第9話

文字数 1,136文字

「でも、行き来する能力が君自身の力によるものだとすれば、君は安定していないことになる」
「いつまた、他の平行世界に飛ぶかもしれないという事ですか」

角田先輩の問いに頷くと先生はいった。

「これは、十分な資格ありだね。高森君、超人クラブへようこそ。私がこのクラブの顧問です。君を歓迎します。異存はないね。角田君」
「はい、僕も同意見です」

思いがけない言葉に俺は目を見開いた。

「君は超人クラブを探していたんだろう?、担任の吉田先生から聞いているよ。
 もっとも、吉田先生はクラブの存在をご存じないけどね。このクラブには普通の人は入れないようになっています。規制を設けている訳ではないけど人智を超えた人の集まりなのでね」

 人智を超えた人の……なら、先輩も?

「不思議そうな顔をしているね。角田君、君の能力を教えてあげたらどうだい?」
「そうですね……こっちの方が早いか……」

先輩は自分の携帯を取り出して待ち受け画面を見せてくれた。
映っているのはにっこり笑う先輩、自分を待ち受けにするなんて相変わらずナル……。

「なななっなんですか?このティーシャツの模様」

「何ってヨナグニサンだよ。絵じゃなくて本物。羽を広げると30センチくらいかな。
モスラのモデルになった蛾だ」

「彼の能力は、虫、動物全般にわたる意思疎通、今はこんなに明るくなったけど。
 所属した当初は本当に根暗でね。会話に困るほどだったんだ」

「ふーん、人嫌いな先輩にぴったりの能力ですね」
「……人嫌いってどうしてわかった……」
「そりゃ、わかりますよ。だって先輩はいつだって……」

そこで口をつぐんだ。言ってはいけない。そんな気がする。

「だから、嫌いなんですよ。能力者は、人の仮面を簡単に剝いでしまう」
「君の場合は、人間全般でしょう?」
「そんな事を言うと僕はいい子のふりをやめますよ」
「それは困った。君がまた元の根暗に戻ったら、私の努力が無駄になってしまう」
「先生、メンバーは角田先輩のほかに何人いるんですか?」
「あと、三人、近々紹介するよ、この学校はそういう人が集まりやすい場所らしい」
「場所じゃなくて、先生の周り限定だけどね」

「高森君、君はまた次の世界に飛ばされたくはないだろう?
 とにかく急がないといけない、 君の能力を抑える方法を彼らなら知ってるかもしれないしね」

素直にうなずく。だいぶ気分が落ち着いた。菊留先生のおかげだ。

先生の周りに能力者が集まる。なんとなく解る気がした。
救いを求めるものだけがこのクラブに入ることができる。
先生は困ったものを手繰り寄せ救いを与える事が出来る人なのだ。

その日は久しぶりにぐっすり眠る事ができた。

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