第243話 アナザー 二人の高森 その51

文字数 783文字

「角田、高森!」

 そのタイミングで佐藤仁が少し離れた電柱の陰から声をかけてきた。
 彼はカツカツカツと足早に歩いて来て、先輩とオレの腕をぐいぐいと引っ張って、そのままビルの陰の見えにくい所に連れ込んだ。
 彼は手を放してから眼鏡のブリッジを押し上げ「ハアーッ」とため息をついて言った。

「なんなんだよ。お前ら、自重しろ」
「はぁ、自重って?」
「どういう事ですか」

「周り見てみろよ」
「えっ?」
 ビルの陰からこっそり周囲の状況を覗き見ると、やたらギャラリーが多い事がわかる。
 いつもの同級、上級、下級生の護信者のみならず、他校の生徒や、一般人、中学生、小学生、小さな幼児までもがこちらの方を見ているのだ。

「皆こっちみてる。なんで」
 さっきのやり取り。そんなに注目を浴びるような事だったのか?

「こっちが聞きたいよ。っていうか、今日はなぜか俺も二人に眼が行く」
「……なぜ」

「わからん。お前ら二人に変な周波っていうか。オーラというか。波動というか。いつもより大量に感じるんだが」
「いつも感じてるんですか」
「……まあな。普段はぜんぜん気にならないけど、今日はやたら気になるぞ」

「そのオーラひっこめろよ」
「……引っ込めるってどうやって」
「やった事、ありません」

「うーん。ひっこめ方はなんて言うか。こう……」
「はい」
「体の中心に力を引き寄せるイメージで」
「……はい」
「……うまく説明できない」

「佐藤先輩。一緒に学校まで行って下さいよ」
「……嫌だ」

「何故ですか」
「角田、お前は注目される事に慣れてるかもしれないけど。俺、無理だから、絶対、無理だから」

「先輩、顏、赤いですよ」
「なんか、わからないけど、お前らのそばにいると火照るんだよ。」

 佐藤仁は上気した顔を見られたのが恥ずかしかったのか、顏をそらした。
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