第130話 泉と先生との出会い その7
文字数 863文字
「君、名前は?」
「あっ、泉加奈子って言います。松田一中の二年です」
「そうですか。私は開成南一年現国担当している菊留といいます」
改札を抜けて、時計を見るとまだ昼には少し早い。駅の構内にある本屋でしばし時間をつぶしてから件 の店を訪れる事になった。
先生は新刊コーナーで数冊の単行本を選び、迷うことなくレジへ持っていった。
開店時間近くなったので本屋を出て菊留先生の後ろをついていくと駅からさほど遠くない場所に一軒の中華料理店があった。
入り口のカウベルが鳴り来客を告げるとカウンターごしに見える厨房の中で、忙しそうに立ち働いていた店主が声をかけてきた。
「らっしゃい」
先生は軽く会釈して迷うことなく店の奥に進み窓際の席を陣取る。
水とおしぼりを持ってきた店員に「いつものを二人前」と告げると店員は頷きすぐ厨房の方に引っ込んだ。よほどの常連らしい。
「今日は私に奢らせて下さい」
「えっ、いや悪いからいいです」
何考えてんの。この先生、だって、私のせいでデートを反故にしたのにその相手に奢ろうだなんて。人が良すぎでしょ。
注文した料理が来るまでの間、入り口付近に置いてあった漫画をとってきて読み始める。
漫画ごしにちらりと先生をみると気づいた彼は眼鏡越しににっこりとほほ笑んで、持参した本から顔をあげた。
「ああ、これですか?『奇聞集』です。不思議な話を読むのが好きなので」
先ほど買った新刊。著者は『加藤恵 』。
某商業誌で売り出し中の人気作家だ。
「あっ、それ、読みました。25話の人形葬なんてとても怖い話ですね。
全部、実話なのがすごいって思います」
「そうですね」
奇聞集は、妖怪や超常現象、幽霊などの不可思議な話を集めた体験集だ。
泉もこの話に負けず劣らず結構、怖い体験をしているので思わずその話をしかけた。
先生なら自分の体験を真剣に聞いてくれるかもしれない。
でも菊留先生はさっき会ったばかりだ。
あまりにも知らない相手に自分の体験を話すのはやっぱりためらわれた。
「あっ、泉加奈子って言います。松田一中の二年です」
「そうですか。私は開成南一年現国担当している菊留といいます」
改札を抜けて、時計を見るとまだ昼には少し早い。駅の構内にある本屋でしばし時間をつぶしてから
先生は新刊コーナーで数冊の単行本を選び、迷うことなくレジへ持っていった。
開店時間近くなったので本屋を出て菊留先生の後ろをついていくと駅からさほど遠くない場所に一軒の中華料理店があった。
入り口のカウベルが鳴り来客を告げるとカウンターごしに見える厨房の中で、忙しそうに立ち働いていた店主が声をかけてきた。
「らっしゃい」
先生は軽く会釈して迷うことなく店の奥に進み窓際の席を陣取る。
水とおしぼりを持ってきた店員に「いつものを二人前」と告げると店員は頷きすぐ厨房の方に引っ込んだ。よほどの常連らしい。
「今日は私に奢らせて下さい」
「えっ、いや悪いからいいです」
何考えてんの。この先生、だって、私のせいでデートを反故にしたのにその相手に奢ろうだなんて。人が良すぎでしょ。
注文した料理が来るまでの間、入り口付近に置いてあった漫画をとってきて読み始める。
漫画ごしにちらりと先生をみると気づいた彼は眼鏡越しににっこりとほほ笑んで、持参した本から顔をあげた。
「ああ、これですか?『奇聞集』です。不思議な話を読むのが好きなので」
先ほど買った新刊。著者は『加藤
某商業誌で売り出し中の人気作家だ。
「あっ、それ、読みました。25話の人形葬なんてとても怖い話ですね。
全部、実話なのがすごいって思います」
「そうですね」
奇聞集は、妖怪や超常現象、幽霊などの不可思議な話を集めた体験集だ。
泉もこの話に負けず劣らず結構、怖い体験をしているので思わずその話をしかけた。
先生なら自分の体験を真剣に聞いてくれるかもしれない。
でも菊留先生はさっき会ったばかりだ。
あまりにも知らない相手に自分の体験を話すのはやっぱりためらわれた。