第196話 アナザー 二人の高森 その4

文字数 807文字

「あのさ、もしかして俺と会うの初めて?」
「当たり前でしょ。さっきのスーパーで会ったのが最初だよ」
「……そっか。初めてなんだ……」

その言葉を聞いて俺はため息をついた。
どうやら、二千円札のない。
しかも、泉とは初対面の平行時空に飛ばされたらしい。
一体いつどこで、世界線を超えたと言うのか。全くわからない。
それに、この分だと他のメンバーとも初対面かもしれない。

「さっき、お札の説明してたよね」
「うん、守礼門は沖縄旅行で見たし、古典好きだからあと適当に言ってみた」

適当であの説明か。さすがだ。

「何?もしかして当たってた?」
「うん、たぶん」

別に知ってるわけじゃないが、お札に使われるんだから、名の知れ渡った人物だろうと想像がつく。

「でも、ほんとに良くできたお札よね。本物みたい」
泉はスーパーから回収してきた札をまじまじと見ている。

「……それ、本物なんだけど」
「えっ」
「だから、本物なんだけど」
「……君、頭おかしいんじゃないの?二千円札なんて流通してないんですけど」
「……うん、そうだね」

泉が言うんだから間違いはない。きっとこの世界ではほんとに流通してないのだ。
俺は頭を抱えたくなった。

一体何度目のトリップなんだろう。
しかも、今回は知ってる世界ですらないようだ。
頭の中で状況整理をして、今いる世界から、
元の世界に帰る算段をしてみるがいい方法を思いつかない。
泉に会えたのはラッキーだったというべきなんだろう。
嘆息した俺は馬鹿にされるのを承知で聞いた。

「泉さん、『超人クラブ』って知ってる?」
「……」

泉の眼が大きくなった。
驚愕といって言い表情になっている。
泉は怖い顔で尋ねてきた。

「なぜ、私の名やクラブの事しってるの?君、一体何者なの?」

その声は明らかに不審者に物申す言い方だ。
まぎれもなく泉は俺と初対面なのだと思わざるをえなかった。
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