第247話 アナザー 二人の高森 その55

文字数 629文字

「……そうですか。よかった……」
 安心したのか角田先輩はホッと息をついた。

『先生。俺、よくわからないけど、魂だけで……こっちに帰って来てしまって』
「君はいったいいつから、こちらの世界にいるのですか」
『髪、染め直した時からです』

 日曜の午後2時に先輩たちが来て美容院に行き髪を染めた。
 髪をカットして染め終わったのは午後5時ごろだった。
 夜を越して朝起きた後も、まだこちらの世界にいた。

「そんなに前から……体を離れてからゆうに18時間は経っているという事ですか」
『……はい。たぶん』

「どういう状況で体からぬけたのですか?」
「刺されて気を失って、目が覚めたらこちらの世界にいました」

「……なるほど、痛みに耐えられず、体から離れてしまったという事ですね。
 驚きです。君にも智花さんと同じ能力あるとは思わなかった」

『俺、どうすれば』
「一刻も早く、体に帰らないと体の方がだめになる」
 おそらくその通りなんだろう。

「帰る方法を検討します。一旦散りましょう。授業がはじまります。
 放課後、メンバー全員でここに集まってください」
 頷く先輩たち。

「佐藤君。大山さんにも声をかけて下さい」
「OK。先生」
「彼女があちらに帰るためのキーパーソンになるでしょう」
 先生は硬い表情のままでそう言った。

「高森君、いったん呪をときますよ」
「ちょっと待てよ。先生」

 アナザーなオレは不遜な態度で先生の前に立ちはだかった。
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