第348話 アナザー 護の笑えない理由 その32

文字数 723文字

「陰陽師」や「霊能者」という言葉を聞かされて俺はげんなりした。
 こちらの世界ではメジャーな職業なのか?
 向こうの世界でも一応存在はしているがどちらかと言えばマイナーだ。
 小説やゲームや漫画の中では大活躍だが身近でお目にかかることはない。
 霊能者だって珍しいからテレビに出演しているともいえる。

 じゃあ、菊留先生の使っている呪は一体なんだろう。
 先生は陰陽師が使うとされるゴマ木を焚いたり、式神を使ったり、占いをしたりはしない。
 本来視えないものを顕現させて祓う。
 どちらかといえば霊能者っぽい気がする。
 先生は、霊能力と超能力は同義で肉体があるか、無いかの違いだけだと言っていた。
 どちらも精神エネルギーを具象化して使ってるにすぎないと。
 具象化するには体が消滅し、常識の概念が無くなった霊体の方が、よりいっそう能力を発揮しやすくなる。

 だから、生前なんの超能力も発動しなかった人が霊になったとたんに。
 簡単に超常現象をおこせるようになるのだと先生は言った。

 なんとなく頷ける。
 俺も幽体になった時は宙に浮いて移動できたし、簡単に平行時空を行き来できた。
 智花先輩のように人為的に体から抜ける事ができれば、もっと色んな能力が使えるようになったかもしれない。
 いや、肉体があったって、常識という概念さえなくせばきっと。

 俺は眼を閉じた。
 右手をスッと前に伸ばし掌を天井に向けて、その上にリアルな炎をイメージした。

 数秒後、ボッと発火する音が響いた。ぱちぱちと爆ぜる音がする。熱い。
 瞼を開くと掌の10センチ程上に手のひらサイズの火球が出現した。

 驚いた。
 今日は何をやっても思い通りになる。
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