞き入ってくれた妙にものわかりのいい先生。
 その人物は開成南に務める国語教師で菊留 義之と名乗った。
 通っている学校名を聞かれ、私立凪高校と答えたが、彼らの世界に凪高校は存在しないと告げられた。

 ネットで凪高校が巨大ショッピングモールになっている地図を見せられて、ようやくオレはオレの住んでいた世界とは違う時空に飛ばされた事を理解した。落胆するオレに先生は言った。

「この世界の高森君は開成南の生徒です。しばらく彼の代わりを務めて下さい。
 君があちらに帰るには少し情報がたりません」

 この時点でクラブの集会が何の会合なのかは知らなかった。

「クラブの名前って?」

「超人クラブ」
「超人……」

「俺達は超能力者だ。だからお前の考えは先生に駄々洩れなんだよ」
 先生の後ろに立っている佐藤仁がしたり顔で言った。

 読んだ?超人な先生はオレの思考を読んだっていうのか?
 オレがそう思った途端。

「失礼ながら君の思考、読ませてもらいました」

 菊留先生は眼鏡奥の瞳にやさしい光をたたえてオレに語りかけた。
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