第14話
文字数 1,226文字
「大東寺線 柿津駅 三番ホーム」
出されたハンバーグ定食をつつきながら唐突に泉がいう。
「柿津駅? 一か月ほど前に飛び込みがあったとこね」
同じものを食べてる大山先輩が「またか」といった風に応じた。
「……本当に多いよね。あそこ」
「確かに……そうですね」
答えたのは三種類のおかずが選べる和膳を食べている角田先輩。
「多いって?何が?ですか」
頼んだハンバーガーを口に放り込みながら意味の解らなさに聞き返す俺。
「飛び込み自殺だよ。食事の時にする会話じゃないけどね」
苦笑いをしながら手仕込みとんかつを口に運ぶ佐藤先輩。
先生は、……先生は足を組んで神妙な顔でブラックコーヒーを口に運んでいる。
こんな話をするときはいつも思考が鈍るからという理由で何も食べないらしい。
「えーっでも、汽車ってダイヤを乱れさせたら多額の賠償金を払うって言うじゃないですか。それに死体ってぐちゃぐちゃになるんじゃないんですか?自殺方法としては選びたくない感じなんだけど」
「ちょっとー、リアルに言わないでよ、ハンバーグ食べられなくなるでしょ」
「あっ、ごめん」
「賠償金って言ったって急行や特急の話だろ。飛び込みって都会じゃ意外に多いんだぜ。ちなみに俺のおじさん、そういう車両に色塗り直す職業についてる」
なんだって!飛び散った血のりとか肉片とかを洗い流してへこみを直して車両に色を塗ってまた使ってんのか?
リアルにこういう職業がある事に驚きだった。
「色塗り直すって……新しく作り直してんじゃないの?」
「ばっかだなー、電車の一両辺りの製作費って一般的な通勤電車で約1億円前後、在来線特急車両で約2~3億円、新幹線だと約3~4億円だぜ。そうそう、作り直したりするもんか」
「結構、高いんですね」
車なら事故車両はすべてお釈迦になるんだろうが、電車だとそうもいかないらしい。
「……だからなんですよね。こういう車両に念がたまるのは……」
先生はなかばあきらめたような口調で言う。
「それで……どうすべきだと思いますか?泉さん」
「そこはやっぱり、菊留先生の出番だな~と思ってますけど」
いたずらがばれた子供のような顔で笑う。
先生は「はぁーっ」とため息とついた。
「やっぱりですか」
「はい、やっぱりです」
「イヤだと言ったら?」
「先生の良心が泣くんじゃないんですか」
「そんな物はこないだ消しゴムで消したんですが」
先生の辞書に良心という文字はないらしい。
「冗談いってないで、お願い先生」
「わかりました。頼まれてあげますよ。大山さんもそのつもり持ってきたんでしょう?
その紙袋、中身はやっぱり数珠ですか?」
「あらっ、先生わかってたんですか?緊急招集って言うから必要かなと思って」
そう言いながら大山先輩が紙袋から取り出したのは、木の球をつないだ高級そうな数珠だった。
先生はそれを見て二度目のため息をついた。
出されたハンバーグ定食をつつきながら唐突に泉がいう。
「柿津駅? 一か月ほど前に飛び込みがあったとこね」
同じものを食べてる大山先輩が「またか」といった風に応じた。
「……本当に多いよね。あそこ」
「確かに……そうですね」
答えたのは三種類のおかずが選べる和膳を食べている角田先輩。
「多いって?何が?ですか」
頼んだハンバーガーを口に放り込みながら意味の解らなさに聞き返す俺。
「飛び込み自殺だよ。食事の時にする会話じゃないけどね」
苦笑いをしながら手仕込みとんかつを口に運ぶ佐藤先輩。
先生は、……先生は足を組んで神妙な顔でブラックコーヒーを口に運んでいる。
こんな話をするときはいつも思考が鈍るからという理由で何も食べないらしい。
「えーっでも、汽車ってダイヤを乱れさせたら多額の賠償金を払うって言うじゃないですか。それに死体ってぐちゃぐちゃになるんじゃないんですか?自殺方法としては選びたくない感じなんだけど」
「ちょっとー、リアルに言わないでよ、ハンバーグ食べられなくなるでしょ」
「あっ、ごめん」
「賠償金って言ったって急行や特急の話だろ。飛び込みって都会じゃ意外に多いんだぜ。ちなみに俺のおじさん、そういう車両に色塗り直す職業についてる」
なんだって!飛び散った血のりとか肉片とかを洗い流してへこみを直して車両に色を塗ってまた使ってんのか?
リアルにこういう職業がある事に驚きだった。
「色塗り直すって……新しく作り直してんじゃないの?」
「ばっかだなー、電車の一両辺りの製作費って一般的な通勤電車で約1億円前後、在来線特急車両で約2~3億円、新幹線だと約3~4億円だぜ。そうそう、作り直したりするもんか」
「結構、高いんですね」
車なら事故車両はすべてお釈迦になるんだろうが、電車だとそうもいかないらしい。
「……だからなんですよね。こういう車両に念がたまるのは……」
先生はなかばあきらめたような口調で言う。
「それで……どうすべきだと思いますか?泉さん」
「そこはやっぱり、菊留先生の出番だな~と思ってますけど」
いたずらがばれた子供のような顔で笑う。
先生は「はぁーっ」とため息とついた。
「やっぱりですか」
「はい、やっぱりです」
「イヤだと言ったら?」
「先生の良心が泣くんじゃないんですか」
「そんな物はこないだ消しゴムで消したんですが」
先生の辞書に良心という文字はないらしい。
「冗談いってないで、お願い先生」
「わかりました。頼まれてあげますよ。大山さんもそのつもり持ってきたんでしょう?
その紙袋、中身はやっぱり数珠ですか?」
「あらっ、先生わかってたんですか?緊急招集って言うから必要かなと思って」
そう言いながら大山先輩が紙袋から取り出したのは、木の球をつないだ高級そうな数珠だった。
先生はそれを見て二度目のため息をついた。