第22話

文字数 880文字

初めて会った彼は、名家と呼ばれる角田家の末っ子の見た目はミソッカス感、半端ないひ弱で大人しい感じの子供だった

一歳年下の私は彼の目にどう映っていたのか解らない。
紹介されたのは、稽古が終わって帰り支度をしている時だった。

「泉さん、泉加奈子さん、こちら角田護君、ご挨拶して」
「はい、先生」

花柳流の日舞の先生に促されて
持ち前の優等生ずらした愛想の良さで、自己紹介しようとした。

実際、学校ではクラス委員をしており面倒見の良さは定評があった。
勿論あだ名は委員長で通っている。
クラスの男子にそこそこ人気のある笑顔で彼に近づき、握手を求めながら言う。

「はじめまして、松田小5年 泉加奈子です。よろしくね」

言い終わらぬうちに、握手を求めた右手をパンと思いっきりはたかれた。
何、こいつ、初対面の印象サイアク!

どちらかと言えば整った美少年系の彼は、およそ美少年の定義から外れる行動をして平然と言い放った。

「僕は松田西小6年、角田護、女と握手なんかしない」
「あっ……そうなんだ」

会話が続かない。
踊りの稽古に来ていた周りの生徒たちは驚いて一斉に私語をやめ場が一瞬にして静まり帰った。

「あら、あら、だめよ、角田君、女の子には優しくしないと」

先生に窘められたが彼は、一向に気にする気配がなくぷいと横を向いて答えない。

「この度の舞踊発表会、二人に組んでもらって 舞台に出てもらおうと思ってるんだけど」
「えーっ、無理です、こんな奴と」

二人、同時に叫んだ。
私の方はさっきの彼の態度でそう言ったのだか面くらった。
彼とは初対面、どうしてこんなに疎まれるのか解らない。
もしかして、私だけじゃなく女子全般にこの態度?

「二人とも年が近いし、レベルも同じくらいだし考えておいてね」

そう言われて彼を見るが、聞いてない風を装い相変わらずな態度だった。
仲良くなれそうもない。それでも一応努力だけはしてみた。
先生がいなくなってから話しかける。

「あのさ、どう思う?今の話」
「どうって」

斜に構えてくそ小生意気な口を聞く。
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